異世界で暗殺者になりました

「帰んな!うちは身の保証もできない怪しい奴は冒険者として受け入れることは出来ないさ!」

「分かりました………」


まぁ案の定というかなんというか城から出てきて、職にありつくために魔物を倒して金を稼ぐという冒険者ギルドに来てみたわけだが……まぁ身分証の掲示ができない怪しいやつなんて入れるわけないわな、うん。


「こんなことなら城の国庫から金貨を少しくらい盗んでくればよかった……」

今になって少し後悔し始める俺、今から盗んでくるか?いや、今は王様が殺されて城の中は大騒ぎになっているはず、兵士たちだけならまだしも顔がバレるとここで暮らせなくなるのはまずい、何か他の方法を考えないとな………


「すまんな……レヴィ……」

「いえ、私はあなたに興味があってついてきているので!」


まぁ案の定予想通り城下町に出た俺は隣に美人さんを連れている冴えない男として町中の男から嫉妬と殺気の目を向けられてるわけなんだが…辛いよ……

とまぁ、そんだけ美人なら厄介ごとが起こらないわけもなく、

「おっと、手が滑った」

「!?ぎゃあぁぁぁぁぁぁ」


すれ違いざまにレヴィのお尻を触ろうとしたスキンヘッド痴漢の男の腕の骨を手刀で折った。

「な、何しやがるてめぇぇぇぇ!!」

「何って、お前こそ何しようとした?今レヴィの尻触ろうとしたよなぁ!」

「う、うるせぇ!このCランク冒険者のガドン様に楯突く気かぁ!?」


男は逆上し、帯刀していた剣を抜き、こちらに向かって斬りかかってきた。

「お前、俺の(持ち)物に触ろうとしただろ?殺すぞ」

「え?えへへへ」


グフッと俺の殺気に耐えきれず男は口から泡を吹いて倒れた、というかレヴィさんそんなに体をくねらせてどうしたんですか。


「ふん……騒ぎになる前に行くぞ」

「はい!………もう手遅れな気がしますけど」

「それは禁句だ、はぁ…」


衛兵たちが来る前に俺たちは人影少ない路地裏へと忍び込んだ。




「へぇ、あの殺気何十人いえ、何百人か殺してますね」

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「よし……ここまで来ればもう大丈夫だろう」

「はい!だいぶ走りましたね……」

「……兵士からの追跡をかわすためだいぶ走ったが、ここがどこかがわからない……大通りに出るにはどうしたらいいんだ?」

「………」


レヴィからの視線が痛い……やめてくれ、そんな目で見ないでくれ。

なんてことを考えてたその時、


「おうおう、こんなところになんの用だい、ニィちゃんとお嬢ちゃん」

「………誰だ」


路地裏の奥から複数人の男たちが現れる。男たちの服を見ればまともな生活はしておらぬことがすぐにわかる。男たちに片手には物騒な装備も見える。


「へへへ、こんな人気のねぇ所にいるんだ、覚悟は出来てるんだろうなぁ?」

そう言うと男たちは下卑な笑みを浮かべ近寄ってくる。男たちの下半身を見れば目的はすぐに分かり、俺はレヴィを庇うようにして前へ進み出る。


「ヒーローの真似事かい?ニィちゃん、女置いてとっとと立ち去りな、そうすれば命までは取らないでやる」

「………はぁ、ほんと、異世界ってこういうやつしかいないのか?」

「あん?何ごちゃごちゃ言って…」

「とりあえず黙れ」

「あ?」


シュンッと一瞬凛の手がブレたように見えると男の武器を握っていた手がぽろりと落ちた


「あ、あがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

男は一瞬遅れ、自分の身に何が起こったかようやく理解し叫び声を上げた。周囲の仲間たちにもどよめきの声が上がる。

「五月蝿い」

「ガヒュッ…」


凛が手を横に薙ぎ払うと男の首が地面に落ちた


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

男たちは悲鳴をあげ後退りしていく、男たちはようやく理解したのだ。自分たちは食う側ではなく喰われる側だったことを。






〈数分後〉

「助けっ…………」

「うし、これで最後か?」

「そうですね、今崩れ落ちた男で24人目、全員です」


喧嘩を仕掛けてきた男たちにしっかり仕返しをした俺たち。しかし……

「困ったな…死体をどうしようか」

「うーーん」


これだけの人数だ、隠すにも始末するのにも少しめんどくさいだろう


「なら、私が始末しましょう」

「あ?」

「え?」


俺たちが悩んでいると後ろからひとりの男が出てきた、警戒心を強め、男に殺気を放つと、

「おっと、私は敵ではありませんよ、むしろ逆です」

「逆?味方だとでも言うのか?」

「そうです、その通りです!」


いや、胡散臭すぎて信じられねぇわ。俺たちの味方ってどういう意味だよ……


「実はですね、私、暗殺者ギルドというものに所属しておりまして」

「暗殺者?」

男が言うには基本的には冒険者ギルドとは変わりがなく、討伐対象が人になるだけの違いだそうだ。


「まぁ、それで、さっきの街で放った殺気で何事かと見にいけば私よりも人を殺していそうな少年がいるではないですか、さらに見たことない顔、冒険者ギルドにも登録していない!これは是非とも我が暗殺者ギルドに所属してもらわなければ!と思いましてね」

「ほーん、で、俺たちが暗殺者になる利点は?」

「一つ、これは仮定ですが、この強さを誇っているのにも関わらず冒険者になろうとしていない、もしくはなれなかった、そう考えると貴方達…もしや身元を判明できるようなものをお持ちではないのでは?」

「ほう、正解だ」

「ほう!それならば話は早い!二つ目…というかこの話を断った際に発生するデメリットですね、現在この王国では国王陛下が暗殺され、兵士たちが総動員で捜索を行っています。そのため、身元の保証がないような人は街の宿屋に泊まるどころか、この街を出ることすらできない状況なのですよ。」

「なに?」


というか今こいつ国王が殺されたことを知っていると言わなかったか?そんな馬鹿な、俺が国王を殺したのは数時間前でまだ民衆にも発表されていないぞ?どんな情報網だよ……


「まぁこれら全てのデメリットは我ら暗殺者ギルドに入ることで解消されます、身元の保証?そんなものいくらでも偽装できます、して、返答は?」

男の眼鏡の奥の瞳がキラリと光る、こいつ、俺の返答がわかってるくせに……


「はぁ、わかった、暗殺者になってやるよ」

「クク、決断が早いですね、そういう人は好きですよ」

ニヤリと笑う男、やめてくれ、俺のそっちの気はないんだ、レヴィ頼むからそんな目で見ないでくれ。


「では、早速ギルドの本拠地に向かうとしましょう」

そう言って、歩き出す男の背中を俺たちは追う。


「おっと、これは忘れてました」

そういうと男は立ち止まり、手を大きく広げ笑うようにして言う


「ようこそ、暗殺者ギルドへ!我々は貴方を歓迎いたします!」


こうして俺は異世界で暗殺者として働くことになった。

職、ゲットだぜ!








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ちなみに主人公に瞬殺された男たちの死体は暗殺者ギルドの男が命じて、ギルドの下っ端になんでも収納できるアイテムバックというものを持たせてそこに収納し、街から出て、離れた場所で魔獣たちの餌にされたとか。

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