妖怪ジジイが現れました
「ん??どこ行った?」
騎士団長を瞬殺し、王様を追いかけるべく逃げて行った方へ向かうが、そこは行き止まり。そして人が隠れれるようなものは何もなかった。すれ違った覚えもないし、ここ以外に道はなかった。つまり………
「隠し部屋みたいなものでもあるのかなぁ?」
俺は壁を色々と触ってみる。こういうのを見つけるのは至難の技だろう………でも、うん大丈夫。こういうのを見つけ得るのは得・意・なんだ。
「お、これかなぁ?」
不自然に凸になっている部分がある。そこを押してやると………
「ビンゴ!」
ゴゴゴと音を立てて壁が動き、目の前には下へ続く階段が現れた。
「フンフンフーン」
なんだか気分がいいので鼻歌を歌いながら階段を降りていく。その姿は普通の少年のようで、先程数十人もの人間を殺した人物には見えなかった。
しばらく降りていくと扉が見えてきた。隙間から灯りが見える。おそらくここに王様がいるのだろう。
「おーうーさーまー!!」
「ヒィ!!!!」
バン!と扉を蹴破り、見てみるとそこは図書館のような場所であった。天井までぎっしり本が積み立てられて、この世の全ての書物がここにあるのではないかと思わせるような大量の本を目にして俺は驚きを隠せなかった。そしてその端っこに頭を抱え、座り込んでいる王様の姿があった。
「き、騎士団長はどうした!なぜこいつをここへ通した!!」
「んー?騎士団長?ああ、彼はもう死んでいるよ」
「っ!この悪魔めが!!」
…へーこの状況でまだそんなことが言えるんだ、ある意味すごいね。
俺は王様のそばにより、王様の頭を鷲掴みにした。
「ねぇ、ここどこ?」
「ヒィ!やめんか!!ワシは8代目こく」
「ねぇ、そういうのいいから。おじさん、俺に命の支配権があるのわかってる?」
ギリギリと頭を掴む力を強めると王様はすぐに素直になり質問に答えてくれた。
「ヒィ!こ、ここは禁書庫じゃ!王国のあらゆる知識がここにある!!」
質問に答えたぞ、離せ!という視線を感じ、俺はさらに握る手に力を込める。
「ぎ、ぎゃぁぁぁぁ!こ、ここには魔法の知識やあらゆる神話の本がある!見せてやるから手を離さんか!!」
「見せてやる?まだ上目線だね」
「…………み、見せてあげますのでどうか、手をおはなしください………」
少し殺気を放ってあげるとすぐに大人しくなった。ご褒美に手を離してあげるとその場に崩れ落ち、頭を抱えて転がり始めた。そんなことよりも本だ!
「ふ、ふん!ようやく手を離したなこの馬鹿めが!書庫長!敵じゃ!迎え撃てい!!」
いつの間にか壁の端に移動していた王様は威張ったような口調で誰かに命令をする。
すると本の棚が何かを避けるようにして移動した。
「ヒョヒョ、お安い御用で」
「………だれだ?」
奥からラスボスのような雰囲気を纏わせて出てきたのはヒョロヒョロの杖を持った老人だった。こんなヒョロイ体で戦えるはずがない、拍子抜けし、俺は気を抜いていると、突然悪寒がし、俺は横に飛んだ。
すると今まで立っていた場所に何やら切り裂いた痕のようなものができていた
「ヒョヒョ!見えているわけではない……第六感が鋭いのか!すんばらしぃぃぃぃぃ!!!!」
突然狂気のような叫び声を上げるとケタケタ笑い出す老人。
「これは………魔法か?」
「ヒョヒョその通りですよ、風魔法【カマイタチ】、無音の風の刃です。避けられるものなど滅多におらぬ超高難易度の魔法ですよォ!!」
ヒョヒョと愉快そうに笑う老人。
「おっと、名乗りが遅れましたね、私の名前はカザリーム・ナウワ。他国からは[大魔道士]などと呼ばれていますヨォ!今はちょっとした禁書庫の番人なんてものをやっておりますゥ!」
聞いてもいないのに色々自己紹介をしてくれた、しかし実力は本物のようだ。久しぶりに武者振るいがし、一瞬でも気を抜いたら殺されると俺の本能が叫んでいる。
「いい、実にいいィ!その肉体ィ!至高の領域に値するゥ!!王様!この者の肉体、貰っても良いですよねェ!!」
「う、うむ、倒せればなんでも良い!早くそいつを殺すのだ!」
ヒョッヒョッと不気味な笑い声をあげ、老人は何か呪文のようなものを詠唱する。
「この肉体はそろそろ寿命だったのでちょうどいいです、私の糧となりなさい!【精神憑依】」
何かが来る、そう思い、身を構える。しかし……………
「ヒョヒョ、この体はいただきましたよ」
そんな言葉が俺・の・口・から漏れ出た。
「何……が……」
目の前にいた老人は魂でも抜けたかのようにドサリと倒れ込んだ、生きているようには見えなかったが脅威が消えたわけではない。むしろまずい状況だ。どうやら俺は…体を乗っ取られかけてるらしい。
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