第20話 本好きな女の子
ご飯を食べてからどうするか考えよう! まずはどこで何を食べるかだ。
いかにも高級そうな所にする? やっぱり庶民御用達のところかな?
高級な所だと、どうせ私のような貧乏舌には理解出来ない食べ物が出てきそうな気もするし。そもそもそんなお店に私一人では入りづらい。
ご飯屋を探しながらぶらぶらしていると蕎麦という文字が目に入った。
蕎麦は今まで食べたことがない。せっかくだし蕎麦にしよう!
わたしは颯爽と蕎麦屋に入った。
お品書きを見ると結構種類があるけど一番安いのにしてしまった。貧乏症か私は。あ、貧乏症か。
お金はしっかり持っているのに、もったいない気がしてしまったんだ。本当は天ぷらという文字に恐ろしい程そそられたけど、自分のお金だと思うと気が引けてしまった。今度忍さんに奢ってもらおー。
さぁお蕎麦との感動の対面だ。
立ち上る湯気がすでに美味しさを伝えてくる。もう美味しかった!
いやいや待て待て、満足するのはまだ早いよ私!
思い切って勢い良くすする。
お、美味しいぃぃぃ、これ!
鼻に香りが抜けるっていうのを本で見た時、フッなにそれとか思ってたけど、良くわかりました。鼻で笑ってすみませんでした。
熱さを恐れず勢い良く食べ進めた。
若干上顎を火傷したような気もするけど満足したぁ!
ワクワクしながら町を散策する。
何をしよっかな~
露店もいっぱいある。お腹いっぱいだけど食べたいな~。
何をしようかな。
服を買っても良いし、雑貨を良い。こりゃお金がいくらあっても足りないなぁ。
……何をすればいいんだ。
結局何も決められない。これじゃあ忍さんがいてもいなくても一緒じゃん。
いざ決めようとすると、お金使っちゃっていいのかという気持ちが湧き上がってくる。貧乏性全開だ。
うーん、忍さん早く帰ってこないかなぁ。
広い町だけど気付いたらかなり歩いていたようだ。建物が減ってきて、草原が広がり小川が流れる場所まで来ていた。
人が少ない方がやっぱり落ち着く。
今日は日差しがしっかりあるし、その辺でお昼寝でもしようかな。多分忍さんのことだからすぐに私の居場所は分かるだろうしね。
お昼寝に良い場所を探していると大きな木が見えてきた。
あそこがちょうどよさそうだ!
ここで本読みながら過ごしたら楽しいだろうな~……、あっ。本買えば良かった。本なんてお母さんが拾ってきたことしかなかったから買う発想がなかった……
まぁ今回はゆっくりお昼寝して過ごそう。
木に近づいていくと、人影が見えた。
なんだ、先客がいたかぁ。仕方ない。
諦めて別の場所をと思った私の目に、思いがけない光景が見えた。
――ほ、本がたくさん積んである!?
私はそろ~りと近づいてみると、木にもたれて本を読んでいる少女の姿があった。
小柄で私より年下に見える。
服も前の私ほどではないけどお金持ちには見えない。
同年代で本好きだなんて、こっこれはぜひともお友達になりたい!
……ど、どうやって声をかければいいんだ……
友達なんて本の中にしかいないのに。
急に話しかけたらびっくりさせちゃうかな?
「あなたはそこで何をしているの?」
「へっ!?」
目の前でオドオドしている私を不審に思ったのか少女が話しかけてくれた。
「あっ、あの、ごめんなさい!」
「えっ!? 何が!?」
「えっ、あ、そのぉ、どんな本を読んでいるかなって」
「あなたも本好きなの?」
「うんっ! 大好き!!」
「か、顔が近いよぅ……」
「あっ、ごめんなさい!」
自分のぎこちなさに泣けてきた。私はこんなに人と話すのが下手だったのか……
お友達という意識が半端ない緊張感を与えてきたんだ。忍さんと喋るときはこんなことなかったはず、だよね?
私が怪しすぎて嫌われてたらどうしよう……
「私の名前はカオリ。あなたは?」
カオリちゃんは優しい笑顔で聞いてくれた。
「私はマキ! よろしくね、カオリちゃん!」
「うん! 一緒に本読も! マキちゃん!」
私に初めての友達ができた瞬間だった。
「マキちゃんは綺麗な服を着ているのに私みたいな貧乏人と仲良くしても良いの?」
「あ、この服は貰ったものなんだ~。私は農民出身だからド貧乏だよ」
「そうなんだ! 良いなぁそんな良い服もらえて」
「くれた人、多分お金たくさん持ってるから会わせてあげよっか!?」
「えっ、いいよ~そんなの!」
はぁ~。これがお友達との会話だ! 楽じぃぃぃ!
「そういえばカオリちゃんはなんでそんなに本持ってるの? お父さんお母さんにもらったの?」
「ううん。私大分前から親いないからさ、ゴミとか漁ってると結構落ちてたりするんだよね~」
「え!? そうなの。ごめんね。変なこと聞いて」
「マキちゃんはなんで字読めるの?」
「昔お母さんがよく拾ってきてたんだ。私ももう両親いなくなっちゃったけど」
「そうなんだ。なら私たちよく似てるね!」
「そうだね!!」
本当に驚きだ。偶然出会ったのに本好きなことも境遇も似ている。
でもカオリちゃんは今一人で暮らしているらしい。私よりよっぽど大変じゃないか。ゴミ漁ってるとか言ってたし。
服とか物凄く汚れているとかではないけど、決して楽しい暮らしではなさそう。私に何かできることはないかな?
「カオリちゃんは生活大変だよね? もしあれなら私と一緒にいる人に頼んで――
「大丈夫だよ」
カオリちゃんは笑顔だった。
「本があれば今の生活で十分楽しいから!」
遠慮しているような感じには見えない。
「カオリちゃんは強いね。ごめんね、変なこと言って」
私の完全なおせっかいだった。
話題を変えようと、ふと視線を積まれた本に向けた時、一番下にある分厚い本に目が留まった。なんだか高そうで読み応えのありそうな本だ。本好きとしてはぜひ見てみたい!
「ねぇ、この本読ませてもらっても良い?」
私はその本に手を伸ばした。
「ダメッッッ!!」
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