第23話 noe^szz@hna

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 ここでひとつ、昔話でもしようか。



 はじめに、夜空に星ひとつを創造した能力があった。

 あるいは、夜空の星ひとつを滅ぼした能力があった。


 使い手の生命と引き換えに。

 使い手の死に際の道連れに。


 夜空からひとつの星が消え、入れ替わりに別の星が現われた。


 その力が及ぼした結果は、他に類するものが無かった。

 近しいものすら存在しなかった。


 どれだけ物理法則の間隙を衝こうとも、星に魔力は届かない。

 目に映ってはいるが、それが遥か遠くにあることは分かっていた。

 魔力による魔術の発現は、魔力のない場所には及ばない。

 すなわち、魔性に属する魔術ではありえない現象だった。


 夜空の彼方には、精霊はいない。

 精霊は龍脈を介して万物に宿り、龍脈が通わない場所には現出しない。

 星は闇の精霊のしとねではなく、虚空うつろなるそらで輝くのだ。

 すなわち、龍脈を巡る精霊の力が及ぶ場所ではなかった。


 夜空の星は天恵の枠に押し込められるほど近い領域ではない。

 夜空の星が理を外れて霧散し混沌へと回帰することもない。



 要約するなら、それら既知の分類で区別できない力だった。


 力は、事の発端にちなんで『星の力』と呼ばれた。


 かのように、物事の始まりというのは決して難しい話ではない。

 ただし、真相と人の理解の間には大きな隔たりがあった事は否めない。


 発見された当時、天にあまねく星の光など人の世を揺るがすほどのものでは無いと考えられていた。神秘的な光景にこそ人の心は揺り動かされ、いくつもの神話が星の配置に準えて語り継がれども、その実態は夜の間にしかまたたきが見えない程度の弱々しい光点に過ぎなかった。


 だからこそ星の力は、力だと考えられていた――


 ――つまりは支払う代償に対して、得られる成果が少ないような類の。


 特定個人が特定条件下でしか扱うことが出来ない。

 もしくは特定条件下にあるものにしか影響を及ぼすことができない。

 さらに応用できる幅も限られ、その代償に対しては代替も効かない。


 極めて限定的な能力だという事実が、人々の認識に及ぼした影響も大きいだろう。

 少なくとも、それはあり、と認識されていた。


 ある程度の文明が発達して、世界の真理が人々に浸透するまでは。


 今となっては当然、星の力の恐ろしさは誰しもが知る所である。

 何かが間違っていれば、消えていたのはこの大地なのだと。


 それはまさしく、星ひとつに内在する可能性ポテンシャルそのものだった。

 人はそれを恐れて敬い、やはりそれは星の力と呼ばれた。







 星の力は血統によって受け継がれない。

 そもそも生物の形成因素遺伝子との相関作用が無い。

 もちろん、知識や鍛錬で後天的に身に付くこともない。


 星の力は担い手と呼ばれる個体と相互に依存している。

 その相互の依存だけで関係性が完結している。


 星の力は重複して存在できない。

 干渉し合うような星の力は誕生しない。

 過去に存在した星の力が再来することもない。

 未来永劫に渡って、二度同じ星の力が現れることもない。


 ひとつの星の力が選ぶのは一人限り。

 その性質ゆえに、選定の基準は明確ではない。

 どのようにして星の力が選ぶのか、あるいは選ばれているのか。

 強大な力は使い手を選ぶというが、これほど極端な例も他に無いだろう。


 大地を消す能力は、その恐るべき力の真髄を知られる前に消えた。

 そんな理不尽な力が世に解き放たれることを怯える必要が無くなったとも言える。

 だが、同じ規模の破壊を起こす力が存在しないと保証するものは無い。

 人を滅ぼす力を持つものが生まれてこないと言い切る事もできなかった。



 星の力は、絶対だ。

 いや、真に星ひとつ分の可能性であるならば、それは正確に言えば絶対とは言わないのかもしれない。だが、ひとたび発現した星の力は、ただの一度も人の手によって覆すことはできなかった。長い人類の歴史の上でただの一度も。

 つまり、それは絶対の力であると定義しても差し支えは無いものだった。


 他の存在や事象に対し、星の力は最優先に作用する。

 星の力は二つと存在せず、星の力の担い手は他の力を得られない。

 矛盾の無い最優先の作用は、干渉しあわない事が所以のものだ。


 どんな魔術も、どんな秘蹟も、物理法則でさえ星の力の前に無力だった。

 この世界においては、どれほど強い魔物の力でもその優先度を覆すことはできない。

 少なくとも、その優位性に並ぶものは世界のどこを探しても存在しなかった。


 もし仮に、人類を絶滅させるような力が生まれてしまったならば。

 それがひとたび発現してしまえば、誰もそれを止められないという事になる。

 もちろん誰にも知られることなく力の対象となる最初の一人が本人となり、すでに担い手ごと力がこの世界から消えているという可能性もあるが。


 星の力は強大だが、あくまで人が持つ力に過ぎない。

 強大な力が、そのまま担い手を強大たらしめるとは限らないのだ。

 天恵による奇跡のような、代償に対する猶予も無い。

 魔術のように創意工夫や応用も効かない。


 そして星の力の担い手は、力の使い方もその代償も選ぶことができない。

 代償は、担い手の誕生より前に定められていて、決して変わる事は無い。

 もっとも代償には規則性は無く、定量的に推し量れるものでもない。

 人の価値観に準ずるものですらなかった。



 星の力が作用するには、この代償という過程が不可欠だった。


 力を使えば、代償として何かが失われる。

 しかし、代償に必要な条件は個々の能力に応じて千差万別。

 根源を共通とする力なのに、その過程にも結果にも個性が発露した。



 代償という名前の過程では、常に等しい価値のものが失われる。

 だがそれは決して、言葉通りに等しいというわけではなかった。


 そもそも価値観というのものは個人個人により異なるものだ。

 万人共通、全時代における共通の価値観というものが成立しない。


 代償を満たす条件は、誰もが認めるようなものではない。

 星の力の担い手が持つすべてを以ってしても足りない場合もある。

 だから、使われることもできず、知られること無く消えゆく星の力もあった。


 星の力の担い手が星の力を使っているのではない。

 星の力の担い手こそが星の力によって使われている。

 いつからか、そんな通説も語られるようになっていた。





 帝国の初代皇帝アルカンドラも、星の力の担い手だった。


 かの者は極めて希少な星の力を持って生まれたものの一人だ。

 ただしその力は希少なだけであり、決して強大と称されるものではなかった。

 むしろ星の力としては比類の無いほど微弱な力だった。


 死を喰らい、じ曲げ、束ねて、操る力。


 力の代償は、あらゆるものの死。

 ただし、この『死』は力そのものではない。

 あくまで代償だった。


 他者へ直接的に死を及ぼすことはできなかった。

 生物の生き死にを自在に切り替える類の力ではなかった。


 だがそれは、星の力の欠陥ではない。

 この力の真価は、適応の範囲にこそあった。

 星の力の弱点である担い手を補うことを可能としたのだ。


 死を捻じ曲げて力として操り、束ねることで担い手の力とする。

 あらゆる存在の死を、あらゆる種類の死を、力に転じるものだった。

 しかもその力の強化は、星の力の例外にれない。

 何人なんぴとたりとも妨げる事はできなかった。

 あらゆる者の死を代償として、より強大な存在となっていった。



 若かりしアルカンドラには、大きな目的があった。

 成人する前に予見の力を持つものに会い、世界の破滅を知ったのだ。

 破滅を知り、それを防ぐため、星の力を振るうことを決意した。


 そのために、ただ一人で戦場を渡り歩いた。

 殺し、殺させることで、己の力を蓄えるために。


 アルカンドラには戦いの趨勢すうせい、勝敗に対する関心は無かった。

 敵軍だろうと友軍だろうと、人が死ぬことで力を得られる。

 かの者は、人の死に際して己がより強くなることをよく理解していた。


 だが、やがて殺せる生物の数に限りが見え始める。

 誰も彼もがアルカンドラを避けるようになったためだ。

 かの者の名は、不吉な異名と共に国を超えて知れ渡っていた。


 そこで、アルカンドラは手法を変えた。

 星の力を変じる事はできなくとも、己の身を削る事は容易い。

 己の血肉を媒介に混ぜ、死者の遺骸を操る。

 少しずつ混ぜる血を減らし、応用の範囲を広げる。

 後に死灰戦士と呼ばれる兵士を、その軍勢を造り上げた。


 疲労も兵站へいたんも気にせず投入できる強大な戦力。

 損耗しても、戦って殺した相手の数だけ補充できる。

 死灰戦士による戦果は著しいものだった。

 力の増幅と、力が及ぶ領域の拡大は加速していった。


 戦いで功績を挙げ、功績を称えられ、領地を得た。

 力を恐れた権力者が、彼を体よく封殺する口実であったのかもしれない。

 だが、かの者はその口実すらも利用した。

 人を集め、開拓し、領地を広げ、発展させた。

 国家間の空白地帯を埋めてもなお、留まることなく。


 つまりは他国領土への侵犯を始めたのだ。

 戦になれば無敗を誇り、戦にならずとも領土は広がる。

 国家としての独立すらも曖昧なままにその規模を膨れ上がらせ、いつしか祖国をも己の領土に併呑へいどんしていた。

 帝国と名を改め、近隣諸国へと侵攻しては領土を広げてゆく。

 帝国の版図は広がり、力の蓄積が加速した。


 いつしか管理できる限界まで広がった領土すべてが帝国の領土になっていた。

 大陸で争いあっていた周辺の小国郡など、跡形も無く消えていたのだ。

 そして、もはや新たに戦を起こすまでも無くなっていた。


 人は、何をせずとも死ぬ。

 遅かれ早かれ、人は死の運命を免れ得ない。

 多く人を集めれば、それだけで死者もまた増える。

 大きく繁栄した帝国の規模が、そのまま力の源泉となった。


 アルカンドラは歳を重ね、肉体は衰え細っていたものの、その力は陰りを見せるきざしすらなかった。

 むしろ星の力は際限なく高まり、肉体にみなぎって熱量を与え続けていた。

 傷病の類だけでなく、暗殺を狙った毒も、誰もが迎える老いさえも、彼の者を時の先にある肉体の死へといざなうことはなかった。


 死ぬことの無い軍勢をようする、死ぬことの無い超越者。


 人はアルカンドラのことを永遠不滅の皇帝とたたえた。

 同時に、影では死にぞこないアンデッドの王とさげすんだ。




 星の力により皇帝自身は衰えることがない。

 だが他者を、死者の肉体を保持する時間には限りがあった。

 死体を操る力が強くなろうとも、朽ちた死体は元に戻らない。

 何より死者は精神活動を保つ事すらできなかった。


 真の意味で死なずに留め置かれるのはアルカンドラ当人に限られた。

 死灰は、他者に力を与するものではなかったのだ。


 後継者たる子も、孫すらも、帝位を譲るより前に寿命で死んだ。

 国内の平定に長い時間が掛かったため、譲位の機を逸していた。

 力に任せた併呑の弊害でもあった。


 やはり最終的には力で大きな内乱を抑え込み、孫へとその地位を譲った。

 自らは表舞台から降り、帝国を陰ながら見守ることにした。


 続く子孫たちも例外なく、アルカンドラを残して先立っていった。


 それからも尚、アルカンドラは諦めることなく備え続けていた。

 遠い子孫の繁栄のために。築き上げた帝国に住まう臣民の為に。

 支え、守り、背負うものが増えても、世界の破滅は防ぐ。

 若かりし日より抱えた信念は固く、老いてなお揺るぐことはなかった。





 それから幾百年の時が流れた。


 戦争の無い平穏な時代が続いた。

 しかし、真に平穏な時代と呼べるものではなかった。

 疫病を根絶させても民は疲弊し、明確に争う敵がなくとも国力は衰えた。

 気がつけば己の子孫との繋がりも知れぬ者たちがはびこり、帝国を動かしていた。


 帝国の重鎮を陰からそそのかし、巧妙に隠れ、潜む者たち。

 潜む者たちは自己の利益を追求し、搾取と浪費を繰り返していた。

 破滅への備えたる帝国の民を虐げ、富をむさぼり喰らう。

 帝国に深く入り込み、備えに巣食い、蝕んで、数を増やしていた。


 アルカンドラは、それまで気付かなかった己の愚かさを悔いた。


 潜む者たちを帝国にとっての害虫であると断じ、処断を始めた。

 潜む者たちを帝国から完全に排するために傾注して数十年。


 専心した甲斐かいあって、帝国のみは完全に掻き出された。だが隠遁して久しい者が内政にまで干渉を続けたために、帝国には大きな波紋が広がっていた。


 特権階級は反発し、内乱が頻繁に発生した。

 内政に関して隠蔽されていた問題が表面化し、大きな国家事業は全て止まった。

 様々な問題を解決するために国庫は破綻し、価値も知らない野盗の襲撃が絶えず、宝物殿まで荒らされた挙げ句、混乱に乗じて火を放たれた。

 蓄えていた破滅への備えたる秘術も、数多くが失われてしまった。

 ここで失われた秘術の数々は、年月によって世俗の間では既に失伝していたものも多い。

 もはや補うこともできない類のものが多かった。


 それら一連の始末がついて、帝国が国としての体裁を整えなおすまでには、それからさらに数百年を要した。


 帝国の内政を司る機関は、主要なものを除いてすでに機能していなかった。

 戸籍管理は形骸けいがい化され、皇帝の血縁図はその写し控えすらも消失しており、すでに存命している現皇帝が血の繋がりある直系の子孫であるのかどうかも定かではなくなっいた。

 否、何世代も前から不自然に続く皇帝の病死と、公的な記録が大きく雑に改竄かいざんされた痕跡などは、誰が何と言わずとも人の入れ替わりを暗に示していたとも言えよう。アルカンドラの血族になり代わり、潜入し続けていた外敵やその子孫しか残っていないことは、誰の目から見ても明白だった。



 この時、アルカンドラが世に生まれて千余年。


 アルカンドラはすでに人生の目的を見失っていた。

 何を目指す事も、何を守る事も諦め、希望を見出せなくなっていた。


 そんな折に帝都への襲撃があった。

 魔物だ。


 激しい戦いだった。

 人が死んだ。沢山の人が抵抗もままならず息絶えていった。

 生き残っても帝都の惨状に絶望し、自害するものすらいた。

 だが、アルカンドラは民を守るため力を振るうことができなかった。

 アルカンドラにとってそこに住まう人間は己が築いた帝国の民ではなかった。

 自在に操ってきた死灰の戦士も、力を通さなければただの灰に過ぎない。


 力を振るえぬまま滅びゆく帝都を目にしたアルカンドラは、己の信念を否定することに繋がるとも理解しつつ、死を受け入れるという行為を視野に入れていた。

 時折、抗いがたい渇望として変化し、心を捉えて離さなくなっていた。


 それから間もなく、星の力の行使を止めることを決意した。


 現世からの解放。

 それは己を支え、同時に律し続けていた信念を諦めるということ。

 肉体を巡る星の力を意図してせき止めれば、残された死体は朽ちて失われるだろう。

 もし、それで死後の世界へと逝けるなら、省みることの無かった子孫達へ労いの言葉をかけ、己の魂が磨り減って尽きるまで永遠に償い続けることすらもやぶさかでは無いとすら考えていた。


 そう考えて力の行使を止めて――







 ――止めて、




 アルカンドラはそのとき初めて理解した。


 己が持つ星の力は、


 代償に関しては、この世に生を受けたときから知っていた。

 力を使うたびにこの文言が頭の中を過ぎっていた。

 それが全てを示すものだと知っていた。


 


 使用を躊躇ためらわせるような文言だが、力を使っても己が死ぬわけではない。

 だから己以外の、たとえば支配下にある誰かの生命から、代償として失われてゆくのだと解釈していた。

 それはある意味で正しくもあり、そして致命的な間違いのある誤解だった。


 誤解は正されることとなった。

 結果として、頭の中に今なお響くこのだと知ることになった。


 死灰の王権は、


 真実は至極単純で、簡潔なものだった。

 死灰の王権は、何者にもっ《・》のだ。


 誤解していた。

 それを改めて理解した。理解してしまったのだ。


 つまり、おそらく、は、|であったということを。


 ことを。




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 >>


 翻訳機能を介した多重干渉を確認しました。

 一時的に該当部の処理を凍結し、機能の無力化を実行。


 >>


 外部因子への強制排除に失敗。

 抽出隔離に移行します。


 >>


 未定義情報構造体の抽出隔離に成功。

 構造体の情報解体を開始。

 解析後、再定義とともに書庫へ格納されます。

 機能停止状態からの復帰を開始します。


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