第6話
「おはよう」
「おーっす!おはよ~!」
いつもと変わらない朝がやってきた。
寒さも少し和らいで、刺すような冷たさは今朝はない。
体調も回復し、今日からようやく登校できるようになったゆりは、自分の席についていた。
何やら手の平を嬉しそうな顔でじっと見ている。
「復活おめでとう!なのに、今度は雄樹くんが風邪引いて休んでるよ。ゆり、今日こそはあいつにキャンディ渡したかったんじゃない?タイミング悪いね」
亜希子がゆりに近づいてきてそう言った。
ゆりは それを聞いてふふっと笑った。
(雄樹くん、受け取らなくていいものを受け取っちゃったみたいだね)
申し訳ないなと思いながらも、ゆりは笑顔だ。
「あれ?ゆりちゃん、今日のキャンディは可愛いね!ハート型だぁ!」
クラスメートの女子が、ゆりに近づいて言った。
「あ、ホント。いつもと違うね。ちょうだい!」
別の女子が近づき普段と同じように、ゆりからキャンディを貰おうとしたのだが、それを見たゆりは大慌てで阻止した。
「あっ!これはダメだよぉ?あげない!」
女子の手からハートを取り返し、安堵したゆりは大切そうにキャンディを見つめている。
クラスメートたちはその様子に驚いていた。
キャンディをくれないゆりは初めてである。
「何なの、どうしたの?」
ゆりは、その問いかけには答えずにただ幸せそうに笑っていた。
CANDY POP 水無月杏樹 @Anju_M123
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