第2話「小さな双子と警官」

「セイちゃん!久し振り~!!」

「夏生、小夏!!」


こちらもまた双子の姉妹。久能夏生、久能小夏。どちらも小学生の時の

友達だ。


「ねぇ、大和君たちの家に住むことになったってホントなの!?良いなぁ、

ちょっと羨ましい…!!」


鳥羽三兄弟、揃って顔が良いと女子の間では評判なのだ。八雲学園、顔面偏差値が

高い。ここは恋をしたい女子に是非とも進めたい学校だ。


「でも引っ越したのに、また戻って来たんだ。ちょっと大変そう。男の子たちしか

いないんでしょう?」

「三兄弟に囲まれてるからちょっと気まずい。三兄弟の両親、揃って海外に今は

出かけてるからさ…」


背の高いセイラは小柄な夏生と小夏を僅かに見下ろす形になっている。ふいに夏生は

頬を膨らませる。


「良いなぁ…私も欲しいよセイちゃんぐらいの身長が。160㎝越えぇ~…」


あげられるならあげたいが、身長は誰かに渡すことが出来ない。常識だ。

学園内を出歩いているとマンモス学校なだけあって不良も集うらしい。

今時腰パン、リーゼントて…。一昔前の不良の定番だ。


「あんな感じの不良って、ホントにいるんだね」

「見ない方が良いよ。絡まれると面倒くさいから…気を付けてね?ホントに

セイちゃん、時折トラブルメーカーになるから」

「それ貶してるよね?気を付けるけどさ…」


複雑な心情になったセイラは溜息を吐いた。世話を焼いているのか焼かれているのか

自分でも分からなくなる。


「あっ!噂のイケメンお巡りさんだ!!」


噂のイケメンお巡りさん、一体誰?セイラも小夏たちの後を追う。周りの女子生徒は

特に目を向けていないので小夏たちのタイプなのだろう。遠くから見ていると妹に

囲まれる少し年上の兄感がある。だがそのお巡りさんの顔立ち…見覚えがあった。


「お、大きくなったなセイラ」

「やっぱり、朱雀さん」


珍しい名前。葛城朱雀、小柄なカッコイイお巡りさん。セイラの顔見知りだ。

小夏と夏生よりは背が高い。セイラとどっこいどっこいの背丈。


「良いなぁ!セイラちゃんの周りカッコイイ人ばっかり~!!!」

「夏生、恥ずかしいよ…。朱雀さん、巡回してるんですか?」


学生の登校時間と下校時間によく巡回をする警官を見る。


「最近、女子高生を狙った強姦が良くあるんだ。お前らも女子だろ、なるべく

人通りの多い道で帰れよ。何なら交番の前でも通っていけ」

「はーい!」

「じゃあ、俺は仕事中だから。セイラ、また時間があるときに様子を見に行くよ」


朱雀は手を振って彼女たちを見送った。葛城朱雀、身長168㎝。こんな小柄な

警官、今どきのブイブイ言わせている不良たちにとっては舐める相手。

この日も彼に喧嘩を売る不良が一人。


「あららぁ、お兄さん。それ、恐喝って言うんだぜ?」

「あァ?チビが、出しゃばるんじゃねえ」


朱雀を見下ろすガタイの良い男が歯を見せて笑い拳を振るった。


「公務執行妨害になるけど―」

「はへァ?」


巨体を投げた小柄な男。


「チビになら勝てるってか?外見で実力を測ってるんじゃあ、まだまだだな」


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