第22話 寂しい背中

 翌朝の通勤路で目的の人物を探す……居た!

 モッチャリロウスァだ……多分?

 なんだか物足りない感じがするのよね。

 でも、銀色の顔の警察官なんてモッチャリロウスァだけよね。


「おはよう、モッチャリロウスァ」

「あぁ、おはよう……」


 あれっ、どうしたのだろう。

 昨日の朝は法律なんて関係ないって感じで暴走していたのに。


「聞きたい事があるのだけど?」

「ふっ、私には質問に答える権限なんてないさ……」


 質問に答える権限って何よ?


「ところでモッチャリロウスァさん。腕が足りないですけど、落としたのですか?」


 はっ? 腕が足りない?

 アレクシスは何言ってるの?

 ちゃんと2本ついているじゃない。

 2本?!

 背中の4本の腕は何処に行ったのよ!!


「落とし物なら警察に届けるのが常識だぞ」


 晦冥かいめいが偉そうに言う。

 警察に届けろって言うけどさ……相手、警察官本人だよ?

 次元の警察で宇宙人だけど!


「落とし物ではないわ! 降格処分だ! 貴様らの言う事を聞いて次元警察の法律破ったからだ! どうしてくれる?」

「ちょっと! 降格処分で何で腕が減るのよ?」

「貴様はそんな事も知らないのか? 背中の腕の本数が階級を示しているのは常識だろう?」


 どこかで聞いた事がある設定ね。


「なんだ、奴も莉子殿と同じで大天使だったみたいだな」

「モッチャリロウスァさんは莉子さんと同族だったのか」

「「誰が同族だ!!」」


 私とモッチャリロウスァの声がハモる。

 天使の背中にあるのは翼だから!

 腕じゃないわよ!!

 せっかく最終決戦気分で来たのに、モッチャリロウスァのせいで台無しよ。

 本当に警察官? 本当に私達の次元を守っているの?


「で、聞きたい事とはなんだ?」

「答えてくれるの? 権限ないのに?」

「もう次元警察など、どうでもいい。一番ではなくなった私はモッチャリですらない。ただのロウスァだからな」


 そう言えばモッチャリって1番って意味だったね。

 忘れていたわ……どう見ても1番と思えないから!

 彼が1番だなんて次元警察って残念過ぎるわ!


「理由は思い出せないけど、私が二人を召喚したのよね? しかも異世界じゃなくて、創作の世界から……モッチャリロウスァが知ってる事を教えて?」

「どうやら時間が無くなったようだな。お前を撃つ、覚悟しろ召喚士!」


 私の話を聞いたモッチャリロウスァが、いつも以上に真剣な表情で私に拳銃を向けた。

 時間が無いってどういう事?

 彼の殺意に反応してアレクシスと晦冥かいめいの二人も戦闘態勢に入る。

 戦わないといけないのかな。

 急に私の質問に答えてくれなくなったのは何故?

 モッチャリロウスァの嘘つき!!

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