第21話 勇者として、魔王として
課長との話で感じた違和感。
アレクシスと
事実を確かめる為に、急ぎ帰宅した。
「おかえり莉子さん。どうしたの?」
「どうした莉子殿? 元気がないな」
出迎えてくれたアレクシスと
鈍い二人でも直ぐに分かる程に落ち込んで見えるのかな?
今の私は……
「二人に話があるの」
いつも通り夕食を作って、3人で食卓を囲む。
「それで話って何かな?」
「大事な話なのだろう?」
二人に話を催促される。
早く聞きたかったのに……いざ、話すとなると気が引ける。
でも、確認しなければ。
不安を呼び起こす違和感を払拭する為に!
「ねぇ、もしもだけどね……二人が現実の存在じゃなくて……物語の登場人物だったら、どう思うかな?」
「何も思わないですよ」
「そうだな、特に思う事は無い」
えっ、それだけ!?
二人の想定外の回答に驚く。
「どうして? 偽物なんだよ! 辛いと思わないの?」
「僕はそう思わないよ。勇者じゃない莉子さんには分からないかもしれないけど、勇者として生きると言う事は、物語の登場人物としての人生を送る事と同じなんだよ。誰かに勇気を与える物語の主人公、それが勇者である僕の役割さ」
「そうだな、我も同じようなものだ。莉子殿の世界では、魔王はファンタジー作品にしか出てこないのだろう? 魔王がいる異世界という都合の良い物など無い、最初から分かっていた事だ。我らが実在しなくても不思議な事ではないさ」
アレクシスと
何でそんなに冷静なのよ!
「何で平気な顔で、そんな事を言うのよ! 自分の存在が誰かに作られた物だなんて耐えられないのが普通でしょ!!」
「間違ってるよ莉子さん」
「あぁ、間違ってるよ莉子殿は」
二人が嬉しそうに微笑む。
何なのよ、その笑顔は!
二人と対照的に、私は苛立ちが抑えられない。
「私の何が間違ってるのよ!」
「自分の存在が作り物だって事に耐えられないのではないよね」
「我らの存在が作り物だって事に莉子殿が耐えられぬのだろう?」
私の心からの叫びに、二人が心の底から温まる優しい声で答えてくれた。
「アレクシス……
「僕は最後の時まで、莉子さんの希望になるよ。希望をもたらす勇者として」
「我は最後の時まで、莉子殿の力となるさ。力の象徴である魔王として」
二人は何の迷いもなく私を支えてくれる。
それが心の底から嬉しい。
「ありがとう二人とも……」
私の感謝の言葉を聞いて、二人が満足そうにうなずく。
二人と話して実感した。
理由は思い出せないけど、二人を召喚したのは私自身だと。
モッチャリロウスァが言っていた事は正しかったのね。
モッチャリロウスァ?
そう言えばモッチャリロウスァって何?
次元・警察・宇宙人な彼の事は全く心当たりがない。
良く分からない奴だけど、明日の出勤時に出会うだろう。
今度はキッチリ向き合って、召喚の謎に決着を付けようーー
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