第20話 疑念。生まれた違和感。
今日こそシッカリ働かないと!
私は召喚士じゃなくて、OLなんだからっ!
自分の席に座って気合を入れた所でーー
ダン!
私の机に手のひらが叩きつけられた。
多分想像通りの相手だと思うけど、相手を確認する為に横を向く……予想通り課長だった!
「ねぇ、高橋さん。一緒に通勤してた素敵な男性とは、どういう関係?」
なんで女性の課長に嫉妬されるのよ。
課長とは作者と読者の関係よ!
本当にそれだけなんだからっ!
周囲から私達の関係を揶揄する声が聞こえる。
修羅場じゃないですからっ!
「
「かいめい?」
「こういう字ですよ」
メモ帳に
「ふーん、珍しい名前なのね。辞書で調べたの? 普通は使わない単語よ」
流石、WEB小説家の課長。
普段使わない漢字も知ってるのね。
辞書で調べた?
調べたような……本人から聞いた様な……どうだったかな?
「唯の居候ですから。気になさらないで下さい」
「いっいっ居候って、一緒に暮らしてるの?!」
あっ、失敗した。
一緒に暮らしてるなんて言ったら誤解されるわよね。
「一緒に暮らしてはいるけど、想像しているような関係じゃないですから! もう一人いるし」
「もう一人! 高橋さんは何人の男性と暮らしてるのよ!」
「
「ちょっと来なさい!」
急に不機嫌になった課長に連れられ、かつての最終決戦の跡地……給湯室に連れ込まれる。
「一体なんですか? 仕事中ですよ」
私は不機嫌に答えた。
だって、怒らせた理由が分からないから。
意味もなく不機嫌になられたら気分悪いよね?
「ねぇ、休戦したよね。私達?」
休戦?
休戦って、らぶきゅんポエミー戦争の事よね。
休戦協定通り、課長の執筆活動について、何も触れていないと思うのだけど。
「しましたよ。それが何か?」
「とぼけないで! アレクシスって私が活動初期に書いた短編の主人公よね。エヴリンって名前の姫と恋に落ちる異世界恋愛小説。人気が出たら連載しようと思ってたけど、あまり人気が出なかった作品。覚えてくれていたのは嬉しいけど、仕事中に名前を出さないでよ」
えっ、エヴリン?
確かアレクシスの恋人もエヴリンだった……偶然の一致?
それと、課長に言われて思い出した。
彼女が甘ったるい恋愛の詩を書くようになって人気が爆発する以前、短編小説を書いていた事を。
その中にアレクシスという名前の主人公がいた事も。
「ぐ、偶然ですよ……だって……私が知ってるアレクシスは、
「異世界から召喚?」
「何でもないです! 海外からのホームステイをファンタジー風に言ってみただけですよ! 早く仕事に戻りましょう!」
心配そうな顔の課長を無理やり連れて仕事に戻った。
渦巻く疑念を払拭する様にーー
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