第12話 シュガーリィポエム先生

 今日は宇宙人で次元な警察官のモッチャリロウスァさんを簡単にやり過ごせたわね。

 可哀そうだけどアレクシスを犠牲にすれば楽勝だから。

 でも本当の困難はこの後。

 我らが総務課の課長、赤城詩織との対面だ。

 彼女、私にとってはシュガーリィポエム先生なのよね……

 甘ったるい詩が得意な作家さんで、初連載のWEB小説『魔法少女ワンダフル桜』は私のお気に入り。

 彼女の書く甘ったるい詩と同じで、恋愛パートが素敵なのよね。


「ちょっと、高橋さん大丈夫?」

「デュフッ!」


 突然課長に話しかけられて、思わず怪しい笑い声を出してしまったわ。

 晦冥かいめいの思念魔法で読み取った時の印象が強かったからかしら?


「な、へ、変な笑い方ねっ。そんな笑い方したら駄目よ」

「私が可愛いからですか?」

「デュフッ!!」


 今度は課長が変な声を出す。


「ちょっと話があります」


 慌てた課長に手を引かれて、給湯室に連れ込まれる。


「可愛いのはわかるけど、みんなの前で言ったら嫌味になるわよ」

「課長だって可愛いじゃないですか? この前の詩だって恋する少女の心情がリアルで、乙女な作者さんだなって思いましたよ」


 あっ、しまった。

 思わずシュガーリィポエム先生だと思って話しかけてしまった。


「へっ、詩って、そんな仕事してないわよ」

「仕事とは言ってないですけど」

「仕事中なんだから関係ない話は止めましょ。趣味の話は仕事を終えてからにしなさい」


 なんだか仕事サボって趣味の話をしている人扱いで嫌だな。

 えーいっ、こうなったら徹底的にやってやるっ。


「なんでコスカシバンが味方になるんですか? 敵ですよね? 仲間になる理由は?」

「コスカシバンってなに? 知らないわね」


 語るに落ちたわね。

 一度聞いただけでコスカシバンなんて復唱出来るか!


「コスカシバン知ってますよね? 桜の天敵のコスカシバってをモチーフにした怪人ですよ。ワンダフル桜の天敵!」

「なななんで未公開の103話の内容を知ってるのよ! 貴女ハッカーだったの?」

「やっぱり作者さんだったのね。シュガーリィポエム課長!」

「イヤァァァァァァァァァァッ! ラノベ課長なんて呼ばないでぇぇぇぇぇ!!」


 そんな事は一言も言ってない。

 課長が叫んだので、心配した他の社員が給湯室に集まって来た。


「何事ですか?」

「大丈夫ですか?」


 課長がいつものクールな表情に戻る。


「ちょっと虫が出て高橋さんが叫んだだけよ。心配ないわ!」


 叫んだの私じゃないですよね?

 コスカシバンが出たのは本当だけど……

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