第10話 序列3位

 今日も勇者と魔王を引き連れて出勤よ!

 家を出ると佐藤さんと鈴木さんが落ち葉をかき集めていた。

 最近冷えてきたのに、朝から掃除してるなんて元気だなぁ。

 そんな二人にアレクシスと晦冥かいめいが親し気に話しかけている。

 二人が話終わった後、私も挨拶を終え3人で会社に向かう。


「朝から話し込んでたけど、いつ仲良くなったのよ」

「莉子さんが仕事中にですよ」

「そうだな。昨日は児童公園の清掃を一緒に成し遂げた」


 何なのよ! 私の部屋は掃除しないくせに!!

 一応、私が部屋を貸して、食費も払っているのだけど。

 ただのご近所さんに随分親切にしてるじゃないの。


「莉子さんは佐藤さんと鈴木さんが嫌いなのですか?」


 私がムッとしていたのがバレて、佐藤さんと鈴木さんが嫌いだとアレクシスに勘違いされた。

 嫌い……ではないのだけど。でもねぇ……


「まぁ、責めるなアレクシス。莉子は佐藤さんと鈴木さんに嫉妬しているだけだ」


 どうして分かったの晦冥かいめい

 いつもは的外れな事を言うのに、今回は的を得ている。


「凄いや晦冥かいめい! 莉子さんの反応から察するに、嫉妬しているのは本当みたいだね」

「本当ですみませんねっ! 二人が仲良いから嫉妬しましたよ!!」


 投げやりに肯定すると、晦冥かいめいが上機嫌で話を続ける。


「我は理解している。気にするな、序列3位の莉子!」


 へっ、序列3位の莉子?!

 何を言い出すの? もしかして、いつもの勘違い発動?!


「序列3位って、この世界の知識かい?」


 アレクシスがすかさず晦冥かいめいの話題に食いつく。


「良く分かったなアレクシス。どうやら世界に馴染んできたようだな」

「な、な、何を言ってーー」

「とぼけても無駄だ。この世界で最大の勢力を誇るのが佐藤だ。そして、2番目が鈴木なんだろ? そして莉子……高橋は残念ながら3位だ!」


 そ、それって苗字が多いランキング……だよね。

 それで、高橋の私が3位扱い? やめてよね!


「それはね。同じ苗字が多いだけでね。序列とか関係ないからね」


 誤解を解くために、二人に言い聞かせる様に説明した。


「何を言っている。血族が多い程、世界を掌握しているのは常識だ」

「そうだよね。僕の世界でも血族の多さは支配力を表していたよ」


 あーっ、この人達ファンタジーな思考の人種だった……

 日本の佐藤さんや鈴木さんが全員血族な訳ないでしょ!!

 まぁ、理解させるのも面倒だし、全否定するのも大人げないから、少しだけ付き合ってあげようかな。


「高橋だけじゃなくて、実は莉子も3位だったりしてね」

「残念だな莉子。3位だったのは去年だ。今年は8位に転落している」


 晦冥かいめいに止めを刺され膝をつく。


「落ち込まないで下さい。今年は莉子の人気が低迷したけど、まだ一桁順位ですよ」


 アレクシスに励まされるが、逆に疲れが増しただけだった。

 何なのよぉぉぉぉぉっ!

 まるで私の人気が落ちたみたいに言わないでよ!

 出勤途中なのに心がポキリと折れた。

 あぁ、私の心を打ち直せるドワーフの鍛冶師はいないのでしょうか?

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