第8話 モッチャリロゥスァ

 リア充ではない連帯感から、次元警察で宇宙人なモッチャさんに親しみを持ったので話を聞いてみる事にした。


「ところで、モッチャ何とかさんはどうして私を狙うの?」

「モッチャ何とかではない! モッチャリロゥスァだ!」

「モッチャリロースーね、覚えたわ」

「違う! なんだそのチンジャオロースーみたいな呼び方は! モッチャリロゥスァ! モッチャリロゥスァ!」


 名前に拘りがあるのかな。

 私の質問より名前を憶えて貰えていない事が気になるみたい。

 そんなに名前を連呼しなくてもよいのに……


「莉子さんは記憶力悪いみたいですね。ムッチリロースなんて簡単な名前なんだから直ぐに覚えられますよ」


 勇者アレクシスが明らかに間違った名前で呼ぶ。

 煽っているのか? 天然なのか?


「誰がムッチリロースだムッチリしてないし、肉じゃないよ肉じゃ! どう見ても金属だろう!」


 その通りなんだけど

 うーん、頑張れば覚えられると思うけど、もっと呼びやすい名前がよいな。

 そうだ、外国人もあだ名ってあるよね。

 アレクシスも子供の頃はアレクって呼ばれてたって言ってたし。


「外国人の名前って覚えにくいのよね。あだ名とかないの?」

「そんな物はない! いいかモッチャリとは1番を意味するのだ。2番、3番を意味するモッチョレ、モッサリとは違うのだ。そしてロゥスァとは代々この次元を守ってきた我が星を意味する。この栄誉ある名前にあだ名をつけたり短縮するなど許せぬ!!」


 えーっと、そうするとだよ。

 日本語で言えば『一番星』って事で良いのかな。

 でも『一番星』って呼んだら怒りそう。

 どうしようかな……


「そう怒るなよジゲン。貴様がどう思ってい様と評価するのは周囲の人間だ。どの様に呼ばれるかは己の行動次第だと理解しろ」

「何だと貴様!」


 今まで黙って見ていた魔王晦冥かいめい突如語り出す。

 モッチャさんは怒っているが晦冥の話は説得力がある。

 彼自身が周囲の人間から、人々に暗闇をもたらす存在と呼ばれているのだから。

 でも、なんでジゲン?


「えっと、気のせいならよいのだけど……今ジゲンって呼んでた?」

「呼んだに決まっている。いつもジゲン、ジゲンって言ってるから奴は今日からジゲンだ!」

「ままままてっ、何故私の名前がジゲンになるのだ。ッチャリゥスァだ!!」


 あれっ、今言い間違えたよね。

 自分でも間違えるじゃないの。


「ふっ、自ら名前を間違えたな。諦めて今日からジゲンと呼ばれる事を受け入れるがよい」

「くっ、今日のところは見逃してやる。覚えていろよ!!」


 そう言い残してモッチャリロウスァが走り去っていった。

 しっかり覚えておくよ、名前を間違えた事!!

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