第2話 知り合いじゃなかった
謎の宇宙人から逃げ切って、自宅に籠ったところで我に返る。
初めて自宅に招き入れたのが……自称勇者と魔王か……
謎の次元・警察・宇宙人なアイツから逃れる為に、自宅に逃げ込んだから仕方ない……よね?
色々疑問だらけだけど、アレに対抗するには二人の協力が必要なのよね。
勇者と魔王はお互い警戒して、部屋の両端の壁にもたれ掛かっている。
敵対関係にあるから当然の事だけど、仲良くしてもらわないと困る。
だから自己紹介をして、仲良くなる切っ掛けを見つけなきゃ。
「私は高橋
「莉子さんか、覚えたよ。実は僕と魔王は初対面なんだ」
「その通りだ莉子殿。我と勇者は初対面であるぞ」
早速、勇者と魔王が私の名前を憶えてくれた。
だけど二人が初対面だったのは驚きね。
二人共必死に『勇者!』、『魔王!』って呼び合っていたのだから。
「それなら自己紹介しましょ」
「分かったよ莉子さん。勇者アレクシスです」
「アレクシス? 何を言っている? 勇者光輝よ」
名乗った勇者君ーーアレクシスに対して魔王が別の名前で呼びかける。
あれっ、なんだろう、この違和感。
「勇者光輝? さっきも言ったけど、僕はアレクシスだけど……」
アレクシスが戸惑いながら再び名乗った。
「勇者アレクシス? 我が宿敵の勇者は
「えっ、もしかして違う世界の魔王さんですか? 僕の世界の魔王はベリアルですよ」
「ベリアル? 我が名は
あれあれ、どういう事?
勇者と魔王って同じ世界の住人じゃなかったの?
それならーー
「どうやら全員別の世界出身みたいね。違う世界の勇者と魔王なら、争わなくても良いよね? 一時休戦しましょ」
「僕の世界の魔王じゃないから倒しても意味がない……とは言えないな」
「どういう事だ勇者アレクシス?」
えっ、まさか勇者に一時休戦を否定されるなんて。
可愛い顔に似合わず好戦的なの?!
「勇者の僕が、人の世に暗闇をもたらす者と名乗っているような相手を放置すると思うか?」
「誰が名乗ったのだ? 我は人の世に暗闇をもたらす者と呼ばれていると言ったのだ。『名乗る』と『呼ばれている』では意味が違う」
魔王
「なら本当の名前を教えてくれよ。教えてくれないなんて言わないよな」
勇者アレクシスが挑発する様な態度で晦冥に本当の名前を問う。
だが、晦冥は挑発に乗らず、少し寂し気な表情をしているのは何故だろう。
「ふん、そう言ってやりたいところだが教えられん」
少しだけ躊躇った後、晦冥が不機嫌に言い放った。
「何故だい?」
「知らないからだ。捨て子の我に名前など無い。生きる為に自分を襲う人間を撃退していたら、
「
「晦冥もなのかだと? まさかアレクシス!」
「僕も捨て子なんだ。アレクシスは教会のシスターが付けてくれた名前なんだ」
「晦冥っ!」
「アレクシスっ!」
私の目の前で抱き合う二人の男性。
二人で語り合って仲良くなったのは良い事だけど、話に入れず疎外感を感じる。
ハァ、私、必要なのかな?
自宅なのに、この場にいる事に疑問を感じてしまったのであった。
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