第1話 勇者と魔王と警察官
退屈な日常を誰かが壊してくれたら……そう思っていた時もありました。
「ブレイブ・ライトニング!」
「
しゃがみ込む私の頭上を雷と水流が飛び交う。
返してよ私の日常!
退屈な日常を誰かが壊してくれたらと考えていた過去の自分を呪う。
「魔王! お前を倒して世界に平和を取り戻す!!」
「勇者! 貴様を滅ぼし世界を平定してみせる!!」
私の右にいるのは勇者と呼ばれていた男性。
まだ10代かな。流れるような金髪と中性的な顔立ちで可愛い。
中二病全開の勇者風の恰好でなければ惚れたかもしれないな。
私の左にいるのは魔王と呼ばれていた男性。
30才くらいかな。黒髪の短髪で、頼りがいがありそうなワイルドな表情が素敵。
派手な魔王風の恰好でなければ惚れたかもしれない渋い男性。
だけどね、一体何をしてるのよ!
ここは駅から徒歩20分、自宅近くの路地裏だよ?
二人共世界の平和を願っているようだけど……まず、私の平和を願ってよ!
誰か助けてよ!!
そう、願ったと同時に勇者の後方に警察官の姿が!
やった、願いが叶った!
今日の山羊座のラッキーアイテムのお陰ね!
「お巡りーー」
ギャン!
突然の炸裂音が私の助けを求める声を遮った。
目の前には信じられない光景……警察官が拳銃を構えている。
もしかして、私、撃たれた?
私が死んでいないのは、目の前の勇者君が銃弾を防いでくれたからかな?
「どういう事だ。貴方はこの世界の人間では? それなのに何故この女性を攻撃したのですか?」
「そうだな。我も疑問に思う。貴様は何故この小娘を攻撃したのだ?」
勇者と魔王が警察官に問う。
あっ、良かった。
一応私の事を気にかけてくれていたのね。
無視されているのかと思っていたわよ。
元々、この勇者と魔王が原因で困っていたのだけど。
「その小娘が世界を乱したからだ。異世界からの召喚は禁足事項だ」
異世界からの召喚?
勇者と魔王なんて、この世界には存在しない。
だから、召喚されたってのは分かるけど、何で私が召喚した事になってるのよ。
「何で私のせいなのよ。勝手に勇者と魔王が現れて困ってるのは、わ・た・し!」
怒る私に対して、警察官がおもむろに私のショルダーバッグに結んだハンカチを指差す。
「その魔法陣が証拠だ。言い訳するな召喚士!」
もしかして、今日の山羊座のラッキーアイテム、幸運の文様を描いたハンカチの事?
ネットで公開されている運勢占いだよ! 12星座占い!!
人類の12分の1がやっちゃうかもしれない事だよ?
そんなんで勇者と魔王が召喚出来るなんて言いがかりでしょ?
「ブレイブ・ライトニング!」
突如、勇者が放った雷撃が警察官を直撃する。
えーっ、いきなり殺しちゃった!?
立ち上る煙で警察官の姿が見えないけど大丈夫かな。
ガガガガガッ!
呆然と立ち尽くしていたところに、銃撃音が鳴り響く。
「魔石障壁!」
身動き出来ない私の前で、魔王が紫色の石の障壁を作り出して銃弾を防いでくれる。
10秒ほど経った後、銃撃が止んで煙の中から攻撃者が姿を現した。
銀色のメタリックでツルっとした美肌をした人型の生物。
しかも背中から4本の腕が生えている。
「私は別の銀河から来た、次元のゆがみを正す正義の警察! モッチャリロゥスァ!」
えっ、別の銀河で、次元で、警察で、最後のは名前なの?!
勇者と魔王より意味が分からないんですけど!
しかも異世界は駄目なのに別の銀河はOKなの?!
「いったん逃げるぞ! 小娘の安全を確保する」
「分かった魔王!
魔王が私を抱えて逃げ始める。
「待て! 召喚士!!」
次元で警察で宇宙人な奴が銃を乱射しながら追いかけてくる。
召喚士ってなによ!
私OLなんですけどっ!!
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