第6話
???
燭台で照らされた円卓には3人ほど座っており、席が一つ空いていた。
「やっほー待たせちゃってごめんね!」
扉が開きオジュハルが軽く、しかし申し訳なさが含まれている声で話しかけた。
「いえ、私達が早めに来てしまっただけなので気にしないでくださいオージュさん。」
「そうだぞ。それに、早く来ていたとしても不平不満を垂れ流すだけだったからな…」
「嘆かわしいことにそうなんです…我々の森も静けさが遠のいてしまった…」
人族、獣人族、エルフ族と順に言葉を発する。
「あはは…みんなお疲れみたいだね…僕の所も何かと報告が上がってきているよ。といってもエリゴルにはあまり来ていないみたいだからまだマシなのかも。」
「フラウロスは許容オーバーですね…4等分した人数なら問題なく対応できたのでしょうがこうも片寄るとは…」
「マルコスはギリギリってとこだな…外国の奴ら、獣人になってもすぐ動けんだろうにこうも集まるとはな…」
「ウィネは人数的には問題ないですが森に静寂が無くなりましたね。早速森を探索していましたよ。」
「エリゴルに来なかった分他にしわ寄せがいっちゃったんだね…ごめんねアリラちゃん、ウェルガ、ゲオル。」
「魔族は特に種族特性が強く出るからな。忌諱されるのはある程度見越してはいたぞ。」
「ですね…ただ、こうも人族に片寄るとは思いませんでしたが…もう少し少なく申請すべきでしたね…ゲオルさん、森での注意点とかきっちり伝えましたか?」
「エルフ族の魔力の源は自然と伝えたのであまり荒らされないと思いますよ。当分は目を光らせる必要がありますが。」
4人はお互いの状況を報告し合い、ため息をついた。
「それにしても…フラウロスに来た外国の方達はなぜか競争というか出し抜こうという意識が高かったのですが。何か思い当たる節とかあります?」
アリラがふと思ったことを他のメンバーに問いかけた。
「そういやそんな報告あったな…」
「あっ!!」
何か思い当たったのかゲオルが大声を上げた。
「お?どうしたゲオル?」
「私の所の部下が言っていたのですが、他の種族より探索範囲広げるぞって外国の方が叫んでいるのを聞いたみたいです。」
「えぇー!?足並みそろえないと意味がないのに…まぁ…先行したら維持するのが大変だけど成長にはつながるけどさ…」
オジュハルが先行き不安に感じたが、アリラは納得といった顔をしていた。
「創造神様が説明をしていないのでしょうね。自然体でいたほうが新たな発見につながるのかと。でも…まさか種族間で争っていると捉えられるのはビックリですが…」
「あんなでかい壁があって4つの国が分断しているってことだから勘違いはするだろうな。ま、領域を広げるには均等にした方が楽なんだが外国の奴らは敵に突っ込んでいくんだろうな。」
「突出している箇所が苛烈になっていきますからね。精鋭に育つか潰されるかはわかりませんが…」
「それでも不死性を有していますから継続的な戦いには向きますよね…資源を食い尽くされなければですが…」
ゲオルは森がなくならないかと心配になり、警備を増やそうと心に決めた。
「ま、初日乗り越えられたんだ。そのうち落ち着くだろう。」
楽観的に思えるウェルガの意見に、皆はそれもそうかと息を吐いた。
「はぁ…私はこれから残りの書類をチェックですよ…今夜は徹夜になりそうです…うぅ…なぜこんなに人族を選ばれるのでしょうか…素行も怪しいですしフレカを渡すなんてもっての外という意見が上がってきてますよ…」
「それはどこの種族でも思うだろうな…てかいきなりフレカ渡すとかありえんだろ?」
そうウェルガが言った時に、あっという声が響いた。
「…オージュさん、あなたもしや…」
「あはは…気になった子に渡しちゃった。」
「何やっているんですかあなたは…」
「い、いやぁゲオル。あの子は大丈夫だって!他の外国の人達と全然違かったんだよ!これからもあの子の成長を見守りたいってことで渡しちゃったんだよ!」
「相変わらずだなオージュは。前の世界から変わっておらん。」
「そうですね…私の母が言っていた通りオージュさんは人を育てるのが好きなのですね。」
「そ、そうだよ!僕は人が育っていく過程を見るのが好きなんだからフレカを渡すのもおかしくない!…呼び出されるか分からないけれど…」
「フレカを宛てにしない方なのですか?それはとても素晴らしい方ですね。オージュさん程の実力者を呼べるなんて頼りっきりにされてもおかしくないですのに。」
「ほんと珍しいですね。強い力に憧れたり使いたいって思う方が多いでしょうに。」
「それでもいきなりフレカを渡すオージュにビックリだがな。普通は一定以上の信頼を築いてからじゃないとメンドイことになるだろうな。」
3人の意見は尤もである。信頼を築き、仲が良くなった証としてフレカがあるからだ。一緒に旅をしたいというのは難しいかもしれないが依頼を任せるにあたって信用出来るかということでもある。
「むぅ!僕だって考えてるよ!あの子は他の種族に偏見を持っていなくて穏やかな感じだったんだから!もっと知って仲良くなったら連れてきてもいいかなぁって思うくらい!」
「おいおい…ここに連れて来るってマジかよ…中枢だぞここは…まぁ、外国の人の意見も必要ってのは分かるがな。」
「そこはオージュさんに見極めてもらいましょう。それでは私はそろそろこの辺りで…はぁ…書類に忙殺されます…」
「私の所もまだやる事があるので戻りますね。この辺りでお開きとしましょう。」
そう締め括り皆は各国に戻っていった。
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