第四話 『スプリーム4』
奴隷制度という言葉を聞いたことがあるだろうか?
この発祥をたどるには、記録が残らないほど古にさかのぼらなければならない。
だが、いつまで行なわれていたかというと、何も想像できないほどに古いものではない。
奴隷とは差別の行き過ぎと安い労働力を欲することによって起こるものである。
ある程度、食事をとらしてもらっている奴隷と、馬車馬のようにあごで使われるメイドでは、どちらがいいだろうか?
あるいは、女性蔑視においても昭和の文献を触れば、『奴隷のように旦那の言うことを聞くしかなかった』というような冷たい怒りの文言も山のように出てくるだろう。
奴隷の定義づけは実は主観に基づく曖昧模糊としたものなのである。
本当にごくごく最近までその名残りは残っていた。いや、今でも残っているというべきだろうか。黒人差別などはその名残りといってもいいのかもしれない。
政府は、この制度を利用したのである。
*
政府は、少子高齢化に際して働き手が減ってしまうという問題に直面しつつあった。
少し前の政府は定年を伸ばすという方針で問題を先送りにしていたみたいだが遂にそれも限界を迎えつつあった。
だが、いきなり人は増えたりしない。
(未婚の場合もあるが)結婚して然るべき手順を踏んで性行為に及ばなければならない。
子供でも知っている事実だ。
そのため、子どもを増やすような強制的な仕組みを作るという案がでたこともある。
実際、一時期にはこの話を進める方針にもなりかけた、が、諸外国から人権無視だと非難され、結局、この計画は頓挫してしまった。
いきなり人は増えないという当たり前の事実は大いに政府の頭を悩ませた。
だが、一人の天才 天上才気の何気ない一言が事態を一変させた。
「別に有象無象のバカが集まっても意味ねーだろ?数だけ増やすなんてナンセンスなんだよ。俺様みたいな天才が数人居ればいいだろ?」
その意見には反発も多くあった。
『皆が頑張ることが最大の効果を生み出す』などという声も多く聞かれた。
だが結局、採用された。
より少人数でより多くの成果を出すという点においてこの意見が正しいのだと皆が認めてしまったからだ。
一極集中のトップダウン型の指令系統こそが正義という結論に皆納得したのである。
一人の天才が全ての指示をする方が、烏合の衆があれこれ考えて行動するよりも効率的な成果を出せることを他でもない天上才気がその手腕によって証明してしまったのである。
外交においては日米同盟における資金援助の減額を成功させてしまったし、ビッグデータをより全ての会社で活用できるプログラムも全て彼がやってしまった。
果ては、近隣の国へと技術を流出した人に対する厳罰化と監視機能を作り出して技術流出すら防止してしまった。
あまりにも天上才気は天才の指示の絶対性を示してしまった。
そうして出来たのが天空島の奴隷制度であり、天空島のすべてのシステムを操るAI“ジーニ”である。
もちろん、諸外国への建前上、奴隷制ではなく、“落第生に対する救済とそれに関する法律”という立派な名前がある。
だが、そんな長ったらしい名前で呼ぶ人は一部の酔狂を除いてほとんどいない。
AI『ジーニ』は感情によらず、シビアに“対人交渉術、学力、知力、体力、ゲームの戦績etc”生徒の能力をあらゆる面で総合的に判断する。
そして、この『ジーニ』に劣等生とされたものは落第となり、
他にも生徒同士の勝負において奴隷にしたい奴を生徒同士で奴隷にすることも推奨されている。
天才が、凡才を奴隷にするのは当然と言わんばかりの処置だ。
奴隷制度において、明らかに人よりも損をしてしまった人がいる。
美少女だ。
世間では、美少女がもてはやされているが、この天空島では美少女こそが狙われる。
少女からは、妬みで、少年からは劣情で。
彼女らは奴隷勝負を挑まれてしまう。
奴隷勝負を挑む条件は割ときつい長期間の努力が必要となるのだが、それでも思春期の少年・少女の美女への欲望・嫉妬はそんな条件を容易く満たす。
また、天上才気が考えた男女交際の非推奨が余計に(特に男性生徒には)美少女を奴隷とすることを至上命題とさせた。
普通なら教師やジーニに見咎められる行為も、奴隷となればある程度は黙認されるからだ。
必然、奴隷になっていない美少女は、そうした死闘を潜り抜けてきたエリートとなる。
故に数少ない生き残りの美少女は、学校でトップクラスの成績となり、“スプリーム4”と呼ばれ、尊敬と畏敬の念を抱かれる。
彼女らは、100戦以上の奴隷勝負をくぐり抜けてきて未だ無敗。
俺はその彼女たちを奴隷にしなければならない。
それが世界を支配する
それは、ただの前座に過ぎない。
本命はあくまで、口だけでうざったい政治家や先生連中だ。
『天才は無茶を言ってくれるぜ』
俺は、そう言いながら額に人差し指・中指・薬指の三本の指をあて、自分へのペテン《、、、、、、》を働かせ、サイと共に話した計画を煮つめていくのだった。
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