第19話 まどかとさとる(7)

「うわぁ、すごーい!」


 秋風に揺れる黄色い葉を見上げながら、まどかが歓声をあげた。

 見事な秋晴れの今日、下校中の二人は少し遠回りをして、紅葉を見に来たのだ。


「すごいすごい!空一面黄色だね!」


 まどかはおおはしゃぎでいちょう並木に囲まれた歩道をスキップする。


「本当だねぇ」


 さとるはそんな恋人をほほえましく見守りながら、後ろをのんびり歩く。



「さとる!」



 不意にまどかが振り返り、さとるに駆け寄ってその腕にとびついた。


「まどか?どうしたの?」


「さとる、ほんとにありがとう。わたし、こんなに綺麗な景色初めて見たよ」


 すぐ側からさとるを見上げ、満面の笑みで言う。こんな笑顔が見られるのなら、リサーチした甲斐がある。


「どういたしまして。楽しんでもらえてよかったよ」


 さとるも笑みを返した。



「ねぇさとる、来年も、再来年もずっと、二人でこの景色を見に来ようね」



 そう言ってまどかが無邪気に笑う。



 さとるは一瞬虚を突かれたが、すぐに頷いた。


「うん。約束しよう」


 二人は手をつなぎ、並木道をどこまでも歩いて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る