第4話 混乱
放課後だ!見た目は美亜ちゃん、中身は三年生のあたしは美亜ちゃんは生徒会長になってるはずだから生徒会室に向かう。生徒会室は三階だ。
そこで里区に捕まった。
「おいお前、帰宅部だろ?なんで下じゃなくて上向かってんだよ」
どうしよ。言い訳しよう!
「生徒会に呼ばれた!」
「そうか…お前は誰だ?まるで美亜があの一年に乗り移ったみたいだな」
惜しいねぇ、美亜ちゃんが乗り移ったのは一年じゃなくて生徒会のあたしなんだよー。でもこの人は結構鋭いなぁ。要注意人物かもしれないね!
「まあいいか、あの一年に興味がある。何部か知らねぇが探し出してやる」
ふぅ、危ない。逃れた逃れた。さてさて、三階へ行こう!と思ったら結ちゃんだ!
「華南さん、じゃなくて美亜さんですか。わたくしの方は美鈴さんと会ったので戻りましたよ」
「なるほど、やっぱり会ったら戻れるんだね!」
あれ?でもお互い入れ替わってることを知っているから既に会っていると思ってたんだけど…まあ何かあったんだろうね。知るきっかけが。戻ってよかったよかった。今度はあたしの番だね。
「では、生徒会室に行きましょうか」
「そうだね、結ちゃんも戻ったしね!」
ようやく生徒会室前、会えるね。あたしになった美亜ちゃんに。これでやっと戻れる!あたしは扉を開けた。副会長、書記、会計、といる中生徒会長がいない。
「な、お、お前は。雄島美亜」
「あたしは?生徒会長は?」
「生徒会長に何の用だ?用事があるからと言ってどこかに行ったが」
まさか帰ってないよね?ということは二年の教室に向かったのかな?すれ違ったのかな?
「結ちゃんは議長だから頼んだよ、あとはあたしの手で解決するよ」
「わかりましたよ、わたくしがまとめておきますよ」
あたしは美亜ちゃんの教室へ向かわないと。
「あの美亜って、間違いなく生徒会長だよな」
「そうですよね、決定的言動を見つけましたし」
友達って言うのもいいかもな。雫のような存在を友達って言うんだな。中身を知ったら逃げられるだろうが。
「美鈴ちゃん…美術室こっちだよ」
そうだった。私は今空北美鈴、一年の美術部員だ。なぜか下に降りる階段がないと思っていたら一階だったからか。自分が美術部員なことは分かっているはずだ。だから私、美亜になった美鈴は美術室に来る。私は相談を持ち掛け美鈴と同じ絵を描きその作品を美鈴に携帯で撮らす。そうすれば元に戻れるかもしれない。
雫と共に美術部に入る。作りかけの絵。美鈴の作りかけの絵はすぐにわかった。でも一から十まで美鈴になった私が描いた作品を撮らせないとならないだろう。
「新しい紙は?」
「え…作りかけの作品は?」
「今の私が全て描かなければ意味がない」
そして雫から紙をもらい絵を描く。作りかけの作品を参考に。美鈴の感覚が絵の描き方を教えてくれる。面白い。傍から見ると地味な作業だと思っていたがこんなに面白いことだったのか。私も絵を描く趣味を作っていいかもしれない。こんなに綺麗に絵を描けるようになってみたい。そんなことを思った。
すると誰かがやってきた。私か?なに、ここで生徒会長?
「見つけましたよ、生徒会長」
三年生のホームルームが終わりました。私は生徒会長なので生徒会室に行かないといけないのでしょうね。
まさかですがメッセージ来てませんよね?ふぅ、来てないのでほっとしました。いったい何者なのでしょう。この生徒会長、裏がありそうです。
生徒会室には副会長や書記や会計やその他の方々の姿が、もしかして遅刻しました?
「私、遅刻しましたか?」
「あれ、生徒会長キャラ変えたんですか?」
「遅刻はしてませんけどどうしたんですか?」
「次は一年の空北美鈴らしいぞ」
「あぁ、なるほど…」
なんなんでしょう、この三年生たちは生徒会長の何を知っているのでしょう。それよりも、私がいるとしたら美術室。美術室に私になった生徒会長がいるはずです。
「あの…」
「どうしたんですか、生徒会長」
「少し席を外していいですか?用事があって」
「いいですよ、気を付けてくださいね」
「大丈夫だよ、生徒会長には空北美鈴がいるんだから」
「そっか、もう生徒会長は無敵だね」
三年生の謎の会話も気になりますがそれも生徒会長本人に聞いたほうが手っ取り早いですね。
ふと、私は気づきました。私はこんなに意見できる人間だったでしょうか?自分の正体を暴露し、席を外すと言えるほど話せる人間だったでしょうか?それは私が生徒会長でありおまけに変な生徒会長であるからできただけなのかもしれません。普段の私なら席を外したくても我慢するでしょう。言いたいことがあっても言えたとしても雫にくらいでしょう。
姿は違えど私は一年の空北美鈴と告白した上に相手は三年。普段の私が上級生に意見することなどできるはずもありません。何が私を突き動かしたのでしょう。それこそ身分というものでしょうか。
美術室の扉を開けました。ようやく、ようやく見たかった私の顔と雫の顔を見ることができました。
「見つけましたよ。生徒会長」
「生徒会長は貴方でしょう」
あれ?すごく態度の悪い私がいます。おかしいですね。
「ど…どうしたの、美鈴ちゃん」
「雫、ちょっと生徒会長と話があるから」
それだけ言われると私は美術室のベランダに連れていかれ私の姿をした生徒会長のはずのその人と二人きりになりました。
「なんで今日ぬいぐるみ持ってない?」
話し方が怖いんですが、生徒会長ってこんな怖い人でしたっけ。
「生徒会長ですよね?持ってきた方が良かったのですか?」
「ん?貴方は、お前は誰だ?」
「私は空北美鈴です」
「なに?なら私になってるのは誰だ?」
「貴方は誰ですか?」
「ここでは隠さなくていいんだな、雄島美亜だ」
え、雄島ってあの…やっぱりこの問題は美亜さんも関係ありました。
「ということは、私は生徒会長に、美亜さんは私に。そうなると生徒会長は美亜さん、ですよね?」
「そうなるな、私はお前と私が入れ替わってただけだと思ってたんだけどな」
「あ…あの」
「なんだ?」
権力、立場、そんなものは関係なかったですね。結局は自分が動かないとダメなんです。成功しようとしまいと。あの美亜さんに尋ねる。人生は強気で行けってことですね。
「雫さんに酷いことしてませんか?」
「してないな。最初は怖がってたけどな。でもいいな、普通って言うのも。私も友達って言うのか?欲しいものだな」
案外聞いてみるのも悪くないじゃないですか。
「私は強いことがうらやましいですよ、権力にしても、武力にしてもです」
「私は普通がうらやましいな、どんなことでもできるんだからな。でも私には似合わない。元に戻りたいな」
確かに普通は地味で何の特徴もない。でもどこか一つを伸ばすこともできればその伸びは無限大。どこを伸ばすかも決められる。無限の可能性を秘めている。そんな可能性の塊の私は権力が欲しいと思ってしまった。権力者には味方もいる分敵もいるでしょう。普通の人間は自由。選ぶことができる。私は地味で何の特徴もない普通に戻りたいと思いました。
「聞かせてくれよ、生徒会長はどんな感じだったんだ?」
「生徒会長は思ったより人望がないですね」
「その生徒会長変な生徒会長で有名だからな」
「変、どころではありませんでしたよ。狂ってましたよ。だって…この生徒会長…」
あたしは二年の教室に行ったけどあたしという美亜ちゃんはいない。
「他に行く場所と言えば…」
帰ってないよね?そうだ!携帯の待ち受け画面!美術室。もしかしたらいるかもしれない。
美術室前の絵画が飾ってあるところにはいなかったかー、でも中にはいたりして?
「失礼しまーす」
「なっ、お、お前は。美亜だ」
「生徒会長知らない?」
そうしたらか弱そうな確かあの絵を描いた美鈴ちゃんと友達の…そうだ雫ちゃんが話しかけてきた。
「あ…あの…ベランダに…?」
と、飛び降り!よし止めに行こう。混乱しちゃったんだね!
ようやく見つけた。あれはあたしと美鈴ちゃん?
「だって…この生徒会長…」
「美亜ちゃんー!」
「うわ…私の外見でそれ言われると気持ち悪いな」
態度の悪そうな美鈴ちゃんだ。こんなキャラだっけ?
「美亜さん、ということは生徒会長ですね?」
あたしがあたしに敬語を使っている。
「外見変わらないね、美亜ちゃん」
と、あたしはあたしに話しかけた。
「あの…私は美鈴です」
あれ?
「私が美亜だ…」
あれれ?
「つまり、あたしが美亜ちゃんになって、美亜ちゃんが美鈴ちゃんになって、美鈴ちゃんがあたし?」
「そういうことですね」
「でも美鈴ちゃん結ちゃんとも入れ替わってたでしょ?」
「はい?入れ替われるわけないじゃないですか」
あれ?おかしいな、何かが合わないな。何が阻害してるんだろう。ということは美鈴ちゃんが嘘を吐いている?それとも美鈴ちゃんは結ちゃんと入れ替わった後にあたしになった?結ちゃんが嘘を吐くはずないし。
「とりあえず、三人そろっても何も変わらないのか。戻りたいな」
「ま、まさかこのまま一生この体で!魚は克服できるね」
「おい私、じゃなくて生徒会長。昨日の飯、魚だったのか」
「魚だったよ、でも意外においしいね」
「くそっ」
「あの…どうでもよくないですか?」
「まあそうだな、とりあえず美鈴の口調はなんとなくわかったぞ、です」
「私はもう、ばらしましたからね、生徒会長。次は空北美鈴か、って言われたんですがどういう意味なんですか?」
「え、前は誰だったの?」
「え?生徒会長も知らないんですか?」
「知らないよ、どういう意味?」
「私が知りたいですよ」
「わからないことだらけだなぁ」
「そういえば美亜ちゃん、今日は車で来たけど帰り方がわからないよ」
あたしは美亜ちゃんに帰り方を教えてもらった。思った以上に遠い。でもこの格好の限り仕方ないんだ。
「後は玄関に入ったら顔をあげろって言って報告はメモしておいてくれ」
うわぁ、でもバレないために仕方ないよね。いやだなぁ、あたしの家に帰りたいなぁ。
「それにしても美鈴ちゃんの描いた絵を待ち受けにしてるんだね」
「え、私の描いた絵ですか?」
「見たのか、あれは何か引き込まれてな。私の目指すべき存在だ。お前はなんであの人物を描いたんだ?」
「私の憧れだった人ですかね」
確かに最高の人物像だ。あたしもなってみたいくらいだよ。
「もう部活も終わる。また明日話し合おう」
「そうですね、何か手があるはずです」
「じゃあ、美術室に集合だね」
そしてあたしは美亜ちゃんと美鈴ちゃんと別れた。
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