第40話 オーウェンに会う二人

(オーウェンside)


 オーウェンは、疲れ切っていた。

 借金をして新しくはじめた店で、オーウェンは今まで以上、必死になって働いている。

 いや、働いていると言うよりも、働かされているという言葉がぴったりくる。

 自分の意思ではなく、ミカエルに動かされている操り人形のような状態だ。


 オーウェンの働きぶりもあり、美容ポーションは驚くほどの高値で売れ続けている。

 しかし。

 オーウェンの暮らしは一向に楽にならない。

 店の利益のほとんどは、ミカエルへの借金返済に消えていく。

 働いても働いても、貧民街から抜けられる希望は見えてこなかった。


 これなら露天商をしていた方がマシだった。

 アナ姉にも迷惑かけてしまったし。

 世間知らずの僕がバカだったんだ。


 ミカエルの甘い言葉に乗ってしまった自分が情けない。

 結局、ミカエルは僕とアナ姉を利用して、金儲けしたいだけなんだ。


 そんなことを考えながら明日の開店に向けて準備をしていた時、店のドアをノックしてくる人がいた。


 誰だろう。

 店も終わったこんな遅い時間に。


「もう、閉店していますが」


「うん、わかっているよ。ちょっときみと話がしたいんだ。中に入ってもいいかな」

 そう言ってきたのは、昼間ミカエルに追い返された町人風の若い男だった。

 その横には、年配の女性もいる。


 年配の女性が口を開いた。


「この美容ポーションは普通のものではないわね。誰かが魔法で手を加えたものでしょう? いったいどういうことなのか、聞かせてくれない?」


 確かにこの美容ポーションは粗悪品をアナ姉が魔法でよみがえらせたもの。

 普通の美容ポーションではない。

 でも、どうしてこの女性はそんなことがわかるのだろう。そんなことを言ってきた人なんて、今まで誰もいなかったのに。


「坊やはまだわからないだろうが、美容ポーションはね、美しくなりたいという女性の心につけ込んだとても危険な商品なんだ」

 若い男性が優しそうな目で話しかけてきた。

「その高額な値段から、人生を狂わす女性まで出てきている。だから、こんな値段の高いものが出回るなんて、とても怖いことなんだよ」


 年配の女性が続ける。

「こんな質の高い美容ポーションを誰が作ったのか、まずはそれを知りたいと思っているの。悪いようにはしないから、私たちに教えてくれない?」


 オーウェンはそう話しかけてくる二人をじっと見た。

 悪い人には見えない。

 長年商売をしてきた勘が働いた。


「アナ姉に、迷惑がかからない?」

 オーウェンの口から、思わずそんな言葉が出てきた。


「アナ姉? 誰だいその人は?」

 年配の女の目が光ったような気がした。

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