第28話 誰がアナスタシアと踊るの

「すごかったわ、アナスタシア!」

 ミミがこれでもかといった笑顔で私をほめてくれる。


「私の力じゃないわ。みんなのおかげなの」


「ううん、違う。アナスタシアだから出せた光よ」


「私は何もしていないのよ。みんなに助けてもらっただけよ」


 そんなことを話している間にも、競技は進められていた。引き続き男性部門のマジックライトが催されている。


 一応99点の私は女性部門の優勝者ということになっている。

 ということは、男性部門の優勝者と私はダンスを踊ることになるんだ。

 いったい誰と踊るんだろう。


 昨年は大差でクリスが優勝したらしい。


 今年もそうなのかな。

 でも今年は、歴代優勝者のダンが出場している。


 次々と男子学生たちが自分の体を魔力で光らせていく。

 女性と違って、硬く直線的な光の粒子が飛び跳ねている。


「アナスタシア、優勝おめでとう」

 そう話しかけてきたのは、ダンだった。


「ありがとうございます」


「君が優勝したんで、約束どおり僕も大会に出場して、優勝を狙うからね」


 そう話すダンにミミが言葉をはさんだ。

「ダンさんは三年前の優勝者ですものね」


「その通りさ」

 ダンは楽しそうに答える。

「三年前は確か、クリス君に勝って優勝したのかな。久しぶりの参加だけど、今回ももちろん優勝するつもりだよ」

 やや離れたところに立っているクリスに向かって、ダンが聞こえるようにそう話している。


「……」

 クリスはダンの言葉を黙って聞いている。


「優勝して、アナスタシアとみんなの前で踊るのが今の僕の夢さ」


「アナスタシアと踊るのがダンさんの夢?」

 ミミがうれしそうな顔で私を見る。


「僕はね、完全にアナスタシアに心を持っていかれているんだよ。みんなを救ったヒールやマジックライトの素晴らしい輝き、アナスタシアのすべてに僕の心は奪われてしまっているんだよ」


「そんな、そんなにはっきりと言うなんて……。つまりダンさんはアナスタシアのことを……」

 ミミは自分のことのように顔を赤らめる。


「だからね」

 ダンは距離のあるクリスにも聞こえるように言った。

「僕は今回もクリス君には負けないよ。今回もクリス君に勝って、僕はこの会場でアナスタシアと同じ光を共有させてもらうから」


 今までダンの言葉をじっと聞いていたクリスが口を開いた。

「俺も、ダンさんに負けるつもりはありませんから。俺は魔法高等学校時代からアナスタシアをずっと見続けています。アナスタシアのことを一番よく知っている俺が、ダンスの相手には一番ふさわしいと思っていますので」


 クリスの言葉にダンも言い返す。

「クリス君にはお似合いのパートナーが別にいるんじゃないのかな。まあ、僕の光を見れば、クリス君も僕の覚悟がどれだけのものか分かってもらえると思うけど」



 クリスとダン、険悪な雰囲気になってしまっている。

 マジックライトは、たかが遊びだと言ってたじゃない。

 誰かと踊ることがそれほど重要なことなの?

 二人は何をそんなにいがみ合っているのだろう。

 疲れ切っている私は、ぼんやりとそんなことを考えていた。

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