第12話 友達ができる

 4Aクラスの教室に入った。

 入った瞬間、緊張が増す。

 だって、教室にいるみんなの視線が私に向けられたんだから。

 クリスが振り向いて私を見てくれた。目が合うと小さくうなずいてくれた。

 なんだかホッとする。


「アナスタシアの席はここだよ」

 クリスに促されるまま、その席に座った。


 隣にはもちろん会ったことのない生徒が座っている。私は窓際の席だったので、隣は一つしかない。その席に、赤い髪をした女生徒が座っていた。


 緊張する。

 エリート中のエリートが集まるクラスだもん。

 きっとみんな冗談など言わずに、魔法の勉強ばかりしているんだろうな。

 そう思っている時、隣の赤髪の生徒が話しかけてきた。


「こんにちは、私の名前はミミ。簡単な名前でしょ」


 わっ、むこうから話しかけてくれた。うれしい。


「私はアナスタシアです」


「知ってるわよ、あなたの名前は。有名人だもの」


「これから、よろしくお願いします」


「そんな丁寧な言葉づかいじゃなくていいよ。タメ口でいいから」


 ミミは人なつっこいクリクリっとした目をしている。

 なんだか、明るくて楽しそうな人。


「じゃあ、そうさせてもらうね、ミミ」

 私は勇気を出してタメ口で話す。


 ミミの目がうれしそうに見開いた。

「ところで、特待生歓迎パーティーのことは知っている?」


「うん、少し聞いている。なんだか魔力を競い合う大会が開かれるとか」


「そう。マジックライトよ」


「マジックライト?」


「魔力で自分の体を輝かせて、誰が一番美しいかを競うの」


 魔力で体を輝かせる?

 そういえば、マルシアも光を放つとか言っていたな。


「みんな、聖女候補の特待生がどんな輝きを見せてくれるのか、とても楽しみにしているわよ」

 ミミはうれしそうに話を続けた。

「それと、優勝者は最後にダンスをすることになっているのよ」


「ダンス?」


「そう。男性部門と女性部門の優勝者が、それぞれ体を輝かせて、二人で踊るの。それはもうスリリングで美しいんだから」


「ふーん」


「ちなみに昨年の優勝者は、男性がクリス、女性がマルシアよ。最後のダンス、美しかったわ。あの二人、間違いなくできているわね」


 えっと思った。

 昨年、クリスとマルシアがダンスを踊っている?

 二人はできている?

 何かの間違いじゃないの?

 頭の中が混乱し、自分が自分ではなくなってきた。


 昨日のクリスの言葉はなんだったの……。


「どうしたの? 浮かない顔をして」

 ミミが心配そうに言う。


 気になったら止められないのが私の性格。

「クリスとマルシアは付き合っているの?」


 聞いてしまった。


「さあ、詳しいことはしらないけど、あの二人の仲は普通ではないから」


 そんなに仲がいいんだ……。


 そう思っている時、ミミが何かに気付いたかのように言った。

「ごめん、アナスタシアはクリスと友達だったんだよね。でも、ただの友達だと聞いていたから……。なんか、気を悪くさせること言っちゃったのかな」


 ただの友達……。

 クリスが皆にそう説明しているのだろうか。

 それならそれでいい。

 でも、だったら昨日のクリスの告白はなんだったの?

 これじゃあ、私を捨てたミカエルと同じじゃない。

 また男に騙されるところだったわ。


 私の心は高波のように揺れてしまっていた。

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