118.ここで告白すると祝福されるの?
「いつか嫁に行くと覚悟していたが、この地に残ってくれるなら最高だ。でも孫はすぐ抱かせてくれなくていい」
なんとも言えない反応を見せるお父様に、苦笑い。それって嫁に行くなら変な男よりラエルがいいけど、私に子どもを産まなくていい理由は、アレよね? まあ、聖樹様との間にどんな子が生まれるのかは、私も知らないけど。
「おめでとう、幸せになれ」
感涙してぐちゃぐちゃの顔で、お父様がそう付け足した。ちょっとやめてよ、私まで涙が移るじゃない。くしゃっと笑顔が崩れて、泣き出しちゃったわ。
ごしごし顔を拭うわけにいかない私を、ラエルが優しく抱き寄せる。服の胸元に涙と、違う物が染み込んでしまった。鼻水はちょっとだけなんだからね。ほとんどは涙よ! バシバシと荒い手つきで背を叩いたアマンダが、ハンカチをくれた。鼻を咬んで涙も拭う。あとで新品を返すわ。
「この結婚式は聖樹様のお祝いだ。ここで告白すると幸せになれるぞ!」
誰かが適当な言葉を叫ぶ。根拠なんてないのに、それでも盛り上がった。
『聖獣の祝福がつくかもね』
「「好きです」」
ラエルの言葉を聞くなり、近くの男性二人が一斉に跪いた。目の前には可愛らしい女性が一人……取り合いなの? 女性はどちらも選ばず、別の男性とくっついた。どんまい!
その後もあちこちで告白合戦が始まる。早い者勝ちと言わんばかりの興奮具合は、アマンダが持ち込んだお酒の所為みたい。普通のワインじゃなくて、蒸留酒だったの。一気に酔っ払いが大量発生した敷地内は、大騒ぎとなった。
さすがにこの騒動を無視できず、ユリシーズ叔父様が神父と現れる。もちろん、お母様もご一緒だけど……やだ、ノエルの上に乗せてもらってきたの?
「公主様のご登場だ!」
「さすが公主様、聖獣様に乗って来られるなんて、想像以上だ」
何を想像したのよ。ツッコみたくなるけど我慢した。ユリシーズ叔父様は事情を把握しているから、いち早く酒に手を伸ばす。ここで素面は辛いわよね。酔った方が賢い。お酒に弱いのか、すぐに赤くなって女性達に運ばれていった。服を剥かれて襲われないよう気をつけるのよ。
「おめでとう、私の可愛いグレイス。聖樹様とお幸せにね」
やだ、せっかく止まった涙がまた……。
「まあ、明日からもこの敷地だから毎日顔を合わせるけれど」
ふふっと笑うお母様の言葉に、ぴたりと涙が止まる。もう! 事実だけど、言わないで。文句を言う私の横で、今度は意外な人物の告白が始まった。
「俺と結婚して欲しい。まずは婚約試合からお願いします」
「メイナード兄様!?」
アマンダの前で膝を突き、なぜか試合を申し込んでいる。いえ、結婚を申し込んだの? よく分からないわ。
「試合は受けて立とう。結婚は結果次第だ」
アマンダがにやりと笑う。この表情からして、さっき口にしてた人はメイナード兄様なの? いつの間にそんな仲に!?
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