第28話 Sideカルステン
「……ああ、あそこですよ殿下。ほらターゲット目指して一直線ですよって言うか貴方に向かって彼女まっしぐら……ってはは、何処かのペットフードのCMみたいですね」
ずどどどどどどどどどどどど……。
確かに少し離れた前方より目視出来る辺りからその様な効果音が聞こえないでもない。
しかしはっきり言ってこの状況はホラーでしかない。
だが俺はホラーものが怖いと思った事は一度たりともないのだ。
何だったら某TV画面より這い出てくるだろう長髪の女がいるとしよう。
精神系の拷問をする際に地下牢へTV画面を設置すればだ。
取り調べと称し深夜から朝までコースで出演して貰おうか。
ああそう言えば既に存在しているか。
「あ、殿下経った今対象者はこちらをロックオンしましたよ」
「一々説明せずとも見えている」
そうですか……と特段悪びれもせずにだ。
どうでもいいと言わんばかりに頭をぽりぽりと掻いている。
因みにこいつ……ロメオは今でこそ私、いや俺の最側近であり暗部の統括をしてくれてはいるのだが、何を隠そうある国が仕込んできた刺客だったりする。
勿論その時のロメオの対象者は俺だ。
あの頃は死ぬ気で戦いほんの僅かばかり運が俺へ味方をしてくれたから今こうして俺は生きてもいるし、また俺をここまで翻弄させたロメオの腕が勿体ないと思ったと同時にこの飄々とした性格が何となく気に入り俺の部下になって貰った。
まあ当然のことながらそのある国のこいつを雇った王家は実質上俺が解体してやったよ。
勿論裏で……ね。
第二王子であり兄のスペアに過ぎない俺がどうして命を狙われるかと問われればだ。
簡単に言えば俺が兄の王太子よりも腹黒で現王である父上を裏で操っているからだろうな。
操っていると言う言い方は少々語弊がある。
「いやそうでもないですよ。実質陛下がのほほんと暮らしておられるのは全て裏で厄介事を殿下が引き受け始末をしているからでしょ。そのお陰で国内だけでなく周辺国家元首や主だった貴族達は枕を高くして眠る事も出来ないってね」
本当に口の減らない奴。
「お前減俸一ヶ月な」
「ひ、酷い〰〰〰〰⁉ こんなに必死に毎日あくせく働いているって言うのに減俸なんて!!」
泣き真似をしても無駄だ。
俺に泣き落としは通じない。
「――――ではあれを何とかしろ。ヤスミーンの為にな」
「ヤスミーン姫のねぇ。でも目の前のよりも会場にいる屑はどうするお心算で?」
何なら二人纏めてあの世へ……と何でもない様に話すロメオへ俺は忠告をする。
「あの屑はヤスミーンが料理をするさ。今日の日の為に彼女は色々と証拠を集めていたのだからな。やり返したい思いをずっと我慢してきたのだ。さあこれからって時にトンビに油揚げを奪われたのではヤスミーンは烈火の如くに怒り狂うだろう。そうなればお前のお前足るものは多分瞬殺でチョン切りにされてしまうぞ」
「トンビに油揚げ……抑々油揚げとは何ですか殿下……って言うかその大事な息子をちょん切られたくはないんで屑の方へは一切手出ししませんよ」
わかればいい。
誰しもと言うか俺自身もごめんだからな。
「ではあの女は好きに料理をしても……?」
「いや、多少はいいが出来れば名前を与えたいと思う。罪状も屑と比べれば思いの外軽い。また何故かヤスミーンがあの女へ興味を持ったのだ。だから殺しはしない。でも適度に大人しくはさせておけ。その方が交渉に持ち込めやすいだろう」
俺も詳しくは何も聞いてはいない。
何故なら帰国したばかりだからな。
「了解です」
「ああ頼む」
そうして俺はその場を後にしようと思ったのだ。
今日ばかりは欠席する訳にもいかないからなと思い部屋を後にしようと思った時だった。
「待ってええええええええええ!! 私の愛しのカルステ――――ン!!」
必死の形相のまま女は俺へと突進したままの勢いを殺さず地面をたんと蹴ったかと思えば高く飛び、そのまま俺へと向かって……きた?
そしてこいつは一体何者なんだ?
俺は女に言い様のない不安を始めて覚えてしまった。
そんな俺を見たロメオとへの1番が何故か腹を抱えて笑っていた。
解せん――――。
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