第26話 sideエリーゼ
「いいねここで大人しくしているのだよ。僕以外の者には絶対について行ってはいけないからね」
これで何度目だろう。
「ええわかったわ」
最低でも八回くらいは繰り返しているわよね。
全く私はそんなにお馬鹿じゃないって言うの。
それよりもヤスミーンの許へさっさと行きなさいよね。
彼女は貴方の婚約者なのでしょ。
支度を終えた私とエグモンは無事に王宮内へと侵入する事が出来た。
変ね、普通王宮には確か幾重にも重防御結界が展開されているって本に書いてあったのによ。
まあそこは普通に王族……国のトップ達が住んでいるのだから警備何てものはめちゃくちゃ厳しい事くらい十分理解していたわ。
だからエグモンの用意した魔石が王宮への使用許可の印章があるものでなければ当然私達はここには入る事は叶わない。
万が一入場許可の印章なしの魔石をしようすればよ。
使用したその反動で何処か訳の分からない地点へと飛ばされる可能性は十分にあった。
まあその際は私自身で仕入れた魔石……そうこれにはちゃんと王宮への侵入可能なもの。
何故なら悪いとは思いつつ念の為にヤスミーンの所より一つ失敬したのですもん。
幾つかあった内の一つ。
普通の闇市で売られている転移の魔石はただ黒いだけのもの。
どうしてそれを知っているかと言えば前世でカルステンが使用したのを偶然目撃し、その後牢屋で隣同士になった人物から色々と情報を仕入れたと言うかよ。
偶然お隣同士の牢屋となった私達の逝く先はどうせ数日を経て処刑される事は決まっていた。
そこで死に逝く者同士って言う具合に喚き、声の続く限り泣き叫び助けを何度乞うたとしてもよ。
全てそれまで自分の行った行動が悪かったって……まあそこは大いに反省点もあったわね。
お花畑で突進した末の大やらかしだからねぇ。
悔しくて悲しくて思い通りにならない事への憤りから真実の恋に堕ちればだ。
その恋をした相手からは蔑まされに見下され、情けないやらまた想いを伝える事も出来ない悲しさに涙が枯れるまで泣き叫んでもだ。
死を前にすればなーんか悟りみたいにって生憎そこまでの境地へは至ってはいない。
ただもう何をしても助からないと理解した後は自然と心が凪いでいたっけ。
それは何をやらかしたのかもわからないお隣さん自身もそうだったみたいでね。
何を話してもあと数日。
そうなれば牢番も多少の事は目を瞑るって言うか最初っから私達には無関心。
気付けば私達はお互いの取り留めのない会話を最後の
この転移の魔石もそう。
あの時はいらない知識だと思っていたのだけれど……。
時間潰しの様な感じで話してくれたのよね。
でもまさかあの時の会話が役に立つ日が来るって思いもしなかったわ。
それにしてもエグモンは何処でこれを仕入れたのかしら。
私は自身のポケットに入れておいた魔石をじーっと見つめる。
勿論答え何てものは出てこないわよ。
今の時刻は丁度日暮れ。
エグモンは朝早くから王宮入りをし舞踏会の支度をしているだろうヤスミーンをエスコートする為に彼女の許へと走って行った。
私はと言えば舞踏会場よりも少し離れた人気のない一室へと押し込められた感じよね。
婚約者としてヤスミーンのエスコートとファーストダンスを踊れば少しばかり社交をして、場が和んだあたりで私はエグモンのエスコートで会場内へ紛れ込む――――と言うのが彼の筋書き。
でも私は別に舞踏会そのものに興味はないの。
私の目的はあくまでも一つ!!
第二王子カルステンの心を奪うのが目的だもん。
今日までに私は純潔を護り通したし身体のケアも怠らなかったわ。
それもこれも全てはカルステンの為。
彼の恋人になる為だけにここまで来たのだもの。
だから今私はここで大人しく何てしない。
きぃぃぃぃ
私は静かに扉を開ければ頭一つ出して周囲を確認する。
うん大丈夫誰もいない。
では予定通りカルステンを探しに王宮内を探検しなきゃ。
恋は待っているだけでは落ちてはこない。
命を懸けて生涯に一度の恋をするのであれば当然行動力も要求されるのよ。
直ぐに行くから待っていて私のカルステン。
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