第25話 sideユリアーナ
「ねぇどぉエグモン、私綺麗で可愛い?」
漸く身支度が整ったのでしょうね。
彼の令嬢は支度をしていた部屋より出て来てはクソ……コホン、エグモンド様だけでなく何故か私とカミルの前でも可愛らしくドレスを摘まめばです。
くるりとターンをしてみせます。
淑女としては些かはしたないとは思いますけれどもです。
容姿は思ったよりも整っており、胸がメロンなのが何とも……男女を問わずきっと令嬢を見れば一番にそちらへ視線が囚われてしまうでしょう。
ですがこの手の令嬢はそこを敢えて強調させ、同性からは忌み嫌われるのですが異性の好むチラリズムと言うものでしょうか。
一般的に言えば憎らしい程に大きな胸を強調させる筈なのですがどうやらこの令嬢は少し違うのです。
確かにメロンへ視線を奪われはしますわよ。
でもそこは敢えて強調させず、とは言え緻密なレースで厭らしくなくまた今宵の様な格式の高い夜会に相応しい程度に覆えばです。
同性にも嫌われない程度のチラリズムにドレス全体はロイヤルブルーと言った上品で落ち着いた色合いとデザインのものなのです。
ええ身に着けている宝飾品も問題はありませんわ。
身分を問われなければ王宮へ出向いても何ら問題もなければ参加される御婦人やご令嬢達とも遜色はないでしょう。
何よりお馬鹿キャラにも見えませんしね。
とは言え彼女はヤスミーン様の敵である事は間違いはないのです。
ただそのヤスミーン様ご自身が彼女をどうなされるのかは未だに謎ですけれどね。
男性達は……ええエグモンド様は令嬢を
いえ馬鹿の一つ覚えの様に褒め称えておりますわ。
ただカミルは先程の反省もあってなのでしょうか。
軽く、然も渋々と言った体で一度だけ頷けば、後は私の方ばかり幻の大きな耳を垂らせば大きな尻尾は力なくゆさゆさと振っておりますわ。
『く~ん』
幻聴でしょうか。
カミルより後で褒めてと哀願する様な上目遣いにうるうると大きな瞳に涙を滲ませつつこちらを凝視しております。
全く……何時の間にか二段遣いで私を誑し込もうとする方法を何処で覚えてきたのかしら。
とは言えその姿を見た私はと言えばです。
しっかりと心がぐらぐらと彼の愛らしさに揺すぶられているのですから本当に厄介ですわ。
はあ仕方がないですね。
まあ少しは反省した様なので後でそう少しだけ、ほんの少しだけ誉めてあげましょう。
「さあエリーゼ、これより王宮へ参ろう」
「ええエグモン、私この日をずーっと待ち焦がれていたのよ」
「ははは、本当に私のエリーゼは何処までも可愛いなあ」
お馬鹿でどうでもいい会話の後エグモンド様はポケットより魔石を一つ取り出されました。
漆黒の魔石……別名転移の魔石とも申します。
これはとても高価で希少な魔石。
この魔石一つで大型の馬車を一台は買えますわね。
またこの魔石だけは国家機関の管理するものなので一般的には販売しておりません。
闇……の販路は存在していると漏れ聞いてはおりますけれども……ね。
はてさて一体どちらでその様な高価なものを、そして一体どちら様の金銭で購入されたのでしょうね。
たった一度しか使う事の出来ない貴重な魔石。
その魔石が眩い光を放つと共に一瞬の内に二人は姿を消したのでした。
まあこちらと致しましては早々に厄介払いが出来てほっとしましたわ。
さて私達も直ぐに支度を済ませ馬車で王宮へと向かいましょうか。
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