第20話  sideエグモンド

『お早う御座います。

 所用がありますので先に王宮へ参ります』



 朝目覚めればである。

 色気も何もない、実に明瞭完結……ズバリ事務的且つサインすらないメモが机の上にちょこんと置いてあった。


 まあメモを書いたのはヤスミーンに間違いはない。

 そう相変わらずお手本の様に綺麗な文字を一目見ればわかる。

 何しろ私とヤスミーンの仲……だからな。


 どんな仲なのかって聞くか。


 将来の――――とは言えもう目の前だよな。


 あのガラス細工の様に美しい身体がだ。

 大きなメロンよりも多少小振りだけれどもだ。

 形よくも瑞々しい桃っぱいんを思う存分堪能……いやいやそれだけでなくヤスミーンの全てがもう僕のモノと言っても過言ではない。

 そうしてふと気づけば最近エリーゼとの距離が離れている様な感じがしないでもない。


 要するにスキンシップが足りないのである。


 この屋敷へ来るまでは極偶にだが胸を、あの大きくもムチっとしてなのにとーっても柔らかいメロンっぱいんへ未だ直接揉む事は出来なくともだ。


 しかしである。

 何かの拍子に触れる事がまだ出来ていたのだ。

 今も手や腕に残るあの感触は説明し難い程に美味……いやその度にちょっとした天へ召されかけたものだな。


 それがである。

 この屋敷へ引っ越して以来そう言ったスキンシップが徐々に、それはもう寂しい程になくなっていく。


 当然僕は焦ったよ。


 焦って焦ってそして昨夜漸くそのチャンスが到来したのだ。

 僕の僕足る所以でもある逞しいゾウさんは思いっきりパオ~んと鳴いてこれまでの思いの丈を思う存分成就させようとしたのだが。


 結果は不発。


 いやいや不発だ等なんて不吉な⁉


 この様な表現では僕の僕であるゾウさんが役立たずだと告げているのと同義ではないか。

 断じてその様な事はない。

 僕も僕のゾウさんも至って健康なのである!!


 だけどエリーゼ、君は僕の事を真実愛しているのだろう。

 それなのに僕はとても寂しい。

 ああ一刻も早く僕の最大の夢であるメロンと桃に包まれたいの――――。



 朝起きれば直ぐに僕は……僕とエリーゼは荷物と一緒に馬車へと乗り込み出発した。

 勿論行先は王宮ではない。

 何故なら舞踏会は夕暮れより始まるからだ。

 普段であればそう男の僕はまだゆっくりと過ごしている。

 だが今日はゆっくり等してはいられない。

 何故なら僕の愛するメロンっぱいんのエリーゼの可愛いお願い。


 


 この日の為に僕は街であるものを購入した。

 本来ならば屋敷で時間を掛けてエリーゼを綺麗に着飾らせればだ。

 そうしてゆっくりと、だが人目に付かない方法且つ安全に、そして愛するヤスミーンのエスコートをこなしつつ慣れない場所でのエリーゼのフォローもしなければいけない。


 しかし公爵邸の使用人達は最初から僕達とヤスミーンとの接し方に少し問題があってだね。


 何時も世話をする事さえも渋々と言わんばかりなのだよね。

 一体誰のお金でお給金を貰っていると思っているのだろう。

 僕はだね、将来と言うか直にこの屋敷だけでなく広大な公爵領を相続する公爵閣下となる人間なのだよ。


 全く本当に困っているのだよ。


 しかしこういう困った連中は何処の屋敷にも一人や二人は存在する。

 だから僕が公爵となった際には優しいヤスミーンに代わってその辺を厳しくする心算さ。


 そう言う訳でエリーゼの支度にも難色を示すと予想した僕は起きて直ぐに彼女を連れて屋敷を出たのだよ。

 向かう先は勿論実家である侯爵家ではない。


 うんそこは僕でもわかる。


 ヤスミーンと言う愛しい婚約者がいるのにエリーゼを美々しく着飾らせるのは、然も実家でそれを行うのは当然の事ながら得策ではない。

 僕を溺愛する母上ならばいざ知らずだ。

 二人の兄と父上……特に厳しい父上に知られればどの様な事になるのかは火を見るより明らかだ。


 だから僕は実家へ向かわずに友人宅へ向かっている。

 最近伯爵家を継いだ友人ならば文句を言う外野もいないだろう。

 そう思っていたのだけれど……ね。


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