第19話  sideエリーゼ

 はあぁ、あっぶなかったぁ。

 ちょっと油断し過ぎていたわね。

 まさかエグモンが背後から抱き締めようとするなんて考えも――――まあ前世では肉体関係があったから可能性はなくは……ないか。


 今生のエグモンは異性としての恋愛対象には見ていないし見る心算もない。


 ただの踏み台。


 んン、踏み台はいい過ぎか。

 じゃあ幼馴染兼お友達以上恋人未満。

 と言うよりも普通に親戚なんだけれどね。

 エグモンの立場を利用する代わりにご褒美として彼の望む愛の言葉を時々囁いてあげるだけ。


 ファインプレイをしてくれた時はボーナスとしてほっぺにチュー。


 それ以上の関係へは絶対に進まない。

 だって私の唇とこの美ボディーは全てカルステンへ捧げる予定なんだもん。

 正妃になれなくとも愛する彼に捧げる絶対条件はズバリ一択!!


 全く王家の仕来りなんてカビが生えまくっているんじゃないのかしら。

 今時の若い子達は大半がセックスしまくりだって言うの。

 子供さえ出来なければお互いのコミュニケーションを高めるのにセックス程有用性のあるものなんてないわよ。


 とは言えカルステンはこの国の第二王子。


 ウザイと思いつつも必要ならば従うしかないじゃない。

 お陰でここまで来るのに自分の身体が如何に男達にとって垂涎の的であるかを嫌って言う程に知らされたわよ。

 注目が集まる事に嬉しさを感じつつもよ。

 処女って事を貫くのがこんなにも大変だなんてね。


 気が付けば狼共から身を護る為に色々とスキルが身に付いたっけ。


 失敗作だけれどクッキーの味見をさせてあげようと気を利かせてあげたと言うのにエグモンってば何盛ってんのかしら。

 今度からは駄犬への接触も程よい距離を置かなくちゃね。

 全く駄犬にはヤスミーンと言うご主人様がいるのだもん。

 ヤスミーンには飼い主としてちゃんと躾をして欲しいわ。

 

 そうして私は可愛くラッピングされた見た目にも美味しそうな(厳選された)クッキー達を見て思わず微笑んでしまう。


「もう直ぐよ。もう直ぐ本物の貴方に逢えるから待っていてねカルステン」


 ちゅっとラッピングへキスをすれば私は直ぐに寝台へと潜り込む。


 決戦は明日なのだ。

 夜更かしは美容の大敵。

 それに明日の朝は早くから色々と準備もある。


 品良く美々しく着飾った私を見て恋に堕ちるのよ私だけの王子……様。


 その夜私はカルステンとエンドレスで幸せなダンスを踊る夢を見た。

 

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