第18話 sideエグモンド
先ず先程の状況を説明しようか。
がつん
これはだ。
あと50㎝弱で愛しのメロンっぱいんを背後より抱き締める事が出来ようまでの距離である。
そう後たった50㎝でエリーゼを抱き締めればだ。
予定では僕の腕の中へすっぽりと、あのか弱いエリーゼを囲うと共に僕のしなやかに動くだろう十本の指の出番だな。
見た目わかる程に柔らかそうでモチふわっとした大き過ぎるメロンっぱいんを厭らしげに、でもさり気なくも愛おしさをしっかりと込めて優しく揉みしだこうと思ったし当然後ほんの50㎝でそれは叶うと思ったのだ。
しかし結果は……不発。
やわやわと両の手を狭めいざ抱き締めんとした次の瞬間――――エリーゼは何を思ったのだろうか急に椅子よりすくっと立ち上がる。
そして当然の事だが彼女の頭の上には僕のこの麗しい顔があった。
がつん――――と軽快な音と共に僕はエリーゼの強烈な頭突きを喰らってしまった。
正直に言って激突されためっちゃくちゃ顎が痛い。
ジンジンなんてモノではない。
ガンガンかもしれない。
でも当のエリーゼは何て事のない表情をして僕を見ている。
もしかしなくともエリーゼ、君の頭はとても頑丈に出来ているのかな。
まあ愛しい君が痛い思いをしていない事は何よりだ。
この痛みが君になければ僕は喜んで心密かに耐えてみせよう。
だが災難は愛の頭突きだけでは終わらなかったのである。
ぐふぉ!?
ここで小さな声でぐへぇぇぇと言う呻き声が追加される。
そうエリーゼの素晴らしい頭突きを喰らった僕は身体のバランスを崩せばだ。
丁度そこに目の前あるだろう主を失った椅子が一つ。
不意打ち的な頭突きを喰らった僕には当然見えてはいない。
思ったよりも強く、顎に受けた衝撃のままふらついてしまった僕は見事にその椅子へ足を取られればである。
目の前にあるだろうテーブルへダイブしてしまったのである。
特にテーブルの縁は僕の腹部へ、然も若干下腹部だ。
もう少しで僕の息子が悲鳴を上げる所だったので本当に危険である。
顎に続き強かに腹を打ち付けテーブルへ、そうして真ん中に置いてあった皿へと顔面ごと突っ込んでしまったのだ。
ガツンガツン
小さく……もないか。
陶器とその上に盛られているだろうものと僕が同時にぶつかる音。
エリーゼが自称クッキーだと宣うゲテモノの幾つかはその衝撃で粉砕されれば黒い粉となって倒れ込む僕を襲う。
追い打ちとばかりにその黒い粉は僕の目や鼻の中へと侵入すれば地味に痛いしクシャミも中々止まらない。
おまけにだ。
倒れ込んだ際僕は口を閉じてはいなかった。
そう強烈な顎の衝撃であ……と漏れる声と共に口を開けたままだったからで、皿へとダイブした僕はもれなくその黒炭とも呼べるゲテモノを大量に口の中へと頬張る事となってしまった。
また悲しい事に鼻水を飛ばしながらくしゃみをすればだ。
「やだ、汚ーい」
と笑いながらエリーゼは更に僕より距離を取ると言うかだ。
「じゃあ朝が早いからもう寝るわね、おやすみ~」
そう言って笑いながら寝室を後にしてしまった。
深夜に行き成り起こされてのこれは一体何の罰ゲームなのだ。
おまけに口の中にある物をバリバリ噛めば噛む程に甘味なんて何処にもなく苦いししょっぱい。
これって焦げた苦みだけではないだろうと、よくもまあこんな家畜も食べない様なモノを作ったな……と思った瞬間だった。
「僕は断じて家畜以下じゃないぞ!!」
そう僕は今家畜も食べないものを食べさせられてしまった事に気が付いたと同時に多少の怒りを感じればだ。
こうなれば何が何でもメロンっぱいんを一日でも早く僕のモノにしてやると新たに誓ったのである。
勿論桃っぱいんなヤスミーンは婚約者だから彼女は自動的に僕のモノだけれどね。
はあ兎に角気分を入れ替えて寝る事にしようか。
そう……だな。
夢は桃とメロンに包まれるものがいいな。
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