第13話  sideヤスミーン

 抑々ですわ。

 古今東西どちら様のお国の王族若しくは皇族ともなればです。

 正体不明、いえ譬え王宮内で調理されたものであろうともそこはシビアにしっかりと毒見を行いきちんと安全を確認が出来たものでしか尊き御方方は口にする事が出来ないし、また自ら進んで口にされません。


 そう陛下の姪孫てっそんである私自らが作りしものとは言えこれは例外ではない。


 どの様に親しき者であろうともですわ。

 先ずその親しき者が安全であると何処に保証があると思います?


 王族何て言ってみれば自分か自分以外が基本。


 特に国王と次代を担う王太子、または次の王となる者を胎に宿す妃ともなればです。

 何時どの様な場面で毒を仕込んでくるかもしれない可能性がありますでしょう。

 普通に安全が確立されていない様なモノは余程の事がない限りその場では口にしませんわ。


 それが何をどうすればしがない男爵令嬢、いえ別に男爵と言う地位を卑下している訳ではないのです。

 これは世間一般的な常識として普通に王子殿下へ会う事も叶わない状態でですわ。

 そこにどの様な意図でエリーゼ嬢がクッキーを焼いた所で普通に受け取って……ああ多分受け取りつつ、スマートかつ迅速な所作で以って側近へ渡すのでしょうね。


 即――――として。


 それにしてもエリーゼ様は一体何処で第二王子……カルステン様をお見受けされたのかしら。


 私とカルステン殿下との関係は従妹姪と従兄叔父と言う少し複雑な関係。

 年齢は3歳しか変わらないのですけれどね。

 昔からよく見知っておりますけれども、ええ見知り過ぎておりますわね。


 はっきりと申しまして殿下はかなりの腹黒さまです。


 そんな殿下へクッキーをだなんて即ポイ捨て決定でしょう。

 容姿だけはどこぞの誰かさんと同じ様に見目麗しく王子様然とされておいでなのですが、裏の顔は敢えて見ない方がいいと思いますわ。


 でも私はある意味感心しておりますのよ。

 当日王宮へ行けないとしてもです。

 従兄叔父であられるカルステン殿下へクッキーを贈るだなんて私からすればエリーゼ嬢は立派な勇者です。


 ラスボス魔王へ立ち向かうその勇気!!


 つい先程までは厄介者でしかなかった存在がです。

 一気にその存在に神々しさが追加されましたわね。

 私ならば絶対に思いつきもしないでしょう。

 無駄になるのはわかっておりますがどうぞエリーゼ嬢、ラスボス魔王へクリティカルヒットをガツンとお当て下さいませ。


 自爆必須、当たって砕け散る結果は見えていますがこれで退屈な舞踏会も少しは楽しめそうですわ。


 それにしてもエリーゼ嬢はどの様にして王宮へ入る心算なのでしょう。

 先程のエグモンド様のご様子からでは伝手等なさ気でしたしね。

 とは言え明日は朝早くより私は王宮へ向かわなければいけません。

 面白そうなので何かお手伝いをしたいとは思いますが生憎と明日は多忙故に中々と思い通りにはならないものです。

 ただ我が屋敷の厨房を破壊するのだけはしないで欲しいですわ。


 何故なら先程マルセルの報告前後より階下……多分厨房の方から爆音めいたものが聞こえてきますもの。


 ほほ、何をされるのも勝手ですが壊したものはちゃんと修理して貰いますからね。


 

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