第9話  sideエリーゼ

 んふふ、今頃怒り狂ってんじゃないかしらん。

 まあね理由はわからなくもないもん。

 だってヤスミーンのお金で私とエグモンは贅沢三昧。

 愉しい事だけを私達で愉しめばよ、後の請求は全て公爵家へってつまりはヤスミーンに請求書が送られる。


 とは言え前世の時の様なお馬鹿一直線とばかりの散財に比べれば、今はその半分以下に留めてあげているのよ。

 それにヤスミーンの婚約者であるエグモンを寝取ってもいない。

 キスもだけれどもエグモンとしている事って言えば軽いボディータッチとさらりと、でもここぞって時……お強請りの時だけ甘~い言葉で囁くのみ。


 何て健全!!


 今時のこの手の小説に出てくるお馬鹿なヒロイン何てみーんな婚約者のいる男と寝ているわよ。

 然も相手は一人とは限らないのよね。

 そうそう前世の私と同じく目ぼしいイケメンを見つければ問答無用で何本も銜え込んだものよ。


 セックスをした男に決まった相手がいようといまいがそんなもの関係はないってね。


 だから余計に男女問わずに怒りと反感を買うのよ。

 そうして行きつく先は処刑若しくは炭鉱奴隷の性処理係行き~。


 ほんと、首を斬り落とされる瞬間の恐怖と痛み……うん、ほんの十数秒だけれど意識は確実にあったわね。

 でも痛いのと首を斬られた事に吃驚が同時にきて、後は何もわからないままに死んだ――――って言うか過去を遡ったわ。



 あんな思いは一度で十分。


 カルステンの事がなければエグモンやヤスミーンと何があっても関わり合いに何てなりたくはないって思うのが本音。

 だけどね過去を戻ったとしても私はしがない男爵家の娘。

 然も男爵とは名ばかりの、平民と大差のないって所がウケる~。


 真っ当な手段では到底カルステンへ逢う事も出来ない。


 でもエグモンを利用しヤスミーンを土台にしてならばカルステンとも出逢うチャンスはきっとあると思うのよね。

 出逢いさえすれば、そうちゃんと普通の令嬢としてカルステンと出逢えばきっと彼は私を愛してくれる筈。


 だから彼と出逢う為のドレスや宝飾品はちゃんと吟味したわ。

 キンピカで如何にも成金みたいなギラギラドレスは卒業よ。

 ヤスミーンが選ぶ様な淑女らしい落ち着いた色と上質な生地のドレス、それから少し小振りだけれどやはり品のある宝飾品を選んだ心算。


 どれも絶対前世の私が選ぶものではないものばかり。


 それでもいいんだ。

 カルステンと出逢う為ならばそんな事なんて構っちゃいられない。

 そして大前提に断罪されないくらいの散財。


 カルステンと結婚すれば幾らでもここで使ったお金は返してあげるから、もう少し大人しく……そうね今度開かれる舞踏会へ何とか参加してカルステンと運命の出逢いをしなくちゃね。


 くれぐれもヤスミーンと恋人になる前に彼のハートをゲットしなきゃ。


 ねぇヤスミーン、他所を見ていないであんたは自分の婚約者と乳くり合っていたらいいんだからさ。

 今度こそ邪魔はしないでよ。

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