第5話 sideヤスミーン
同棲ならぬ共同生活が始まりひと月経過しました。
あの日エグモンド様が高らかに宣言なさいましたが現実問題この屋敷の主であり次期公爵家の当主でもある私は未だ了承してはいないのですよ。
どうして了承等出来ようものでしょう。
従妹だか幼馴染なんて関係はこの際どうでもよいのです。
彼女は間違いなくエグモンド様の愛人に相違ないのでしょう。
それにしてもですわ。
何処の世界に結婚も済ませてはいないただの婚約関係の状態で、然も婿入りの癖に愛人同伴で越してくるとは随分と舐めた行動をしてくれるではありませんか。
まあ最初から、また何度も申し上げますが私にエグモンド様への恋情と言うものはこれっぽっちも存在致しません。
抑々恋情……愛情と言った類のものとは何ぞや?
反対にそう問いかけてみたいですわね。
何故なら私は愛を知らずに育ったのですもの。
昔から両親の愛はお二人にとって一人娘の私ではなく、双方に存在するだろう愛人家族のものでした。
確かに何の愛情も知らずに育った訳ではありませんのよ。
屋敷内で私へ尽くしてくれる使用人達も然り。
全てとは言いませんし私自身そこまでは求めもしません。
ただ何となくですが私と直接関わる者達から慕われている?
それとも憐れまれているのかもしれませんね。
両親に捨て置かれた哀れで可哀想なお人形令嬢である私へ……。
ああ亡くなった両親達の親、つまり私の祖父母は別ですわよ。
お互いに同格の公爵家と言う立場もあって皆様それぞれにお人形として育てられたのですもの。
確かに孫娘に対する愛情はそれとなく感じる事が出来ますわ。
でもそれがただ何とも微妙なのです。
愛を知らずに育ったのは私同様であるからなのでしょうか。
まあ紆余曲折を経て愛を知ったとは言えどもです。
それを余す事無く相手へ表現出来るかと言えば答えはノーです。
またどちらの祖父母もですが親戚方の感情表現がとてもお上手ではない?
この辺りに関しては彼らと血が繋がっているのだと認めざるを得ませんわね。
ただ両親と違うのは双方の祖父母は愛人を持たなかった事。
特に母方は政略結婚にも拘らずにですよ。
一方父方の祖父母は一般的にはあり得ない大恋愛を経ての結婚をしたらしいですわ。
然もあろう事か祖母が祖父を恋い慕った末の追いかけ回し――――てましたわね。
そう我が一族で感情表現が豊かで愛情溢れる御方。
それが父方の祖母、つまりは現王年の離れた姉君なのです。
年の差16歳。
ええお産みになられたのは親子程に年が離れていますが勿論先王陛下唯一の妃であられた王太后陛下ですわ。
ご寵愛が深いと申しますか、私と同じ16歳で成婚され二人の姫君と駄目押しとばかりに頑張った末の現王陛下をお産みになられた今現在も離宮でお元気に過ごされておいでになられている私の曾お祖母様です。
陛下と私の正式な関係は叔父と姪ではなく陛下にとって私は姉君の孫、つまりは
そして王族の血をしっかりと受け継ぐ私の赦しもなくあの二人は今日も我が屋敷内で堂々とのさばっておりますわ。
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