第4話 sideエリーゼ
はいはーい大変お待たせしちゃったわよね。
私こそがこの物語のヒ・ロ・イ・ンのエリーゼよ。
ヤスミーン何てモブよモブ。
彼女は私を引き立たせる為だけの存在とお財布……かなぁ。
そしてヒロインな私の王子様的な立場でもあるヒーローは当然エグモンド――――と言いたい所だけれども少し違う。
一般的にこの展開ならば間違いなく彼こそがヒーローなのだけれどね。
生憎私ってばさぁ、お頭の弱いガキは苦手なの。
まあぶっちゃけエドモンドは私を新たなステージへと押し上げてくれる踏み台かな。
ここまで言えばもうわかるよね。
そう私には前世の記憶があるんだよ。
然も途轍もなく苦~くもきつ過ぎる体験ってものをね。
出来ればもう二度と味わいたくはないわね、うんうん。
簡単に説明すれば前世の私はエグモンドと一緒になって馬鹿をやらかし過ぎて綺麗さっぱり……いやそこはざっくりと実に見事なバッドエンドを迎えてしまったのだ。
私達を奈落の底へと突き落としたのは公爵令嬢のヤスミーン。
存在はモブだけれど恐るべし。
今生では彼女の怒りには絶対に触れたくはない……けれども多少くらいは許してね。
ほんと、最初からじっと静かに静観する体を貫いたかと思えばよ。
最期の最後でにっこり笑って突き落とすだなんて、ヤスミーン程冷酷な悪役令嬢はいないわね。
ああそれで私が一体何をしたかって?
まあちょっとばかり彼女のお金で贅沢をしたのよ。
ほらヤスミーンとエグモンドが将来結婚するでしょ。
そして私は彼の愛人になるじゃない。
物凄く広大且つ豪奢な邸宅なのだもの。
私一人増えたってどうって事ないと思ったの。
お次にそれまで自由にドレスや宝石も買えなかったからちょっとばかりね。
エグモンへ可愛~くお強請りをしてぇ、ひと月にドレスを二十着と気に入った宝飾品を幾つか購入したわね。
ああ金額なんて覚えていないって言うか知らないわ。
実家にいる頃は姉様のお古だったし、買い物と言えば何時も値札を見て財布の紐を緩める前に店員と
もう一度よく考えてって普通に一週間考えた末に結局買わなかった事が多かったわね。
運よくお買い物をしたとっても五本指で数えるくらいだったしぃ。
だって仕方がないじゃない。
実家の男爵家は貧乏なのだもの。
食べて生きていくだけで必死なのにドレスなんて穴が開いていないだけましだと思わなきゃいけなかったのよ!!
それがエドモンの愛人となったと同時に初めて知る値札や値引き交渉のしないお買い物にど嵌りしたわ。
何を買っても全ては侯爵家へと言えばそれでOKだなんて信じられない。
だからついつい買ってしまったのよね。
後は好きな時に起きて好きな時に美味しいものをお腹いっぱい食べてからエドモンと好きなだけ愛し合ったわ。
ええ勿論エドモンとヤスミーンの初夜は流石に遠慮したわよ。
そこまで図太くはないしぃ、3〇……なんて興味がないと言うかよ。
これでも一応男爵家の娘ですもん。
娼婦じゃないんだから複数人で愛し合ったりはしないわ。
まあエドモンには悪いけれど彼のってちょっとばかり細くて短いの。
ふふ、深くは追及しないでね。
でもヒーローがそれじゃあ可哀想でしょ。
だから私の身体を満足させてくれるお友達が何人か必要だったワケ。
でも幸せな時間はあっと言う間に過ぎ去ってしまったわ。
そしてある日突然それは終わりを告げたの。
騎士達に捕らえられた私達を見下ろすのは悪役夫人となったヤスミーンと第二王子カルステン。
このカルステンこそが本物のヒーロー。
ええ容姿や身分だけじゃない。
何もかもが完璧な男性。
そうしてヤスミーンに隠れ私にも内緒で色々と悪い事をしていたエドモンとその愛人であった私は捕縛されたのちに処刑されたのよ!!
きっと傷ついた振りをしてカルステンへしな垂れかかり甘える様な仕草でヤスミーンは私達の処刑を強請ったのに違いない。
だって処刑当日それはもう二人は仲睦まじい様子で殺されていく私達を笑顔で見つめていたのだもん。
あれだけは絶対に忘れやしない!!
あの女……コソコソと隠れて私達を追い詰めるとは何て陰湿なの⁉
嫌だったら最初からはっきりと言葉で言えばいいじゃない。
それに有り余るお金を持っているのだから少しくらい世の中の景気が潤う様にお金を使ったと思えばいいだけじゃない。
本当にケチで陰湿で根暗な女。
だからエドモンにも見向きすらされなかったのよ。
でもカルステンを見た後でエドモンを振り返ればね。
何て言うかあんなにかっこいいと思ったエドモンが物凄~くモブに見えたのよね。
外見だけでなくエドモン自身なんてひょろっと細くて短小なのを思い出せばよ。
ああ比べるまでもなくカルステンこそが本物のヒーローだと悟ったわ。
ならばアレも勿論に相当ご立派な筈!!
だから今度こそは決して失敗はしない。
理由はわからないけれど時間が遡って7歳の時に前世を思い出したのも何かの縁。
最初はエドモンを踏み台にし、そうして最後にはカルステンをしっかりと手に入れて見せるわ。
ヤスミーンなんかには絶対に負けない。
ああ今度はヤスミーンを処刑若しくはあの綺麗過ぎるお人形の様な顔だからね、むさ苦しい男ばかり来る娼館へ売ってしまってもいいかな。
兎に角私はヒーローであるカルステンの妃若しくは愛妾へと上手く収まってみせるわ。
その為にも美しさに磨きを掛けなくちゃ。
待っていて寝愛しいカルステン。
貴方の永遠の恋人がもう直ぐ逢いに行くからね~。
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