第3話 sideエグモンド
僕はもう直ぐ公爵家当主となるエグモンドだ。
侯爵家の三男として生を受けた僕の将来何てスペアのスペア。
言ってみれば厄介者でありどうでもいい存在。
でもそれって可笑しくないか。
平民でも貧民でもないれっきとした貴族。
然も下位の貴族でもなければ上位の貴族の生まれなのだよ。
誰もが憧れるだろう侯爵家の子供として生まれたのにも拘らずだ。
何故か運悪く三番目に生まれてしまったが故に僕ははっきり言っていらない子供と言う位置に甘んじなければいけない。
また二人の兄は少し年齢が離れている。
おまけにとても優秀だ。
嫡男である長兄は夫婦揃って未来の侯爵家の当主夫妻として領地経営に社交界への繫がりを強固にと抜かりはない。
また次兄は未だ独身ではあるもののそこはスペアらしく領地経営を少し嗜みつつ本業である王宮の文官として宰相補佐を務めればだ。
エリートコース一直線とばかりに将来の宰相としての研鑽を積んでいる。
どちらの兄もそれなりに己が将来を盤石なものとして築きつつある。
父上の信頼も厚く三人が揃うととても仲の良い親子にしか見えない。
そうして最後に生まれた末っ子の僕は兎に角愛情を注がれて育つ。
主に母上が中心だったけれどね。
どちらかと言えば父上は何時も兄上達とは違い僕にはとても厳しい。
何かと言えば直ぐに二人の兄を見習えと言う。
確かに僕は兄達に比べ色々と劣るのかもしれない。
でもそれは僕が悪いのではなくだよ。
兄上達よりも賢い子供に産んでくれなかった父上と母上が悪いのであって僕が悪いのではない!!
僕だってそれなりに頑張っているのだからね。
真面目に学園だって行っていたのだからさ。
母上はそんな僕を何時も褒めてくれる。
いや母上だけじゃない。
僕の最愛の従妹であり幼馴染でもあるエリーゼの二人だけが何時も僕の味方。
母上は兎も角エリーゼは本当に可愛い。
まあ可愛いのは容姿だけじゃないよ。
仕草や舌っ足らずな言葉遣い、それに何と言ってもアレだよ、アレ。
可愛くて華奢で病弱な癖にさ、最初はとても小振りな苺だったのがあっと言う間に大振りのメロンへと育った見た目にも柔らかなおっぱい。
ふふ、エリーゼはとても甘えん坊だからね。
何かの拍子に何時も僕の腕や身体へその柔らかくも瑞々しいメロンをさ、僕の身体へむにゅっと押し付けてくるのだよ。
僕はこの偶然の悪戯がとても大好きなのさ。
そうだろう誰しも男ならばこの偶然には逆らえまい。
そして僕も男だから逆らう事はしない。
だから十分に柔らかで美味しそうな感触を許される範囲で満喫させて貰う。
でも幾ら可愛くて美味しそうでメロンなおっぱいを持つエリーゼと言えどもだ。
彼女と僕とでは結婚は出来ない……いや出来なくはないがそ、その僕は貧乏と言うものが嫌いなのだよ。
そうエリーゼはしがない男爵家。
貴族世界で言えば下位の下位。
まあその下に騎士爵や準男爵もあるから断トツの最下位ではない。
しかし没落寸前と言うものが男爵家の前についている!!
この高貴な生まれの僕がだよ。
何を好き好んで没落寸前の男爵家の娘と結婚……そりゃあエリーゼは可愛いけれどこれは別。
抑々彼女は正妻よりも愛人的な存在が似合うかな。
そんな事は勿論彼女には言わない。
でも心の中で僕はそう位置付けている。
何故なら高貴な僕の伴侶となる令嬢はやはり高貴な生まれでないと釣り合わないからね。
そんなある日の事だった。
日頃煙たがられている父上より僕へある令嬢との婚約が通達されたのは……。
相手は侯爵家よりもランクが上の公爵家の令嬢。
然も一人娘への婿入り――――って事は将来僕はその令嬢と結婚すれば父上や兄上達よりも更に立場が上の公爵家の当主だ!!
当主ともなれば愛人の一人や二人は普通に囲える。
当然妻となった令嬢に文句は言わせない。
と言うかさ、貴族で愛人持ちはステータスであり裕福なる者と言う証なのだからね。
なのに――――。
「エグモンド様。立場上政略上の婚約ですが出来れば将来愛人を持つ事なく普通の夫婦になりたいと思います」
「うん、僕もその心算だよヤスミーン嬢。貴方の様に美しい令嬢が婚約者となって僕はとても幸せだ」
信じられない台詞を言ってのける。
確かにとても美しい令嬢だ。
上品で今までに見た事がないくらい……そうガラス細工の様な触れれば一瞬で壊れてしまいそうなくらい繊細且つ精密に作られたお人形。
とは言えエリーゼの方が温度を、胸の大きさと柔らかさを感じる……かな。
取り敢えず僕は正式に結婚をするまでの我慢だと思い当り障りのない返事をした。
だって未来の公爵家当主の椅子がそこに転がっているのだよ。
拾わない者なんていないだろう。
ああこれでもう僕はスペアのスペアではないし、どうでもいい子じゃあなくなるのだからね。
僕の未来は薔薇色だあああああああああ。
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