第2話  sideヤスミーン

「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだよ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだ。いいよねヤスミーン、君は僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」



 はあ?

 何を言ってやがりますのこの人は……。


 何時貴方が公爵になると決まったのでしょう。

 抑々正式に公爵家の血を受け継いでいるのはこの私だけなのですよ。

 それに第一印象で優秀だったのはその容姿だけで、あとは平々凡々ってあながち外れて……いえどうやらおつむの中身は思った以上に空っぽ若しくはお花ではなく雑草が鬱葱と生い茂っているのかしら。


 まあ婚約を決めたのは確かに私ではありません。


 今は亡き生物学上の父である前公爵。


 その父も既に他界致しましたし王命とは言え同棲……同居初日でえーっと従妹で幼馴染と言う愛人的な存在を本邸へ連れ込む時点でアウトですわね。

 エグモンド様のご実家である侯爵家との事業関係にしても特に我が公爵家側に益となるものが些少なりとも見当たらない。

 反対にエグモンド様のご実家へ融資しているくらいです。


 この上エグモンド不良債権を引き受け尚且つ回収見込みの少ない融資と言う名の無駄遣い程無駄なものはないわね。


 これは早々に狩り取らなければ後々問題が大きくなるケースに違いありませんわ。


 全く生きている間に両親揃って子どもを放置するだけではなく死んでからも迷惑を掛け続けるだ何て絶体にあり得ない。

 まだ双方の愛人問題も片付いてはいないと言うのにです。

 

 王命……姪を心配しての事なのでしょうけれどもです。

 少しは迷惑と言うものを考えて欲しいのですわ。


 兎に角何をするにしても証拠集めをしなければいけません。


 腹立たしい事この上なしですが、ここは暫くの間泳がす……いえ静観と言う体で相手の様子をじっくりと見てみましょうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る