11
その場にいた全員の視線が、笑い声の主である天帝へと向かう。
唖然とした表情の
「はーっ。いいな、お前。気に入った。名前は?」
「
「生憎、ここへ呼び込むのに名前は必要なくてな。それでだ、
「は?」
天帝はそれを片手を上げることで黙らせると説明を始めた。
曰く、この場所は天界と呼ばれる現実世界とは異なる世界であるということ。
ここへ来れるのは人として生れ落ちるより以前に、ある使命を受けた選ばれし存在だけであるということ。
その存在は天使と呼ばれているということ。
「
人の悪い笑みを浮かべた天帝が、
嫌そうな顔をした
* * *
「そう、天使なの。本当に忌々しい坊やね」
ゼネリアの美麗な顔が言葉通り忌々しげに歪む。
ゼネリアに支えられて何とか立っていた
(一体、何が起きてるの……?)
この場で唯一状況についていけていない
そんな
「でも
それと同時に光の膜が弾け飛ぶ。
先程まで
その見た目は、微かな光にすら反射して煌めく金髪と全てを見透かすような澄んだ碧眼を持ち、日本人離れした顔立ちと筋肉質な体をしている。
「ワタシ、一度天使の血ってモノを味わってみたかったの。大人しくワタシに食べられてくれないかしら?」
「それは無理な相談だ。俺にも大天使としてのプライドがあるからな、そう易々と悪魔に倒される訳にはいかない」
「大天使、ですって!?」
さっきまでの動揺はどこへやら。
欲望の向くまま気の向くまま、楽しげに舌なめずりをしていたゼネリアだったが、
「大天使ウリエル。それが俺が天帝から与えられた名前さ。そんじょそこらの天使とは一味も二味も違うから、きっと色々楽しめるぜ」
ウリエルと名乗った男はその顔に不敵な笑みを浮かべて、ゼネリアを挑発する。
元より悪魔は欲望に忠実な存在だ。
興味を引くものがあれば、全てを投げうってでも得ようとする性質がある。
それは人型を取ったゼネリアであっても同様だった。
「いいわね、大天使ウリエル。あんたの命、ワタシが戴くわ」
(大天使といえば天界の幹部クラス。倒せばワタシの名前にますます箔が付くわ)
打算と欲望に彩られた瞳をしたゼネリアが、ウリエルに飛び掛かる。
その後ろで
ゼネリアの黒光りする両腕の刃が、ウリエルの皮膚をかすめて引き裂かれた皮膚から鮮血が伝った。
「天使も赤い血をしているのね。それにとても甘美な味がするわ」
楽しそうに刃に付いた血を舐めとったゼネリアが興奮気味に攻撃を再開する。
ゼネリアの攻撃はとどまる所を知らず、道路に倒れ込んでいる
「そうだ、ウリエルにだけワタシのとっておきを見せてア・ゲ・ル」
そう言ったゼネリアの両手が五指の状態に戻り、右手に赤黒く光るムチが出現した。
「せいぜい頑張って抵抗して見せてちょうだい!!」
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