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* * *
最初に感じた違和感は空気の流れが悪い場所に、これまではなかったはずの黒い靄が集まっているのを目にした時だ。
手や箒を使って何度払っても黒い靄は何度でもそこに集まる。
そして他の誰もそれを気に留めていないことにも気が付いた。
これは後に知ったことだが、あれは誰も気に留めていないのではなく、見えてすらいなかったらしい。
そして黒い靄を見るようになって一週間が経った夜の事だった。
「……ここは?」
不意に眩しさを感じて、まだあどけなさの残る小学六年生の
眩しさに慣れる為に数度まばたきを繰り返してから辺りを見回していく。
白を基調とした壁や天井、ふかふかの絨毯の上に置かれた同じく白いテーブルとソファーなどの家具には繊細な装飾と金細工が施されているのが見て取れた。
(小学校で見た応接室のような部屋だな。ここまで豪華じゃなかったけど)
周辺状況のあまりの異質さに、
(記憶通りなら、俺は自分の部屋で眠ったはず……ということは、夢か?)
夢か現実かを確かめるのにやることといえば、日本広しといえど限られてくる。
その例に漏れず、
「いってぇ!」
思わず声が出るほどの痛みに、これが夢ではないのだと悟る。
では一体
(この部屋の中に何かあるかな?)
少しでも情報を得ようと部屋の中を探索しようとしたその時だった。
目の前の真っ白な壁に金色のドアノブがついた扉が浮かび上がる。
やがてそれは内側へと押し開かれ、僅かな光すらも反射させる金色の髪を生やした長身の男性が現れた。
その男の日本人離れした容姿に、
(まさかここ、日本じゃないのか?)
そんな
「気付かれましたか。天帝がお待ちですので、どうぞこちらへ」
有無を言わさぬ男の笑顔に、
しばらく歩いて辿り着いたのは先程の部屋よりも何倍も豪華で広い、部屋と呼んでいいのか悩むような空間だった。
「どうぞ、ここからはお一人で」
先導していた男に中央に敷かれた絨毯の真ん中を歩いていくように言われた
進む先の正面の床は階段状に五段ほど上へとのびていて、その上には俗にいう玉座がある。
そこにはもうすでに人が座っていた。
身の丈ほどはありそうな長さの光輝く金色の髪を持った、他の者達と同じく日本人離れした顔立ちの男性だ。
「我が名は天帝。この地を統べる王であり、人間達に神と呼ばれる存在である」
天帝と名乗ったその男は、玉座に偉そうにふんぞり返って座りながら値踏みするように
それに習う様に両側からも数多の視線が注がれる。
(なんだってんだよ、一体……)
見慣れた顔や物が一つもない、ある意味で不気味な空間に放り込まれた
「神だか何だか知らないが、あんたが俺をここに連れてきたのか?」
不機嫌さを露わにした
「貴様、なんという口の利き方を!!」
「ぶははははははは!」
代表した一人が上げた非難の声にかぶせる様に、豪快な笑い声が広々とした空間に響き渡った。
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