7
人が死に近付く時、ほんの僅かに空気と風の流れが変わる。
その変化を全身で感じながら、学ラン姿の
メイン通りを昨夜と同じく西から東へと歩きながら、左右の路地に気を配る。
そしてお目当ての路地を見つけると、その中へと足を踏み入れていく。
路地を進んだ先でまず見つけたのは、震える足で後ずさりをする会社帰りだと思われるスーツ姿の女性だった。
「い、いやっ、やめて……お願い、助け……っ!!」
怯えた表情を浮かべていた女性は背後に現れた
その姿を横目で見送った
そこには暗闇に溶け込むように立つ二つ分の人影があった。
一つは
(やっぱりそうか……)
その気配で全てを悟った
「
「なんで、ここに……」
一方、
女性は暗がりでも目立つ白銀の髪に赤い瞳を持ち、随分と魅惑的でセクシーな身体つきをしている。
世の男性陣は十中八九、一目見ただけで視線が釘付けになるだろう。もっとも、普通の人間であればだが。
女性の正体に見当がついている
「ねぇ
女性の問い掛けが耳に届いていないのか、
「ねぇ
「……ただの転校生よ」
語気を強めた女性の声にびくりと身体を震わせながら、
「そう。それじゃあ、ワタシの食事の邪魔をしないでくれる? 転校生の可愛い坊や」
どう見ても食べ物とは無縁なこの場所で食事の邪魔といいながら、女性が蠱惑的な笑みを浮かべる。
少し不機嫌でありながら楽しさも滲ませている女性とは対照的に、
その様子から
(早くどうにかしないと)
このままでは
「食事ねぇ。ということは、お姉さんが切り裂き魔なのかな? まさかこんなに美人なお姉さんが猟奇事件を起こしてるなんて、神様も意地悪だよなぁ」
「ちょっと坊や、ワタシの話聞いてるの? それとも死にたいの?」
わずかに苛立ち始めた女性に
能天気で取るに足らない、女性にとっては邪魔な存在でしかない
「ちゃんと聞いてるよ。
悪魔。
神話や伝承などに登場する空想上ものとされている存在。
しかし、
人の周りに闇が生まれる。生まれた闇は寄り集まって形を持ち、現実世界に害を及ぼし始める。
その闇が肥大化し実体を得たモノを、
悪魔は総じて人間に憑りつき、その人間から生命エネルギーを得て実体化する。
実体と一口に言っても形は様々だ。
トカゲや魚、鳥などの様々な生き物の形を模して作られる。そして時にはこうして人型を取るものもいる。
「ワタシの正体知ってて関わりに来るなんて、坊やはひょっとして自殺志願者なのかしら。もしそうだとしたら残念だけど、他を当たって? ワタシは自分で見定めた人間にしか手を出さない主義なの。ごめんなさいね、坊や」
楽しそうな笑みを崩すことなく、でもどこか申し訳なさそうに喋る悪魔に
今の
しかし、そうですかと言って引き下がる訳にもいかないし、逃がす訳にもいかないのだ。
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