5
「いやぁああああああああああッ!!!!!」
その時どこからか女性の叫び声が聞こえてきた。
商店街の路地と建物で反響していた為、皆正確な位置を掴みあぐねている。
バラバラに散らばって動くのを避けたいのだろう。
あっちから聞こえた、こっちから聞こえたという不毛な言い争いを始めている。
「俺らだけで勝手に動くか?」
(好奇心に駆られて動いた結果、はぐれて一人きりになった所を切り裂き魔に襲われる可能性の方が高い)
ふと誰かが走る足音が聞こえた気がして、
同じ学校のセーラー服を着た少女が奥の路地を走り抜ける姿が、南北に伸びる細い路地の隙間から覗く。
言い争いの声に気付いたのだろう少女が、一瞬だけメイン通りに顔を向けた。
暗闇に慣れた
その顔を見た瞬間、
(
学校を休んでいたはずの
「
呆然と立ち止まり、右を向いて路地の先を見つめる
幸か不幸か、足音に気付いたのは
最悪の予想を振り払う様に
(まだ
そう自身に言い聞かせていた
「おい、らんっ」
文句を言おうとした
やがて、なおも言い争いを続けていた残りのクラスメイト達が、眩しいほどの懐中電灯の明かりに照らされる。
先程の悲鳴、それに相当な大声で言い争いをしていたのが聞こえていたのだろう。
近隣住民の誰かが警察を呼んだらしく、駆け付けた制服警官によって言い争いをしていて逃げ遅れた面々は厳重注意を受けている。
状況を把握して大人しくなった
それに気付いた
「どうするつもりだ?」
追いついた
答える気がないのか黙ったままの
南北に伸びる路地を一つ一つ確認しながら進んでいた
同じように歩いていた
「これって……」
「今日の被害者だ」
絞り出した
狭い路地の壁や道路は闇に溶けるほど黒く、その中央に倒れる傷だらけの女性の姿が際立って見えた。
不意に空から光が差す。
雲の隙間から隠れていた月が顔を出したようだ。
そしてその光は、壁や道路を黒く見せていた飛び散る液体をこれでもかと照らす。
月の光に照らし出された事件現場は、飛び散った血の色で驚くほど赤黒く染まっている。
「帰るぞ」
言葉を失くしている
しばらく引っ張られるままに引きずられるように歩いていた
「あの人、どうするんだ?」
「近くには警察もいた。悲鳴を聞いたあいつらもいる。俺達の出る幕はない」
淡々とそれだけ答えると
(今日は満月だったか……)
視線を下ろすと隠すものの無くなった満月の光に照らし出された自身の影に、何かから逃げるように事件現場方向から走り去った
そして同じく月の光に照らされていた、飛び散った赤黒い血しぶきと道路に転がる傷だらけの女性の姿を思い出す。
(状況証拠は揃ってしまった。もしも一緒にいた中の誰かが
そうなる前にもう一度
あの事件現場で感じた違和感を確認する為にも。
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