第4話 解決の糸口

 異世界に来て2日目。


 言語を理解できるようになった俺は、この村の人達と話をした。

 俺と言葉が通じるようになり、みんな俺の記憶喪失が回復してきたと喜んでいる。


「やっほーアルフくん。話せるようになったみたいじゃん?」


 俺の体、アルフ=マクラレン。君付けで呼びつつも馴れ馴れしくしてくる、恐らく同い年の少年がいる。


「まだ記憶ない感じ? 昨日は本当になんも覚えてなかったの?」


 エルノア=リゼウス。村の子供の中でも一番俺に関わってきて、きっと仲が良かったんだと思える。


「ああ、まだ……」

「そ。まあ昨日より良くなったみたいだし、そのうち治るんじゃない?」


 こうして明るく話してくれるやつが居ると、俺も少し安心する。

 けど、このままでいる訳にはいかない。俺はアルフに、この体を返すんだ。

 とはいえ方法なんて知らない。この世界について、色々と調べないとな。


  *


 天使は言っていた。この世界には魔法が存在すると。

 どうやらそれは本当のようで、実際に人が使っているのを目の当たりにした。


 例えば料理。母親が料理する際、自分の手の平から炎を出して、肉を加熱している。

 井戸はあるものの、今すぐに水が欲しい時は自分で出すようだ。更にそれを凍らせて氷も作っている。


 魔法というものを、この目で初めて見た。好奇心もあるがそれ以上に、そんな不思議なものが存在するなら、魂を探す方法もあるかもしれない。

 全く以て根拠の無い憶測だが、他に方法が無い以上、それに頼るしかない。

 俺は魔法、魂について、周りの人達に聞いてみたり、本を読み漁ってみた。ついでに、この世界がどういう感じなのかも。


「魔法について、ねぇ……魔法ってのは、俺達にもよく分からんもんだよ。気が付けば使えるようになったし、周りも使ってるから、そういうもんだと思ってたさ」

「え、そんな事、初めて考えたなぁ」


 天使が魔法を不可思議と言ったように、自分で使っている人間でさえもよく分からないらしい。

 当たり前に使えるものだし、身体機能の一部だという認識なのかもな。


 けどだからといって、それを研究する人間が一人も居ないとは思えない。俺は諦めずに調べ続けた。


「魂? あ〜……そんな事を調べてる奴がいたなぁ」


 ──と、意外にも手掛かりはすぐに見つかった。

 ダイアス=バルキアスさん。おっさんっぽいがまだ若く、筋肉がムキムキでめっちゃ強そうだ。

 剣をたくさん所持していて、以前は世界中を旅していたとか。


「俺のダチ、リンゼって奴だよ。俺は剣豪、あいつは大魔女って称されてた。物好きな奴でな、魔法なんて訳の分からねぇものを飽きずに調べてた」


 しれっと自慢が入ったが、そのリンゼという人は言わば魔法使いなのか。


「その人はどこに居るんですか?」

「近くの村だ。近くっつっても結構歩くけどな」


 その人に会えば、何とかなるかもしれない……!


「あの、俺その人に会ってみたいです!」

「わりぃ、ちょっと諦めてくれ」

「えぇ!?」


 即断られた。


「いや、俺は会いたくねぇんだよな〜……だから連れて行くのは勘弁というか。んで魔物とか出るから、村から出るのは危険だろ?」


 そう、一人で村の外に出るのは危ない。

 人でも動物でもない、魔物というのが出るらしい。

 だからこの、昔旅をしていたというダイアスさんに頼んだのに……


「魔法が使いてぇのか? それとも研究か? お前魔法の才能なさそうだし、研究したって何か発見できる可能性は低い。止めといた方が良いと思うぞ〜」

「いや、その……」


 しれっと酷いこと言われた。

 何やら会いたくない理由があるらしい。俺としては非常に困ってるんだが……

 俺の事情を話せば、連れて行ってくれるだろうか。信じてくれる保証は無いし、こんな事をペラペラと他人に話して良いものか……


「代わりに剣術やらねぇか? この剣豪ダイアスが直々に教えてやれるぞ!」

「あ、考えておきます」


 だが手掛かりは得られた。もしかすると何とかなるかもしれない……!

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