第三部・第3話

 当初は一番の要所を抜けたと思われていた。

 難攻不落とまで言われた要塞を陥落させ、要となる都市を二つ占領し、確実にコレギマ軍を後退させることに成功していた。残るは目の前の丘に連なるコレギマの拠点の一つ。

 要塞と言うには程遠いが、多くのトーチカがまるで城壁のように並べられ、フォニィ国内南部地域に於ける、コレギマにとっては最後の砦と言える場所だった。しかし撤退したコレギマとフォニィの連合軍が集結し、まさに戦争の結果までをも左右させる激戦になると予想されていた場所でもある。。

 そこを抜ければコレギマの国境まではもうすぐ。当然ラカニエもかなりの戦力を投入していた。

 シーラの部隊が配属されたのはまさにそんな時だった。

 第二強襲部隊。

 シーラが部隊を任せられるようになって、もうすぐ一年になる。

 周りからは名ばかりの部隊長と揶揄されたこともあった。エリート待遇のシーラを快く思わない者は未だに多い。しかし決して後方支援に甘んじていたわけではない。最前線での作戦時には率先して名乗りを上げていた。

 周りからのイメージを変えたい部分はあったのだろう。

 戦歴を重ねることで周りから認められたかった。

 しかし、それに伴う被害も大きい。所属兵士の死傷者数は国軍の中でも常に上位に食い込む。補充による新兵の教育も儘ならない内に更に戦死者は増えていく。

 それはシーラが最前線部隊に配属されてから知った事実でもあった。

 最前線に補充される兵士のほとんどが新兵ばかり…………。

 教育をする暇もないままの実戦投入に、戦力は著しく低下していく。

 長引く戦争による国内情勢の悪化と人材不足からか、すでに形だけの戦争を継続することが国家事業。そのための捨て駒としての兵士。国が欲しいのは兵士ではなく人数。

 命は安かった。

 国内での新兵用の訓練期間はどんどん短くなり、弾丸の的が大量生産されていく。

 震えながら銃を構える者。

 自分の命を諦める者。

 何かに取り憑かれたように戦場に呑まれていく者。

 しかしその反動なのだろうか。戦場に蔓延するものは恐怖だけではなかった。

「今日もですか? 少し控えられては…………」

 双眼鏡でトーチカの群れを眺めていたシーラが口を開く。すぐ隣に倒れ込むようして座り込んできた大佐のヤシロに悪態をついていた。

 ヤシロは手にしたスキットルからウィスキーの香りを漂わせながら、面倒そうに応える。

「まあまあ……もう一ヶ月になるんだぞ。睨み合ってる内に戦争なんて終わるさ」

 こちらの拠点は古い城壁の跡。城はすでに無いが、城壁だけが二重に円を描いたまま残っていた。それを背にしながら、ヤシロは背後に指を差すようにして続ける。

「コレギマの奴らだって、たまに暇つぶしにライフル撃って終わり…………それが日課だ」

「しかし大佐自ら朝から泥酔では兵士の士気に関わります」

 シーラは双眼鏡から目を離さないまま。

 ヤシロは横目でシーラを見て応える。

「親父と同じ堅物だな…………」

 するとシーラは双眼鏡から目を離し、ヤシロを見下ろす目は冷たい。

 その目に応えるようにヤシロが続けた。

「学生時代の恨みで俺をこんなところに送りやがって」

「仲がよろしいんですね」

「皮肉なんか言ってんじゃねよ……母親にまでそっくりだぜ…………なんだってお前までここに来たんだ…………」

「私が選びました」

 シーラは再び双眼鏡を除く。

「何が目的だ……大隊長の俺が戦果を上げられないからって親父からのテコ入れか?」

「父は関係ありません。戦局があまりにも動いていないようでしたので」

 するとヤシロは重そうに立ち上がる。

 それを横目だけで確認するシーラにも気付かずにヤシロが応える。

「その通りだ。ここに拠点を築いてもうすぐ一ヶ月。完全に膠着状態だな」

 ヤシロはそのまま振り返り、遠くのトーチカを広く眺めるとスキットルのウィスキーを口につけ、そして続けた。

「向こうはコレギマとフォニィの連合軍。おそらく二大隊はいるだろう。もしかしたらもっといるかもな。それに対してこっちは一大隊とお前らみたいな駆けつけ部隊が二部隊。向こうは守る側。こっちは攻めるしかない立場。確実に武は悪い。お前さんならどうする?」

「長期戦となれば向こうが兵力を補充してキリがない…………奇襲をかけるとしても新兵ばかりで結果は見えてる…………空からの支援は期待出来ないんですか?」

「出来たらこんな所で朝から酒なんか呑んじゃいないよ。何度要求を出しても返事は無しだ。空からの爆弾投下も無しでどうしろと……」

 ヤシロは再びスキットルを口に運んだ。

 そして続ける。

「そういや、一昨日到着した部隊は第六強襲だったよ…………期待してみる価値も無くはない」

「第六強襲部隊というと…………」

「噂は聞いてるだろ? 〝堕天使〟のいる部隊さ」

 シーラも噂程度には聞いていた。

 冷徹に人を殺せる最強の兵士。感情が無いとも言われていたが、きっとそれは噂が大きくなった程度のものだろうともシーラは考えていた。

 ヤシロが続ける。

「ただの一兵卒で中尉だ。どれだけの奴かと思ったが…………」

 そして、初めてヤシロは言葉を濁らせる。

 シーラが応えていた。

「お会いになられたんですか?」

「会ったというより、見ただけだ。アレはまともな奴じゃないな…………同じ人間の目には見えなかったよ…………」

「そんな…………数々の戦歴をお持ちの大佐のお言葉とも────」

「何が戦歴だ。大方、戦場を知らない士官だと馬鹿にしてるくせによく言うものだ…………確かに俺は現場を知らないリーダーだが、そんな俺でも分かる…………アレは普通じゃない…………人間じゃないかのような印象だった」

 ──バカな…………

 咄嗟にそんな考えがシーラの頭を過ぎる。

 そこにヤシロが続ける。

「それに、敬礼という言葉も知らないらしい。会うことがあったら教えてやってくれ。部隊長も困ってたよ」

「それは直属の部隊長の仕事では?」

「〝堕天使〟のお陰で昇進出来たから何も言えないらしいぜ。部隊の残る古参は他には一人だけらしいが、そいつも中尉だ。とんでもねえ戦歴だ。一単独部隊の戦歴としては歴代最高だろうな。コレギマでも有名らしい」

「戦争で有名になどならなくても…………」

「お前さんらしい言い方だな。あまり硬く考えすぎるな。戦場の人間にはくだらない与太話も必要なのさ。大学時代からの悪い癖だぞ」

 シーラは軽く目を伏せる。

 防衛大学時代から周りに堅物と言われ、難しい人間と言われていた。自覚が無いわけではない。しかし国防に携わる者として、それに真剣に取り組むことでしか自分を表現出来ずにいた。それは家族への反発の足がかりでもあったのだろう。

 大学で唯一心を許せたのはリリだけだった。

 だからこそ、シーラは今でも戦場の矛盾を許せないまま。

 最前線で活躍することで、この戦争を早く終わらせたかった。

 しかし戦争が政治であることも知っていた。戦場で自分が戦果を上げても、それで戦争の集結が早まるようなそんな簡単なものではない。何かをぶつけていただけなのかもしれなかった。

 それでもリリの死を無駄にするわけにはいかない。

 その時、二人に駆け寄る影。

「シー…………部隊長──部隊の編成が固まりました。すぐに配置につけます」

 それはスコラの姿だった。

 敬礼するスコラに軽く右手を上げただけのヤシロが口を開く。

「ま、精々今日も日課をこなしてくれ。後で防衛部長のシェリンから荷物が届くらしいから受け取りを頼むぞ」

 それだけ言うと、ヤシロはその場を後にした。

 ──シェリンか…………

 その名前に、シーラはリリを思い出す。

 そしてスコラの耳元で囁く。

「ダメでしょ……副隊長」

 シーラの柔らかい声に笑みを浮かべたスコラが応えた。

「……ごめん」

 夕方、拠点基地に届けられたのは巨大なコンテナが二つ。

 それを運んだきた大型の輸送ヘリを見送りながらシーラが呟いていた。

「代わりに爆撃機でも良かったんだけど」

 周囲はまだヘリの巻き上げた砂が舞い、風もすぐには消えない。

 新兵が駆け寄ってコンテナを開け始める中でスコラがシーラに話しかけた。

「〝上〟は勝つ気があるのかな……」

「さて……防衛省からのオモチャしだいかな」

「でも大丈夫だよ……何があってもシーラは私が守るから」

 その声はいつも力強い。

 これほど心強いことはない。

 〝悪魔〟と恐れた兵士に守られる。

 しかし、その度にシーラの気持ちに寂しさが湧き上がるのも事実。


 ──スコラは自分の命をかけても私を守るだろう…………

 ──でも、私のためにスコラが死ぬことがあったら…………

 ──私は自分を許せない…………


 コンテナが少しずつ開いていく。

 そこに現れたのは巨大な八門式ロケットランチャーが二つ。榴弾タイプのミサイルが八発装備された、まさに強襲用とも言える兵器だ。

 それを見たシーラは、すぐに新兵たちに向かって叫ぶ。

「ミサイルのタイプは?」

 すぐに兵士の一人が大声で応えた。

「全てナパームのようです」

 ──ナパーム?

 シーラが呟いていた。

「焼き払えと言うの…………?」

 スコラも口を開く。

「〝やれ〟ってことだね」

「奇襲か…………」

 すぐにシーラはヤシロのテントへ向かった。

 ヤシロは珍しく酒が抜けているのか、小さな折り畳み式のテーブルに向かって報告書に目を通していた。

 シーラの顔を見るなり声を荒げる。

「お前だな。あんなデカい物をこんな所に持って来させられるのは──」

「私が防衛省を嗾けました」

 ヤシロは奥歯を噛み締める。

 眉間に皺を寄せるヤシロに対してシーラの表情は涼しかった。

 そのシーラが続ける。

「何をもらえるかは知りませんでしたが」

「内部監査部にいた人間がやることか」

「綺麗事で戦争が勝てるとは思っていません。使えるコネは使います」

「それが綺麗事だと言ってるんだ!」

 そのヤシロの大声は、当然テントの外にいたスコラにも届く。

 スコラは周りの不安そうな兵士たちをよそに、左脇のホルスターに入ったままの銃を握りしめていた。

 さらにヤシロの声が続く。

「いいか! どうせもうすぐ戦争は終わるんだ──ここにいる兵士に無駄に死ねと言うのか!」

「無駄とは何でしょうか? 国に尽くして国のために死んでいくことを大佐は無駄だと? 私はそんな……死んでいった仲間の死を無駄にするような戦い方はしたくありません」

「新兵ばかりなんだぞ……お前は死亡報告書をまとめたことは──」

「何度も書いてきました。その度に私は死んだ兵士に誓ってきました。絶対に無駄にはしません」

 その時、テントの外のスコラが、背後の気配に驚いていた。

 少しだけ離れて、一人の兵士が立っている。足音にも気がつけないまま、スコラの背筋が凍った。

 振り返ると、そこには短髪の華奢な女性兵士。

 その兵士が呟くように口を開いた。

「骨のある奴もいるんだね…………」

 ──まさか…………

 スコラがそう思った時、兵士は静かに立ち去る。

「精々〝堕天使〟に期待されることですね。私の部隊にも〝悪魔〟と呼ばれた凄腕がいる……彼女の凄さを見くびってもらっては困ります」

 ヤシロは小ぶりなパイプ椅子に腰を落として応えていた。

「堕天使に悪魔か…………上層部は何を考えて…………」

「奇襲は明日の夜──今夜から明日にかけて部隊の編成と作戦を固めます。作戦の決行時は日没。よろしいですね」

 シーラはそれだけ言うとテントを出た。

 スコラが驚いた顔で出迎える。

「ごめん……心配で…………」

 シーラの顔に笑みが浮かんだことで、スコラの緊張が軽く溶け始める。

「困った子ね…………明日は忙しくなるから今夜はゆっくり休まないと……」

「うん……分かった……」

 普通であれば、一人の若い女性。普段は決して鋭い目つきなど感じさせない。しかし戦闘が始まった途端にその表情が一変することをシーラは知っている。

 作戦の度にいつも思う。


 ──あんな表情は、これで最後にさせてあげたい…………

 ──絶対にあなたを死なせない


 翌日。

 陽が沈もうとしていた。

 雲が厚い。

 そして、その動きも早い。

 すでに各部隊は配置についていた。

 城壁の一角から双眼鏡を覗くヤシロの表情は硬い。

 その隣のシーラが口を開いた。

「大型のナパームが計一六発……トーチカの後ろは林です。かなり広範囲に林の中に駐屯している敵部隊を火だるまに出来ます。そう簡単には消せません。ほとんどの部隊は国境まで後退することになるでしょう。孤立したトーチカを潰せば、相手にする敵兵は多くありません」

「そういうことか……」

「無駄に死人を増やしたいわけではありませんよ。お互いの被害を最小限に抑えながら戦局を打開するなら、これが最善かと」

「誰から学んだ?」

「現場です」

 ヤシロはシーラの横顔に目をやる。

 すでにシーラのその目は戦の中にいるように見えた。

 そのシーラが続ける。

「生死を共にした仲間から学びました」

「強いな…………さすがはあいつの娘だ…………発射は一〇分後。前線を頼む」

 シーラは城壁からの裏道を通り、城壁下の小高い丘に向かった。そこに各車両が並んでいたが、丘の形状のせいで相手のトーチカからは見えない。元々城壁の防御用に使われていた場所かと思われたが、そこを更に偵察用に深くしていた。

 ナパーム弾の着弾から五分後に進軍。

 その間にどれだけの敵兵が後退してくれるかは期待するしかない。

 シーラは装甲車に乗り込むと通信兵に伝える。

「予定の時間に予定通り作戦を決行する。各車両に伝えて────副隊長」

 スコラの顔を見た。

 まだ穏やかな表情だ。

「少し外で──」

 シーラはそれだけ言ってスコラを外に連れ出した。

 腕時計を見ながら。

「あと三分ね…………これを…………」

 シーラはそういうと、首に下げていた認識証を外し、そのままスコラの首に通した。

 驚いた表情のスコラにシーラが続ける。

「持ってて」

「やめてよシーラ」

「違うの。それは二人分」

「二人?」

 スコラが見ると、それはシーラともう一人。

「前に話したでしょ……リリの物…………あなたに私たちの命を預けたい」

「……シーラ…………」

「だから……絶対に死なないで。私のために死ぬようなことはしてほしくない」

 スコラの目が一瞬鋭くなる。しかしすぐにいつもの目。

「婚約指輪?」

「え?」

 驚きながらも少しだけ困ったようなシーラに対して、スコラは笑顔を見せた。

「そう思っておく」

 笑顔だが、それでも真剣な表情のスコラに、シーラは柔らかい表情を向ける。

「全く……困った子だ」

 直後、周囲を低い爆音が包んだ。

 一発ずつミサイルが撃たれ続ける。

 その轟音の中、装甲車に戻ったシーラが叫ぶ。

「全部で一六発! 着弾から五分! 号令あるまでは出ないように改めて通達して!」

 総て撃ち出された後、着弾までは静寂が空気に漂う。

 強烈な光と共に破裂音。

 そして、トーチカの奥が明るく燃え上がった。

 ──今の内に逃げなさい……一人でも多く…………

 その灯りは空の雲にまで反射するかのように燃え盛っている。城壁までも明るく照らされ、日没を忘れた。

 通信兵がシーラに伝える。

「部隊長。時間です」

 そしてシーラにマイクを渡した。

 シーラは叫んでいた。

「全車両進軍! 進め!」

 一斉に装甲車の群れが飛び出す。

 横一列のヘッドライトがトーチカに向かっていく。

 直後、トーチカからの銃声に装甲車の重機関銃も銃口を唸らせた。

 トーチカの機銃の口径は決して小さくはない。

 装甲車とはいえ、当たり方次第では走行不能に陥る可能性もある。

 しかもトーチカのすぐ手前はかなりの急斜面。直前で装甲車を捨てなくてはならない。ほとんどの装甲車を投入した総力戦だった。この作戦に失敗したら大隊はほぼ全滅と言ってもいい。

 トーチカの数は一七。

 すでに数台の装甲車が大破し、生き残った兵士たちが走り、辺りはしだいにバランスを崩していく。

 斜面の下で装甲車が止まると、当然それはいい的だった。

 次々と停車する装甲車から飛び出す兵士たち。

 そして斜面を上り始める。

 期待するのは後方からの援護射撃のみ。

 やがて手榴弾を投げ込まれたトーチカが火を吹く。

 しだいに機能を失っていくトーチカ群を抜けると、そこには逃げ遅れた兵士たちが群れを成していた。

 背後は燃え盛る林。

 半狂乱の中で響く悲鳴と怒号がシーラの耳に届いた時、その光景を目に思わず呟く。

「──まだこんなに」

 全員が恐怖を感じる隙もなかった。

 ただ、目の前の兵士に向かって自動小銃を撃ち続ける。

 そして必然的に、燃え盛る林の中へ進軍せざるを得ない。

 敵と味方が入り乱れた。

 すぐ横にいるのが敵なのか味方なのかも分からなくなる。

 シーラがヘルメットのマイクに叫んでいた。

「一度トーチカまで下がって──!」

 その直後、シーラの体が落ちる。

 足に当たった鉛の玉は、容赦無くシーラの動きを押さえていく。

 一瞬、目の前に敵兵が見えた。

 そして、シーラの体に多い被さるスコラ。

 自動小銃を撃ちながら、集中砲火を浴びそうなシーラを守っていた。

 そしてシーラは力の限り叫ぶ。

「戻ってスコラ! トーチカで体制を整えてから──」

 次の瞬間、視界を過ぎる影────。

 それは速い。

 自動小銃を使い、拳銃を使い、ナイフを使い、時には敵の銃まで使い、瞬く間にその場を一掃していく。

 やがてその影は腰を落とし、拳銃を構えながら口を開く。

「今の内に────」

 そして、シーラとスコラの目の前から消えた。

 そして日付が変わる深夜、戦いは終わる。

 夥しい数の死体が横たわる草原を、ヤシロの指揮車が走っていた。

 トーチカを超えると、未だ煙を出し続ける林を背景に、生き残った兵士たちが慌ただしく動いていた。敵が完全に撤退したことを確認するまでは完全に気を抜くわけには行かない。捕虜となる敵兵も出てくればその対応もしなければならない。

 そして遺体も焼却するために集めなくてはならなかった。

 敵も味方もない。

 死体袋に入れて送り返せる数ではない。

 医療班はヤシロよりも先に到達していた。担架の上のシーラはすでに簡易的な治療を終え、上半身を起こし、その隣にはスコラ。

「足は切らずに済みそうか?」

 そう声をかけたヤシロに、シーラはすぐに返した。

「専属の衛生兵がいるから問題ありません」

 もちろんそれはスコラの初期対応のお陰だろう。

 横のスコラに軽く目をやったヤシロが返す。

「名誉の負傷だな。お陰で最小限の被害で敵の要所を陥落させられたよ」

 直後、そのヤシロの胸ぐらをスコラが掴んでいた。

 そして響くような低い声。

「現場を知ろうともしない貴様に何が分かる」

 シーラは止めようともしない。

 額から汗を流すヤシロに向けてシーラが口を開く。

「大佐は以前から仰ってましたね……上司は部下に嫌われるものだと…………私には言い訳にしか聞こえません。あなたはリーダーとして大事な部分を見誤っている。私はあなたのような上司に例え睨まれても、部下を見捨てたりはしません。全員の生死に責任を持ちます」

 スコラがやっとヤシロから手を離すと、シーラが更に続ける。

「〝悪魔〟に殺されたくなければ、さっさとお帰り下さい。あなたには報告書だけで充分なはず…………ここに必要なのはリーダーです」

 本部からの拠点占領用の応援部隊が到着したのは、空が明るくなった頃だった。





 風に匂いはない。

 空気に匂いはない。

 香りを風が運んでいた。

 土の匂い。

 草の匂い。

 炎の匂い。

 火薬の匂い。

 焼ける匂い。

 人の焼ける匂いがした。

 背後から。

 そんなわけはない。

 さっきまで手を繋いでいた。

 さっきまで手を繋いでいた、彼はどこ?

 この炎は、どこから?

 どうして燃えてるの?

 どうして、彼はいないの?

 まだ、手に彼の温もりを感じる。

 彼が触ってるみたい。

 どうして、いないの?

 ………………

 …………

 ……

 そして、レナは二日振りに瞼を開いた。

 重くはなかった。

 まるで、緩やかな風が開いてくれたような、そんな目覚めだった。

 視界を埋め尽くす青い空。

 秋の濃すぎない青。

 薄い雲。

 すべてが優しい色。

 自分が産まれた季節。

 大好きな季節。

 秋の香りが好きだった。

 風の音が耳をくすぐるのに混ざって、優しい声が聞こえた。

「待ってたよ」

 それはスコラの声。

「レナが目を覚ますまで、みんなで休もうってことになってさ」

 その声に、レナは両肘をついて、上半身を起こしていた。

 穏やかな空気の流れる小高い草原。

 遠くには緩やかな山が連なる。所々が赤茶色に染まり、秋の美しさを体現していた。

「驚くよね…………こんな穏やかな所がまだあるなんてさ」

 柔らかいスコラのその声に、今が現実であることをレナは信じられずにいた。

 スコラの横顔からは、重機関銃の引き金を引く姿は想像出来ない。唯一それを感じさせるのは、その姿が軍服であるということだけ。

 遠くから声が聞こえた。

 賑やかなみんなの声。

 下を見ると、草むらに寝転がる人影。

「まったく……みんな呑気だよね…………でも……レナを担架ごと外に寝かせようって言ったのはアイバ。外のほうが気持ちいいからって…………あの子がそんなこと言うようになるなんてね…………」

 そしてスコラが大きく手を振る。

 すると、数人が顔を上げてレナを見ると、全員が坂を駆け上がる。

 みんな、笑顔だった。

「良かったー、気分はどう?」

 最初に声をかけたのはナツメ。

 続くアイバ。

「やっぱり私が正しかった」

「珍しくね」

 ナツメがそう言ってアイバの頭を撫でると、当然のようにアイバもその手を振り払う。

「外が気持ちいいのはお前たちだって同じじゃないか」

「確かに、アイバが正しかったね。大丈夫? 念のために昨日はスコラが点滴してくれてたけど、今日は食事も取れそうだね」

 そう声をかけたのはティマ。

 そして、まだ少し呆然とした感じのレナに抱きついたのは、やはりカルだった。

 驚いたレナの耳元で、何度も繰り返す。

「よかった……よかった…………帰ってきてくれて…………」

 カルが涙を流しているのを体全体で感じられるのに、それでもまだ夢の中のようだった。

 何が現実か分からないまま、スコラに促されて立ち上がる。

 途端に重力を感じ、今が現実であることを意識する。

 振り返ると、そこには古い家。丸太で作られた山小屋のような小さな建物。

 その隣の装甲車を見ると、胸の奥が少し痛む。記憶のどこかを素手で触られたような感覚が湧き上がった。

 そこから出てきたヒーナが、レナの姿を見て声を上げる。

「レナ! 良かったじゃん!」

「レナ⁉︎」

 ラップトップを持ったまま飛び出したのはチグ。レナの姿に、膝を落としている。

「マーシは中にいるよ」

 スコラがそう言って家の中にレナを通すと、そこには小さなベッドに座るマーシと、その膝で眠るキラ。

 顔を上げたマーシが途端に笑顔になり、小さく口を開く。

「おかえり……レナ…………」

 レナは膝から崩れるように両手をついていた。慌ててスコラがしゃがみ込むが、そのまま肩に手を添えるだけ。

 何かを押し殺すような大粒の涙が木の床に落ち続け、それは剥き出しの木材に吸い込まれていく。

 そして、窓から入り込む陽の光が、少しずつオレンジ色に染まっていった。





 満月だった。

 月明かりが明るく窓から入り込み、まるで照明のように影を作り出す。

 元々は誰かの家か、山小屋だったのだろう。しばらく人が入った形跡もなく、まるで戦火の跡も感じられない。戦争が終わっても、そのまま放置されていたのだろう。ありがたいことに保存食が大量に残されていた。お陰で缶詰とはいえ、久しぶりに暖かい食事をとることも出来た。

 とはいえ、相変わらず夜に火を炊くことは出来ない。それは照明になるからだ。遠くから誰かに発見される危険性を作り出す。

 アイバは相変わらずキラとすでに横になっている。

 その寝顔を見ながらヒーナが口を開いた。

「偶然とはいえ、いい所を見つけたよ」

 その声に、すぐにチグが続ける。

「私が見つけたんですけど。それなのにずっと索敵ばっかり────」

「昨日少し代わっただろ?」

「仮眠の間だけじゃない」

「でも」

 二人の間に入ったのはティマ。

「チグもだいぶ休めたんじゃない?」

「まあ…………」

「いつも索敵ばかりで…………チグがいなかったら私たちはとっくにバラバラになってる……みんな感謝してるよ」

「でも私は、むしろみんなに感謝してる…………いつも最前線で危険を冒してるのは…………」

 すると、挟まったのはナツメ。

「お互い様ってことだよ……だから…………もうこれ以上は誰も欠けて欲しくない」

 そして、スコラが小さく呟く。

「…………うん……絶対」

 その時、全員の耳に届いたのはレナの声だった。

「……あの…………」

 レナに視線が集まる。

 横のカルが不安そうにレナの袖を掴むが、レナは何かを振り切るように続けた。

「私は────みんなに迷惑をかけたんじゃないの? もしかしたら……私のせいでみんなを危険な目に合わせて……こんな所で足止めになって…………」

「覚えてるの?」

 スコラが質問する。

 しかしレナはすぐには応えない。

 確認するのが怖かった。朧げな記憶。いくつもの映像の断片が頭の中で入り乱れていた。しかもそれは、おぞましいものでしかない。

 いつの間にか、涙が溢れているのに自分で気が付いたレナは、懸命にその涙を袖でぬぐい始める。

 それを見たスコラが繋げる。

「いいよ、そのままで…………無理に忘れようとしても、それが出来るなら誰も悩まない…………誰もが総てを受け入れてる。私もそう…………受け入れたくないことでもね…………その積み重ねが、あなた自身でしょ」

 目を見開いて顔を上げるレナに、更にスコラは続ける。

「私も衛生兵として多くの兵士を救ってきた…………同時にその何倍もの敵兵の命を奪いながらね…………〝悪魔〟と呼ばれてた…………」

 ──……悪魔…………

「分かってるよ、最初から総てが矛盾だらけ…………死んでもいいと思ってるのに、体が勝手に生きようとする…………心のどこかで生きようとする…………でもね、自分に生きる価値なんかないと思ってた私に、生きる価値を与えてくれた人がいた…………」

 いつの間にか、スコラの感情が溢れていた。

 無意識に首にかけている認識証を取り出して握りしめる。

 しかし、それは三人分…………。

「あなたは生きてるよレナ……死んでなんかいない。生きてる理由なんか分からない。でも、意味はある」

 その目の前で、レナも自分の気持ちに素直になっていく。

 そして、袖を握るカルの手に力が籠っていることにも、レナは気が付いていた。



 


「軽油って後どのくらいもつのかな?」

 チグは缶詰の詰まった段ボールを装甲車に運んだ後、運転席に乗り込んだばかりのヒーナに言葉をかける。

「今後ろに積んでるタンクは満タンが三つと空が一つだけど…………」

 ヒーナはハンドルの上に大きな地図を広げてから応えた。

「そうだなあ……地図はこうだけど、チグの走行距離の見立てはもっとあるわけでしょ?」

「うん、通れなくなってる道もたまにあるし」

「ってことは一週間って感じじゃないかな。距離的には残りの半分は進める」

「そっか…………国境まで最低でも一回、補給出来ても少ない可能性があるから出来れば二回…………」

「まだ長いね」

 ヒーナはチグの肩越しに遠くの山々に目をやりながらも、不安そうな表情のチグに手を伸ばした。軽くその頬を手で叩くような素振りを見せると、少し驚いた表情になったチグに続ける。

「大丈夫…………頼むよ……相棒…………そこのステップに乗ってよ」

「なんでよ」

「いいから」

「やだよ」

「チグは背が低いから届かないんだって」

「今届いたでしょ」

「届いてないよ」

 そこに、後ろからのスコラの声。

「出発するよー」

 その後ろにはレナがまるで付き添うようについていた。

 ヒーナがエンジンをかける。

 数日ぶりのその振動が、なぜかもの凄く久しぶりのような、そんな感覚をなぜか全員が感じた。

 スコラがサンルーフ部分から屋根に登る。それを目で追うレナをカルが優しい笑顔で見つめ、キラを抱えるアイバを後ろからマーシが抱きしめる。そしてティマがナツメの冗談をかわす中で、座椅子に腰を降ろしたチグが声を張り上げた。

「周囲はクリア────ルートは予定通り────今日中に二つの街を経由するよ」

 そして、ヒーナがアクセルを踏み込んだ。





 四日後に辿り着いた街も静かだった。

 国境まではまだ長い。

 夜────装甲車の中でチグが小さく声を出す。

「周囲はクリア────小さな田舎町だけど空爆の跡は無いし、少し見てく?」

 応えるのはヒーナ。

「そうだね。でも何かあった時のために離脱ルートを組み立てておいて」

「分かった──とりあえず移動しながらで」

 そして装甲車が徐行しながら、全員が周囲に目を配る。

 やがて、ティマが口を開いた。

「少し出てみる。この先の路地だけ見てみるから、徐行したままでいいよ」

 すぐに外に出ようとするティマの自動小銃に手をかけたのはナツメ。

「何か感じるの? 教えて」

「…………分からない…………ごめん…………」

 ティマは外に飛び出ると、すぐに路地に歩いていく。

 ナツメの中に、なぜか不安が湧き上がる。

「ナツメ? どうしたの?」

 チグが声をかける。

 警戒時にティマが一人で出ることは珍しいことではない。それはもちろん全員の信頼があってのことで、ティマ自身もその立ち位置を分かっている。

「ごめんチグ…………そうだよね……」

 振り返ったナツメの微かな笑顔が、なぜかチグには寂しげに見えた。

 ティマ自身、特別何かを感じていたわけではない。

 無理をするような領域でもないはず。

 でも、なぜかティマは足を進めた。

 今までに感じたことのない緊張だろうか────気持ちのどこかに何かが蠢く。

 目の前の道路はまっすぐ。

 途中の細い路地を曲がっていけば、徐行をしている装甲車には簡単に追いつける。

 そして、ティマは足を止めた。

 目の前、一〇メートル程度だろうか。

 道路の中心に、何かが光っていた。

 小さな、緑の球体。

 少しだけ宙に浮いたまま、その色は淡い。

 ──この緑…………

 ティマは自然と歩み寄り、その光る球体の前で片膝を落としていた。

 覗き込むようにみるが、やはりあの緑と違いがあるようには見えなかった。

 ──……どうして…………?

 次の瞬間、その緑の先に、真っ赤な小さな靴が二つ。

 ────‼︎

 顔を上げた先に立っていたのは、キラ────。

 その体は僅かに淡い緑色に包まれている。

 ただ立ったまま。

 しかし、その顔には笑みが浮かぶ。

 そして呆然と動けないティマに向けて、口を開いた。

「やっと……見つけた」

 直後、ヘルメットに響くチグの声────。

『ティマ‼︎』

 我に返ったティマが振り返る。

 続くチグの声。

『戻って‼︎ 相手が多すぎる‼︎』

 視線を戻すと、そこにはキラどころか緑の球体すら、まるで幻だったかのように…………。

 直後、ティマは走っていた。

 嫌な汗が全身に湧き出るのを感じる。

 ──まさか…………

 装甲車に飛びついたティマが叫ぶ。

「離脱して‼︎ だめだ‼︎ 逃げてヒーナ‼︎」

 全員が唖然とティマを見ていた。声を聞いた運転席のヒーナも、屋根の上のスコラも一瞬考えが追いつかない。

 離脱は問題ない。無駄な戦闘は避けるべきだ。戦闘行為は少ないに越したことがない。

 しかし、今はティマが、おかしい。

 誰もが初めて見る、怯えたティマの姿。

 突如、装甲車の速度が一気に上がる。ヒーナはティマを信じるしかなかった。理由は後でいい。とにかく今はティマを信じる。

 ティマはキラの姿を探した。

 相変わらずマーシに抱えられたアイバに寄り添うように寝顔を見せていた。

 不思議そうにアイバが口を開いた。

「どうした? 数は多いが相手はアーカムだ。私が出れば問題はない」

「うるさい‼︎ 離脱だ‼︎」

 ティマのその大声に、アイバが少し寂しそうな表情を浮かべたのをナツメは見逃さない。

 そして口を開く。

「ティマ、そんな言い方しちゃダメ」

 そしてティマの振り返り様────その体を全身で抱きしめるナツメ。

「大丈夫だよ…………後でいいから…………話聞かせてね…………」

 そのまま、ティマは崩れるように膝を落としていた。その僅かに震える体を抱えるナツメの姿を見ながら、アイバがマーシに振り返って口を開く。

「最近怒りっぽくないか?」

「そうなの?」

「絶対そうだ」

 続くヒーナの声。

『チグ‼︎ 距離は⁉︎ 振り切れそう⁉︎』

「あ……ごめん」

 慌てたチグの声。

「……大丈夫、多分気付かれてない。距離が開いてる」

『オッケー、このままルートに乗るよ!』





 目の前の国境を越えると、そこはもうラカニエ。

 国境代わりになっている道路には、手前側に粗末な鉄杭が並ぶだけ。高さはおよそ三メートル。杭の感覚は一メートル程。人やバイクなら問題ないが、もちろん車が通れる幅ではない。当然のように監視カメラは設置されているが、とても動いてるとは思えない。

 その鉄杭の少し前で停車した装甲車の運転席で、ヒーナが呟く。

「まあ…………国境ゲートまで一番近い所でも五〇〇キロ…………今から回る気にはならないよねえ」

「どうにか出来るかなあ……」

 不安な声をあげたのはチグだった。いくら全員で納得していたとは言っても、ルートを作ったのが自分であることには変わりない。若干の申し訳なさもある。

 目の前には直径三〇センチ程の鉄の棒が並ぶが、そのほとんどが赤茶色に錆びついていた。

 屋根の上のスコラが口を開く。

「重機関銃ならいけるかな…………二本は取っ払わないといけないよね」

 ヒーナが応える。

「いくら錆びてるって言っても、そう簡単に中心まで侵食するもんじゃないよ。試してみてもいいけど────」

「だったら私がやればいい」

 その声はアイバだった。

「ああ、そっか」

 ヒーナがそう思わず溢す中、アイバは悠々と装甲車の前へ。やがて鉄杭の前に到達すると、いつものように緑の球体を出し、それをみるみる大きくしていく。あっという間に四本の杭が大きく曲がったかと思うと、根本から弾けて道路で甲高い音を立てた。

 瞬時に光を消したアイバが叫ぶ。

「中は空洞だったぞ。機関銃でも充分だ」

「意外と安い作りだったな」

 そう口にしたヒーナをよそにアイバが振り返ると、そこにはいつの間にかティマが立っていた。

 ティマはアイバの目をみたまま。

 しかし先に目線を外したのはアイバのほうだった。

 そのまま歩き、ティマの横をすり抜けるが、次のティマの言葉に足を止める。

「一番、古い記憶はいつ?」

「記憶?」

 振り返らずに応えるアイバ。

 ティマは構わず続ける。

「親の顔は知らなくても、最初の記憶くらいはあるんじゃない?」

「どうして────」

「聞かせてよ」

 しばらくの静寂が続き、全員が装甲車で聞き耳を立てていた。

 アイバが何者なのか、誰も知らない。

 アーカムと何か関係がありそうだということだけ。

 誰もが聞きたかった。

 誰もが知りたかった。

「真っ暗…………」

 アイバのその声に、ティマは何も挟まない。

「あとは〝アーカム〟っていう言葉だけ覚えていた…………そこから────突然、街の中だった…………夜で、雨が降ってた。もう何年も前だ。男が声をかけてきて、食べ物をもらって寝た。他にも何人か女の子がいたな。一緒の部屋だった。それからたまに、その男に呼ばれて外に出ると、別の男に着いていって部屋に行ったら服を脱がされて────」

 背中に、温もりを感じた。

 目の前に回されたティマの腕に、初めての感覚を覚えた。

 驚きと、湧き上がる暖かさ。

「ごめんアイバ…………もういい……ごめん…………」

 そのティマの声に、体が動かない。

 こんなふうに、誰かに抱きしめられたことはない。

 そしてティマの中にも、幼い頃の記憶が通り過ぎていく。





〜 第三部・第4話につづく 〜

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