これは自分だけではない?

 AとBは不仲になってから数ヶ月後に、お互い今まで全く仲良くしたことがなかったかのように会話していた。二人の様子にホラーを感じた私だが、実は似たような謎の経験がある。誰かと仲が悪くなって起こった出来事ではない。これは自分だけなのか、それとも結構あることなのか気になっている。

 例えば昔のクラスメートと自分が、お互い別々なクラス所属になってから、再びクラスメートとなったとき。仲が悪くなったわけでもないのに、ただ久し振りにクラスメートとなっただけなのに、こっちは覚えているけれど相手が初対面のような態度で接してきて驚いた経験はないだろうか。覚えの悪い私が覚えているのに、なぜ……と不思議に感じた。相手にとって私の存在が、すぐに忘れられてしまう程度だったと言うならば、それまでだが。知らぬ間に嫌われてしまったのではと言うならば、それまでだが。

 子どもの記憶は、そんなものなのだろうか。しかし、たった数年で忘れられてしまうのも妙に不自然な気がした。それは私が覚えているからだ。また不思議に感じると同時に、悲しくもなった。あのとき笑顔で「ましろ!」と呼んでくれた子が「ましろちゃん……」と、まるで初対面のように振る舞っている。そんな様子を見て、切なくなったことは今でも覚えている。

 疎遠になって気まずかったために、あのような態度になってしまったパターンも考えられる。顔見知りなど中途半端な知人とのコミュニケーションに悩まされる者はいるからだ。そんなことを考えている中で、やはりAとBのメンタルは強かったのだなぁと改めて思った。

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その心まるでホラーな女たち 卯野ましろ @unm46

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