その心まるでホラーな女たち
卯野ましろ
その心まるでホラーな女たち
これは私が小学生だったときの話だ。とある年度の、夏休みに入る前だろうか。ある二人の女子が共通の友達を介して、急激に仲が良くなった。仲が良くなった二人を、それぞれAとB、そして共通の友達をCと呼ぶことにしよう。
ある日を境にAとBは共に行動するようになり、性格も趣味も合うとのことだった。移動教室やグループ活動なども、一緒であった。
しかし夏休みが明けると、AとBそしてCの関係に変化があった。あれだけ仲が良かったというのに、Aは二人と離れて別のグループに入った。またBとCも仲良くはしていたが、それでも共に行動している様子は、一学期よりは見られなくなった。一体この三人に何が起こったというのか。
そんな彼女たちの事情を少しだけ知っていたのがDだ。それはAとBが、お互いの愚痴をDに打ち明けてきたからである。二人はDと同じ友達グループではなかったけれど、仲は良かった。「Bって勉強とか真面目にやらなくて嫌!」「Aって趣味が合うのは良いんだけど~」など、彼女たちはDに話していた。
特にAは、すごかった。AはCとも上手くいかなくなって「Cって顔立ち、悪いよね」など悪口を言いまくっていた。あれだけ「Cちゃん、Cちゃん」と仲良しだったというのに。またAはDだけではなく他のクラスメートにも、二人の悪口を聞かせていた。
Dは、Aの愚痴を聞く度に「怖い……」と感じていた。もうAがBを、ものすごく嫌っていることはDに伝わっている。この状況に耐えられないDは、Aから散々悪口を言われているBが心配になった。
ある日Dは、思い切ってBに聞いてみた。「Bってさ、Aと仲良かったよね……?」と。すると返ってきたのは、まさかの「えー? そうだったっけ?」。この予想外の言葉にDは驚いた。つい最近の記憶だったというのに、それをBは覚えていなかったからだ。
その後、私は更にゾッとする場面を見てしまった。三学期に同じ班になってしまったAとBは、一学期に仲良くしていたことがなかったかのように「Aちゃん」「Bちゃん」と、お互いに呼び合って会話をしていた。これに関して私は「え……?」と、さすがに言いたくなったが、結局は恐ろしくて言わなかった。というか言えなかった。あんなに仲が良かったことも、あれだけ悪口を言っていたことも簡単にリセットできたということか。それとも本当に記憶がなくなってしまったというのか。どちらにしろ、その彼女たちの様子に私はホラーを感じた。
これに似たシーンを、私は今までに何回も見たことがある。そんな行動をする者たちの共通点は「いつも誰かの悪口を言っている」こと「友達を取っ替え引っ替えしている」こと、そして「絶対に孤立は避けたい」という気持ちだ。特に後者は強い。その思いがあれば、どんなに嫌いな人間だとしても「仲良くしておこう」と考えを改められるからだ。自分の本当の気持ちよりも、一人にならないことの方が大事なのである。これは自分を大切にしているようで、自分を大切にしていないとも考えられるのではないか。
人付き合いには、色々なことがあるかもしれない。確かに、それは分かるが「お化けよりも不思議な出来事よりも何よりも、もしかしたら人間の方が怖いのでは……」とも私は思っている。
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