生徒会長とアツアツデート!?
車は『ザザシティ浜松』を目指していた。その商業施設内に映画館がある。略して『ザザ』へ行くのは久しぶりだ。
「会長は、浜松駅周辺はよく行くんです?」
「ほぼ立ち寄らないですね。なので、今日はとっても楽しみなんです。デートですから、それなりに
今の会長は――いや、比屋定先輩は、それはそれは可愛らしい
上は純白のブラウス。下はフリル付の黒色のスカート。それと高級感のあるパンプス。
俺とした事が、車に乗り込む前に会長の服装を褒めるべきだった……! それだけで
俺的
でも、会長が頭を俺の肩に預けてくれているので……『+100』だな。尚、これはギャルゲーでいう
「会長、キモかったらすみません。その服、すっごく似合っていますよ」
「いえ、キモくなんてありません。それに、今日だけは『会長』ではなく……
「いきなりハードル高いっすね。う~ん……」
「この前は呼んでくれたではありませんか」
この前? いつだっけ……。
「ゲームの時です」
「ああ! でもあれはゲームだったので……」
「えっ、スズってば『
忘れていたが、遥さんもMMORPGをプレイしている。しかもギルドマスターだ。
「てか、遥さんって会長……いや、比屋定さんを誘ってなかったんですね」
「ま~、普段は忙しいからね。あと、スズは無趣味の主張は激しいから」
納得。あれだけ口癖のように言われたら誘い辛いわな。けど、弟から勧められると色々趣味をやり始めてみるようだけど。今回のMMORPG初プレイも弟の影響だと言っていた。本当に、どんな弟やらな。
「姉様。私は事実、無趣味なんです」
「あー、はいはい。そうね、スズは昔から熱中できるのって投資くらいだものね。でも、今はちょっと違うのかな」
「そうかもしれません」
――と、なんだか含みを持たせて俺を見る比屋定さん。それから俺はずっと比屋定さんから見つめられていた。
◆
ザザシティ浜松前。
「では、行ってきます。姉様」
「まって、スズ。帰りはどうする? 迎えにくる?」
「いえ、帰りは交通機関を使います」
「分かったわ。じゃあ、神白くんをバッチリ射止めるのよ~」
遥さんめ、俺の前で堂々と言うとか。
まあ、デートみたいなものだけどさ。
「遥さん、またそのうち」
「うん、神白くんもね! じゃ、私は行くわー」
サムズアップする遥さんは、ニカッと笑って走り出す。これで二人きり――か。
「……」
会長と……比屋定さんと二人きり。いや、学校でもそんなシチュエーションはあったさ。でも、こうしてプライベートで一緒にどこかいくとか初めて。改めて緊張が走る。
「……か、神白くん」
比屋定さんは困っていた。
そうだな、男の俺がしっかりしないと。そうだ、映画を見に行くだけだ……。
そう思うと同時に、少し違和感を感じた。
――
このデートは本来、比屋定先輩からラブレターと思われた手紙から始まり、カートバトルで俺が勝利した結果でもあった。しかも、あの手紙は俺の誕生日を祝うものでもあった。
あの時、俺はなんて言った?
『会長が一番目です』
そうだ、そう言った。
確かにそう口にした。あのリアを差し置いて
あの会長が俺の誕生日を祝ってくれた事がすっげぇ~嬉しかったからだ! だから、だからこそ……会長と一番にデートしたかった!!
男子だったら誰もが憧れる生徒会長だぞ。そんな女子を独り占めできるんだ。最高だろッ!! せっかくだから、楽しいデートにしたい。
だから、だ・か・ら――俺は、身が砕け散ってもいい決死の覚悟で勇気を振り絞った――!
「ひ、比屋定さん……」
「は、はい……」
「手を繋いでくださいっ!! はぐれたら大変なので!!」
もっともらしい理由をつけて、俺は叫んだ。
「……神白くん。分かりましたっ」
顔真っ赤っかのガチガチの動きで、俺に接近してくる比屋定さん。まてまて、会長がこんなポンコツロボットみたいになってるの初めて見たぞ……。
しかも、手ではなく『腕』を組んでいた。
……そ、そうきたか。
「ス、スズ……それ俺の腕」
「あう……」
俺もつい緊張で会長を名前で呼んでしまっていたが、もうそれどころでは無かった。会長と俺がまるでカップルのように腕を……。
車の中といい、こうグイグイ攻めて来られるとは思わなかった。
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