水着の楽園

 この可愛すぎる水着姿のリアを他の誰かにも見られるわけか……。ナンパされないか心配だな。となると恋人っぽく接した方がヘンなヤツも寄って来ないだろうと俺は考えた。


「ん? わたしに見惚れちゃった?」

「ま、まあな……。それより、リア。て、手を繋ぐぞ! いいな!」

「え……大二郎から誘ってくるとか、珍しいね。いいけどさ、うん」


 いわゆる恋人繋ぎをして、俺はリアを引っ張る。だってこうしないと絶対に他の男が寄って来るし。だけど、恥ずかしいので建前的には――


「リアを見失ったら困るからな」

「素直じゃないんだから。でも、嬉しい♡」



 そのまま『弁天島海浜公園』へ向かった。日没前だが、砂浜ではまだ遊んでいる家族や若い男達がいた。水を掛け合ったり、泳いでいたり楽しそうだ。あそことは距離を取って、少し端へ向かう。



「ここなら人気もないから安心だな」

「安心って?」

「い、いや……なんでもないよ。……うわッ!」


 油断していると、バシャッと海水が顔面に掛かる。いつの間にかリアが海に入っていた。くそ~、いつの間に。


「大二郎、ぼうっとしすぎ~」

「や、やったな、リア!」


 俺も海へ入り、負けじと水をぶっかける。ぶっかけて、ぶっかけまくった。


「ちょ、大二郎……激しいっ。顔がべちょべちょ~…」

「おっと、悪い。ついつい夢中になっちまったよ! ――って、どわああああああああ……!!!」


 勝ち誇っていると、なぜか頭から大量の水を浴びた。な、なんだこの爆撃みたいな大量の水。水圧に負けて俺は海に真っ逆さま。リアの下半身が見えて――あれ、もうひとり? いや、もうひとりいるぞ。



 どうなっているんだ?



 気になって浮上すると、俺は右腕と左腕をがっちり掴まれた。……え、ええッ!?



「嘘! なんで会長とあずさがいるのさ!」



 なぜか二人がいた。

 どこからワープしてきた!!


「リアちゃんのタイムラインを見たのですよ」

「会長が船を出してくれたの」



「「船ぇ!? どういう事ですか、会長」」



 俺もリアも同じ疑問を会長にぶつけた。


「はい、二級小型船舶操縦士免許」

「うわ、本物だ……会長、それ!」

「ええ。半年前にオンライン学科講習コースで取得したんです。なので私、小型船舶ボートを持っているんです。ほら、あそこの船着き場に。あれに乗って飛ばしてきました」


 指さす方向には、立派な小型ボートがあった。学生で買えるものじゃないだろうに。だが、会長は株だか仮想通貨で儲けていると言っていた。……すげぇな。本当だったんだな。


「……スズさん、凄すぎ」

「いえいえ、無趣味なものですから」


 もうそれ多趣味だろう、どう考えても!

 ――いや、だがそんなツッコミよりも……水着だ。会長とあずさの水着……初めて見た。


 会長は、大人びた赤色のホルターネックビキニ。似合いすぎる……。アイドルにいてもおかしくない一千万年に一度のレベルだ。


 あずさは……

 旧型スクール水着だと……!!


「そんな絶滅したはずの水着をどこで手に入れた!?」

「あははー、ほら、あたしってコスプレ担当だし」

「それは知らなかったな! まあ、確かにメイド服着てたもんな。分かった、そういう事にしておく!」


 これ以上、ツッコむのも面倒なので納得しておいた。そもそも旧スクはレアすぎて逆にアリだった。……てか、あずさのヤツ、今日はワンサイドアップではなく、リアと同じロングにしていた。髪を下ろすと可愛いな。



 そして俺は気づく。



 美少女三人に囲まれているという事実に。ロシアっ子に、生徒会長に、風紀委員長。ここは楽園パラダイスか!!

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