風紀委員長もお風呂に入りたい♡

「走らないって。気分だけ」

「ならいいけどな。……五乙女、ありがとうな」

「いいよ。じゃあ、コンビニ行こっか」


 エンジンを止め、バイクから降りる。

 良かった、そのまま走り出すんじゃないかとハラハラしたけど、五乙女はちゃんと常識があったんだな。



 ◆



 島は、街灯があまりないせいか星がよく見えた。星空の下、五乙女と一緒に歩く……なんて最高なんだ。


「宇宙人いるのかなぁ」


 唐突に、五乙女は電波的な発言をした。

 いやでも気持ちは分からんでもない。俺も昔はよくUFOとかUMAに関する番組にハマったりしていた。


「なんだ、五乙女はオカルトマニアでもあったのか?」

「うん、中学の頃は、水泳部と掛け持ちでオカルト研究部にも入っていたからね」


 ああ~、オカ研ね。へぇ、今の五乙女からは想像もつかないな。でも、良い趣味だ。SF好きの俺にとっては最高の話し相手になりそうだな。


 オカルト話を続けて、コンビニへ到着。

 さくっと買出しを済ませてアパートへ戻った。


「楽しかったよ、五乙女」

「UFOとか幽霊の話から、SF映画の話とか盛り上がったね。もう少し時間があればなぁ……」

「また今度話そう。今は、リアがお腹を空かせて待っているからな」

「それもそうだね。うん、戻ろう」



 玄関に上がり、そのままリアの部屋へ。

 戸をノックすると「どうぞ」と短く返事があったので入った。すると、スマホをポチポチ操作しているリアの姿があった。


「元気そうで何よりだ、リア」

「うん、あずさちゃんに湿布しっぷ貼って貰ってバッチリ! それより、お腹空いた~…」

「コンビニ弁当を買ってきた。みんなで食べよう」

「いいね!」


 ……ハっ!

 ロシアっ子と金髪美人の女子とこんな夜遅くに一緒に飯? すげぇ自然に接していたけど、よ~~~く考えたら、とんでもない状況だな俺。


 まあ……いいか!

 もう今更だった。


 なあに、一緒に飯を食うくらい別にどうという事もない。今は、この貴重な一時をとにかく楽しもうじゃないか。


 配信サイトでアニメ『猫耳メイドのエイルさん』を視聴しながら、焼き肉弁当を食べた。アニメの存在を知らなかったらしい、五乙女がすっかりエイルさんにハマってしまっていた。


「こ、こんな面白いアニメあったんだ。知らなかったな」

「五乙女は、アニメは見ないのか?」


「あたしは、ママの影響で海外ドラマしか見ないんだよね~」


「ほう、海外ドラマか」

「うん。ネットフリスクでだら~っと見てる。最近は『ゲーム・オブ・スローンズ』かなあ」


 ぴくっと反応を示すリアは、テンションを上げた。


「あずさちゃん、配信サイトで海外ドラマを見てるんだ。わたしも、ネットフリスクとかアマゾンプラスで見てるよ~」

「便利だよねえ、最近って」



 そんな話を続けていると、もう零時を回っていた。まずいな、仕事進んでないや。



「すまない、俺は少しでもバイトを進めてくる」

「大二郎、行っちゃうの?」

「大丈夫だリア。今日は、五乙女が泊まってくれるってさ」

「マジ~! やったー、あずさちゃん好きー♡」


 その事実を知ると、リアは一安心していた。とはいえ、明日は学校あるんだけど、休むかね~。検討しておこう。


「じゃあ、五乙女もごゆっくり」

「あー…、お風呂使わせてくれない?」

「そうか。……って」


 五乙女が風呂を使う……なんだろう、リアとは普段よくいるから、そんな意識していなかったけど、五乙女となるとワケが違う。



 風呂に裸の五乙女が……?

 いや、考えるな俺。煩悩退散ッ!



 俺は自室へ戻った。

 その十分後くらいに『ピコッ』とスマホに反応が。


「ん、ラインか」


 画面を開くと、そこには『五乙女』からのメッセージが。

 なんだ、風呂から送ってきたのか。


 見てみると、そこには『今日は泊めてくれてありがとう。二人が同棲している事は、リアちゃんから聞いていたよ。まさか本当だったんて、ちょっとショックだけど、でも今日は楽しかった』とあった。


 ……あ! めっちゃ自然に過ごしていたけど、言い忘れていたな。もう本当に今更だけど……もうバレてしまっては、どうしようもない。


 俺もメッセージを返す。


『こちらこそ、ありがとう。特にリアの面倒を見てくれて』

『いいの。二人の関係性が好きだから……だから、応援している』

『そうなのか、何か悪いな、五乙女』

『そうだ、そろそろ名前で呼んで欲しいな。あたしの事は“あずさ”でいい』


 ……名前か。

 苗字の方がしっくりきて、五乙女ですっかり馴染んでいたのだがな。でも、今まで散々世話になったし、敬意を表する意味でもそうしようと俺は思った。


『分かったよ、あずさ。今後もよろしくな』

『……うん♡』


 五乙女――いや、あずさからメッセージと共に写真も届いた。


「うわ……!」


 これは、いわゆる“手ブラ”か……なんという際どい写真だ。こんなのリアに見つかったら……殺されそうだぞ。


 でも、せっかくのご好意である。

 家宝にさせていただく!

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