強力な助っ人

 ゆっくりと体を起こすと、俺は何故か自室にいた。俺はあれから……どうなって。


 ああ、足を捻挫ねんざしたリアをお風呂に入れて……それで水着姿に興奮して、意識を失ったまでは覚えている。


「……リアは?」


 まだ視界が定まらない中、目だけを動かしていく。すると、影らしきものが目の前にあった。この正座している影は、リアだろう。俺を看病してくれていたんだな。本当なら俺がしなきゃいけないのに。


「……」

「すまない、リア」


 部屋が暗くて表情は見えないが、俺の手を優しく握ってくれるリア。本来なら逆なのにな。俺ってば情けない……。


 自己嫌悪に陥っていると、俺は膝枕ひざまくらされた。マジか……。そんな風に優しくされると、俺は……でも、嬉しい。やっぱり、リアは優しくて最高のロシアっ子だ。


「……」


 リアは、何故か反応しない。

 なら気持ちを伝えるチャンスだ。


「……俺は……リアが好きだ。将来を共にしたいとさえ思っている。こんな俺だが、もしリアがいいなら……ずっとそばに――」



 そのタイミングで影は、部屋の灯りをつけた。室内灯が発光して全体を照らす。


 すると、そこにリアの姿が――――



 違う!!



「……ごめん」

「え……お前、五乙女そうとめか!? え……え、ええッ!?」

「あは……あははは……」


 ど、どうして五乙女が家にいるんだよ!

 しかも俺の部屋に!

 しかも膝枕されちゃってるし!


「えっと……五乙女さん?」


「あのね、行きつけのカフェでゆっくりしていたら、リアちゃんから電話貰ったの。大二郎くんが倒れたって。ビックリしちゃってさ……幸い、バイクで戻れる距離だったから駆け付けた。そしたら、何よ、リアちゃんは足を捻挫ねんざしているし、水着姿だし……何をやっていたんだか」


「……すまん。本来なら俺が面倒を見るつもりだった。でも、リアの魅力的な水着に脳がやられちまったよ」


「確かに、あれは反則級チートだったわ」

「で、リアは?」

「今は自室で療養中。だから、あたしが二人の面倒を見るしかないなって」

「いいのかよ、もう22時だ。五乙女の親が心配するだろう」

「いや~、それがね、あたしに激甘な両親でね……だから、こんな金髪とかネイル、バイク通学も許してくれているんだと思う」


 どんだけ甘々なんだよ、羨ましいな!

 ていうか、五乙女って自由人だな。

 何者にも縛られないっていうか、悩みとかなさそう。そういう自由じゆう奔放ほんぽうな性格が俺は気に入っているが。


「まあ、五乙女がいいならな。でも、リアの部屋で寝てくれよ」

「そうする。大二郎くん、立てる?」

「ん、おう。それくらいなら」


 五乙女の膝枕から離れ、俺は立ち上がる。ちょっと名残惜しいな……滅多にないあの五乙女の膝枕だ。もうちょっと楽しんでおきたかったな。


 そのままリアの部屋まで向かった。


「あ、大二郎! 良かったぁ……意識戻ったんだね」

「すまなかった。本当にすまない」

「謝らないで。わたしだって捻挫ねんざで迷惑掛けちゃったし……お互い様でしょ?」

「あ、ああ。そうだな」


 お互い納得していると、五乙女が提案する。


「じゃあ、リアちゃん。悪いんだけど、大二郎くん借りるね」

「え……うん。どこかいくの?」

「コンビニ。バイクでさ~っとね。ほら、お腹とか空いたでしょ? 何か買ってくるから」

「うん、お願いね。大二郎、こんな時間帯だから、あずさちゃんを守ってね」


 俺はうなずき、部屋を後にした。

 五乙女と共にアパートを出ていき、そのまま駐輪場へ。


「あ、五乙女。自然に来ちゃったけど、二人乗りは禁止だぞ!」

「もう固いこと言わないでさ~」

「ダメなもんはダメ。俺達には立派な足があるだろ。コンビニなんて徒歩五分もないんだ、歩くぞ」


「少しだけ! ほんの少しだけでいいからっ」


 懇願こんがんしてくる五乙女は、何故か必死だった。しかしなぁ……。


「じゃあ、乗るだけならいいぞ。走るのは禁止だ」

「え~…。それじゃあ楽しくないじゃん。でもいっか、気分だけでも味わっておこうかな。じゃあ、大二郎くん、後ろに乗って」


 既にバイクにまたがる五乙女の後ろの座席に俺も座る。……おぉ、中々気分が出るな。これで走り出したらさぞ楽しいだろう。


「いいなあ、俺も欲しいな」

「いいでしょ。あ、大二郎くん……もうちょっと寄って。あと、あたしのお腹に腕を回してね」

「え、でも……発進するわけじゃないだろ?」

「雰囲気だけでも味わいたいの」

「そ、そうか」


 俺は、五乙女に結構密着。腕を彼女のお腹に回す。ウエスト細っ! スカスカで驚く。確かに、五乙女は引き締まっているけど、これは……うわ、いきなりエンジン掛けやがった。


「お、おい!」

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