生徒会室

 午前中の授業が終わった。

 あの朝の手紙以降、リアは大人しく授業を受けていた。休み時間になれば女子と楽しそうに雑談していたけど、男子からのお誘いは全てをやんわり断っていた。ライン交換も女子としかしていなかった。


 お昼になり、なんとなくリアの方を向く。


「……」


 俺に“早く誘ってよ”と言いたげな視線を送っていた。そうか、そんなに俺に誘って欲しいのか。


「リア」

「うん、行く!」

「まだ名前を呼んだだけだが」


「……」


 ちょっと揶揄からかうとリアは、死んだ魚のような目をしていた。


「分かった分かった。食堂が良いか? それとも屋上か」

「じゃあ、ついて来て」


 ついて来て?

 そのまま教室を出て廊下へ。何故か食堂ではない方向へ歩いていく。という事は、屋上か。なるほど、二人でまったりお昼を楽しむというわけだな。



 ◆



「え……」


 到着した場所に俺は驚くというか、何故この場所なんだと疑問が渦巻く。そもそも、お昼に来るような場所ではないだろうに。


 そこは『生徒会室』だった。


「失礼します」


 リアがノックすると直ぐに反応があった。そのまま扉を開け、中へ入っていく。すると、そこには長テーブルが綺麗に設置されており、二人が椅子に腰掛けていた。



 一人は風紀委員長『五乙女そうとめ あずさ』。


 もう一人は生徒会長の――



「よく来られました。御存知かもしれませんが、私は『比屋定ひやじょう すず』です。よろしく」


「ああ……生徒会長」


 一度だけ話した事があった。

 あれは忘れもしない……いや、昔話それはいいな。


「リア、どうして生徒会室?」

「ここでお昼を食べるの。ほら、あずさちゃんと仲良くなっちゃってさ、ここでどうぞって」


 あずさちゃん!?

 いつの間にそんな親密な仲に。


 まあ、今は夏で外は猛暑。

 わざわざ屋上で汗を流しながら食べるよりも冷房の効いている生徒会室の方がいいな。って、いいのかよ。



 ぼうっと突っ立っていると、生徒会長の比屋定先輩が黒髪を揺らしながら俺の方へ。まるで子守歌のように落ち着いた口調で俺に話しかけてきた。



「神白くん、お昼ご飯ですが、あなたの分もありますよ」

「え、俺の分もあるの? 良いの?」

「ええ。今日はリディアさんの歓迎会です」


 どうして、生徒会がそこまでしてくれるんだ。いったい……リアは何をしたんだ?

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