文化の違い?

 どうやら床に落ちていた『おいしい棒』で足を滑らせたらしい。俺は、そのままリアを押し倒してしまった。


「……痛ぁ」

「大丈夫か、リア」

「うん、まあ……平気。あ、大二郎」

「ん?」


 お互いの顔が至近距離だから、俺は回避する間もなくリアからキスされた。刹那的ではあったけれど、情熱的でもあった。おかげで俺のβベータ-エンドルフィンが脳内暴発中で脳汁がドバドバでヤバイ。つまり幸せすぎて死にそうって事だ。


「えへっ♡」

「えへっ、じゃないって。その分だとケガはなさそうだな」

「大丈夫だよっ。それより、おいしい棒が粉々だね」

「まぁ粉上になったおいしい棒もイケるぞ」


 なぁに食べれなくはない。そのまま捨てるのもモッタイナイし、料理に使えばいいだろう。なんかそんなレシピがあったはず。あとでレシピサイトでも覗くか。



 なんて誤魔化しながら俺は立ち上がった。……実のところ緊急搬送されてもおかしくないレベルで心臓バクバクだった。


 キスはもう“慣れている”と自負していたが、でも、体は正直ってヤツだな。


 不可抗力とはいえ、美少女ロシアっ子を押し倒してほぼ密着状態とか、さすがの俺もどうかなりそうだった。この同棲生活、俺の身が持つかどうか……今のままだと滅びる自信がある。



「じゃあ、先にお風呂行ってくるね」



 リアも心なしか動揺しているように見えた。そうだよな。故意でないとはいえ、ビックリしただろうし。ん、あれ……なんか衣擦きぬずれが聞こえるような――?



「うわッ! リア、なぜここで制服を脱ぎだすんだ!」

「ん~、文化の違い?」


 ロシア人ってそうなのか!?

 とにかく、これは俺の理性が死ぬ。


 ストップ……!

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