屋上

 リディアと一緒に廊下を歩く度に何事かと振り向かれ、注目を浴びた。当たり前だけど“銀髪のロシア人”は相当目立つようだな。


 いや、原因はそれだけでもないか。


 女神のような美貌。

 白い肌が雪景色のように輝かしいし、背が小さい割に胸も大きいから嫌でも視界に入る。男子なら100%見惚れてしまうだろう。



 そんなこんなで屋上。

 辿り着いて、まずは誰かいないか確認。

 どうやら、高温注意の夏日で忌避きひされているらしい、誰もいなかった。海でもあるまいし、わざわざ日光浴に来る生徒はいないわな。


 暑くてたまらないが、リディアを柵まで連れていく。ここしかゆっくり話せる場所はないからな。


 俺は深呼吸した後、話を始めた。


「……なあ、リディア」

「ん~?」

「せめて、キスは止めてくれよ。挨拶とはいえさ……皆が見てるし」

「だってぇ、我慢できないんだもん」

「我慢できないの?」


 ウンと子供のようにうなずくリディアは、顔を近づけてくる。ちょっとプクっと頬を膨らませて……可愛かった。


 ――って、そうじゃなくて。


 なんとかして止めなきゃと熟考を重ねてみるが、思いつかない。そもそも、銀髪ロシアっ子の美少女からキスされまくって最悪とか思わない。むしろ最高だ。良い匂いもするし。


 けれど、時と場合をだな――って、何か取り出したし。

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