キス魔

 HR≪ホームルーム≫が終わって、そのまま授業が続いて昼休み。束の間の休憩時間。リディアは、他のクラスメイトから話しかけられていたが最低限の挨拶だけ済ませ、俺の方へ寄ってきた。まるで俺にしか興味がないかのように。


 他のイケメン男子が寄ってきても軽く受け流す事態。同じクラスの棚橋というモテ男がナンパしてもリディアは笑顔で断っていた。


 そのまま廊下へ出た。


「いいのか、そんな態度で」

「大丈夫よ。ちゃんと後腐れのないように丁寧に断っているし」

「そっか。ならいいけどさ――って、リディア!?」

「んっ……♡」


 腕を俺の首に回し、唇を重ねてくるリディア。ちなみに、これが初めてではなかった。この秋桜学園の登校前にもキスをされた。


 これくらい“挨拶”だから――と。


「おい、キス魔。皆の前でするんじゃない……恥ずかしいだろう」

「だって、大二郎が好きなんだもん」

「なんでそんな俺が好きなんだ、理由を教えてくれ」

「あのお菓子、おいしい棒をくれたでしょ」

「へ」

「だから好き」


 リディアが引っ越して来て挨拶してきた日、俺は彼女に『おいしい棒』というお菓子をプレゼントした。一個十円のな。

 それが親しくなるキッカケだった。


 とりあえず、廊下でイチャイチャするのもマズイ。

 屋上へ行こう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る